第二十八話 小鳥心霊現象相談所
「ありがとうございます」
お礼をして匂い袋を嗅ぐと窓から少し温い風が入り込んできた。
風に髪をたなびかせると、朱音さんは背伸びをした。
「さてと」
と、呟く。
「話も済んだし、そろそろ帰ろうかな」
「また……会えますか?」
「もし心霊現象で困ったことがあったら何時でもおいで。小鳥心霊現象相談所は何時でも困った人の味方だから」
そう言うと奇跡の少女は微笑んだ。
後ろに立つ孤独の少年は笑わなかったけれど、何時でもおいでと言った感じに少しだけ首を縦に振った。
「はい」
朱音さんのように微笑み、玄君のように首を縦に振り私は返事をした。
「またね」
朱音さんが私に手を振ると、部屋の戸がトントントンとノックされた。
音に反応し私達が戸を向くと、袋をさげたお父さんが部屋に入ってきた。中身は花瓶のようだった。
「どれにするか迷ってたら遅くなったよ……おや、お友達かな?」
聞きながらもお父さんは朱音さんを見ると少しだけ顔を赤くした。
確かに朱音さんはその辺のモデルなんか目じゃないほど美しいが、娘の前で赤くなっちゃダメでしょ。
あとで、おばあちゃんに言い付けようかな。
私が思わずため息をつくと、朱音さんはお父さんに挨拶をした。
「はじめまして。私、青歌ちゃんが一年生の頃委員会が一緒だった小鳥と言います。こっちは弟で、以前は三人で遊んだりもしていたんですよ」
霊能力者とは名乗らずに朱音さんはすらすらと嘘を並べた。この辺に朱音さんの人生経験の深さが垣間見れるな。
流石は九十八才。
「そうでしたか。娘が大変お世話になっております」
お父さんは会釈をすると、頬を赤らめたままテーブルの上に花瓶を置いた。
「どうぞゆっくりしていってください」
パイプ椅子を薦めると、美人を前にし緊張からか、だらだらと汗をかきはじめた。
また反抗期を迎えそうだなと私が思っていると、お父さんは窓際まで進んだ。
「夏なのに窓を開けているせいか暑くて叶いませんね」
その言葉に私達三人は声あげた。
「あっ」
「あっ」
「あっ」
冷静な玄君まで声をあげる。
「えっ?」
お父さんは声をあげる私達を振り返りながら窓をスライドさせた。
「閉めちゃダメぇぇぇぇっっーーーーーーーーーー」
小鳥心霊現象相談所からのお願い。一、依頼者は決して扉を閉めないでください。
どうしてかって?
閉めればそこは蠱毒の壺の中になるからだよ。




