第45話 一生物
次の日に幹部全員と仮幹部1名が会議室に集まった。ちなみに和夜はなぜか騎士とイカイケメンに挟まれ、向かいには黒葉が居る席になっている。
「よろしくね」
「よろしくお願いするわ!」
黒葉は目を輝かせてイカイケメンを見ていた。もしかして、タイプの男性なのかな、と思った和夜は黒葉を見る。席を変わった方が良いのかな、とも考えてもいた。
「ちゃんとここで働いて私達を守って下さいね!期待していますから!」
「う、うん」
和夜の予想は違ったようだ。だたの労働者としてしか見ていなかった。イカイケメンは黒葉の圧に少し引く。リゼ、キンバ、強は黒葉が取られるのではないかと不安だったが、黒葉は別にイカ天を恋愛対象として見ている訳ではなかったので安心した。恋愛の「れ」の字もなかった。和夜はイカ天に馬鹿にしたような表情を一瞬だけ向ける。イケメンイケメンってもてはやされてるからって黒葉ちゃんまで虜に出来ると思ったのか?自惚れるなよ、馬鹿め、と思っていた。何となく和夜が思っていることはイカ天にも騎士にも伝わっているが何も言われないのでバレていないと思っている。
「では、早速、始めようかの。今度、君達に行って欲しい場所について」
不死長老がいつものにこやかな表情で言った。誰1人かけることもなく幹部が集まって良かったと心の底から思っていた。しかも、逆に優秀な者が1人増えたのだ。こんなに喜ばしいことはない。
「和夜くんと騎士くんはペアで行ってたが、今回だけ和夜くんはイカイケメンくんと、騎士くんは伸郎くんとペアで行って貰いたい。すまないが、今回だけだからペア替えを引き受けて欲しい」
騎士と伸郎は驚きの表情を軽く見せる。イカ天は騎士とは違いニコニコだ。不死長老は今回だけとはいえ本当にペア替えをして良いものかと不安に思いながら言っている。
「大丈夫だと思うが、最初だけでもイカイケメンくんの任務での様子を和夜くんに監視して貰おうと思っての。そして、今回の伸郎くんが相手にする敵のサポートにどうしても騎士くんが行って欲しい」
すると、大画面が光り四葉が映る。
「本日もお集り頂きありがとうございます。」
全員、会釈をする。ほとんとの人達は四葉の顔を見ている。和夜はどうせバレないと、ガッツリ四葉の大きな胸を羨ましそうにガン見している。今日もデケーと思いながら、伸郎もチラチラと谷間を見ている。親子揃って何て奴だ。いつか、バレるに決まっている。和夜に関しては隣の騎士に両手で目を覆われる未来が待っているだろう。
「まず最初に和夜さんとイカイケメンさんに倒して頂きたいのがこちらです」
四葉が見せた画像にはマイクを持った男性が映る。それを見た和夜の瞳孔が軽く開く。
「こちらの男性は芸術家を誘拐し殺害していると確認されております。1カ月程前にも誘拐事件がありました」
「歌手・・・ですか?」
和夜が呟く。
「はい。彼は自分の作った歌や絵をネットにあげています。新たに芸術家達が誘拐され殺害されてしまう前にお願いしても宜しいでしょうか?」
「はい。大丈夫です」
「次に伸郎さんと騎士さんにお願いしたい相手ですが」
という流れで会議は進んだ。
会議が終わったらイカイケメンは和夜に話し掛ける。
「私達が倒しに行く相手に随分と興味を示してたけど、どうしたの?もしかして、あの芸術家のファンとか」
「そんな訳ないですよ。見たことのない知らない人です。私はあるロックバンドだけのファンであると決めているので」
「本当?また何か隠してるんじゃないの?表情に出てたよ?」
「隠してないですよ。ヒドラ・・・さん」
和夜が机に両手を付き席を立つ。歩こうとしたところ、イカイケメンが和夜の手に上から優しく片手を包む。それを見た騎士が目を光らせる。
「ヒドラって呼ばなくて良いよ」
「あっ、すみません。イカイケメンさんの方が良かったですか?」
和夜は申し訳なく謝る。
「いや、別に嫌じゃないよ。ただヒドラは生物としての名前だし、イカイケメンも周りが付けた名前だから・・・他の名前で呼んで欲しいなって」
「良かった・・・お名前は?」
「私は博士にもずっとヒドラって呼ばれてたから・・・特別、名前がないんだ。和夜ちゃんに名前を考えて欲しいな」
「えっ、私が考えるの!?」
「うん。駄目かな?・・・」
子供が母親にお願いしているような母性をくすぐる笑顔で見つめられながら言われ断れない。和夜はイカイケメンの顔を見て考えた。マンにキャラ設定で天敵が現れるようにしたこと、きっと目の前の人物がそうであると言われたことを思い出す。そして、閃いた。和夜が考えている間、イカイケメンはドキドキワクワクしていた。騎士はイカイケメンが和夜の手に触れていることに、いつまで触っているの?とイライラを募らせ青筋を立てていた。これでも耐えている方である。
「イカ天!」
騎士は和夜の発言を聞いて噴き出した。イカ天は言葉も出ずに固まっている。それが騎士にとっては面白おかしくて堪らない。
「どう?イカ天っていう名前、気に入ってくれるかな」
「良いと思うよ。和夜ちゃん、行こっか」
騎士は和夜の手を掴んでいるイカ天の手を振り払う。
「やっぱり?イカ天さん、またねー」
驚いているイカ天には気付かず、騎士に褒められて自信満々な和夜であった。
「あの、ちょっと」
「またね。イカ天」
イカ天の声を遮るように騎士が嘲笑いながら言った。イカ天は目を点にして固まり、1人だけ会議室に取り残された。
和夜は騎士と一緒に帰る前に不死長老の元へ行かなければいけなかった。そのため騎士と一旦、別れる。騎士は和夜の後姿を見つめていた。いつもの寂しそうな雰囲気とは少し違う。
騎士は和夜と色々あったが、今は和夜と前以上に良好な関係になれている。騎士にとって、和夜とは圧倒的に過ごすことが多い。それは和夜にとっても同じ。お互い、そんな存在。それなのに、どこか距離を感じた。根拠はない。近い未来か、遠い未来か、いつか和夜がどこかに行ってしまわないかが不安になった。
自分が大切な人のために出来ることがあるのか、未だに不安になる。ただ大切な人には笑顔で居て欲しい、幸せになって欲しい。傍に居て欲しい。大切な人が傷つくことがないように守りたい。悩んでいる時は支えになりたい。それを自分が出来るかは分からない。ただ前よりは自分を強くし、何かあった時に守れる可能性を少しでも上げる。今は和夜に何かがあっても守れるようにしようと道場へ足を運ぶ。
不死長老に1人だけ呼ばれた理由が分からず、和夜は不思議に思いながら会った。いや、もしかして私はクビになるのでは?と不安にもなっていた。
「お疲れ様です」
「お疲れ様。和夜くん、来てくれてありがとう」
「いえ」
「ちょいと付いて来てくれるかな」
「はい」
2人はのんびり歩き出した。着いた所は色んな花が並ぶ花園だった。
「綺麗ですね」
「ああ、ここに連れて来て見せてあげたかったんじゃよ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
「いや、お礼を言われるのはわしじゃない。これを用意したのはわしじゃないしの~、でも誰かは言えないんじゃ。マンくんに俺だと言うなって言われてての~」
「それ答え言っちゃってませんか・・・でも、ありがとうございます」
笑顔で和夜はお礼を伝えた。
「後、これはわしから」
不死長老は1冊の和装本と委員会のカードを渡した。
「『影弁慶の真相』・・・私が好きな尊敬しているアニメの戦闘キャラ!?影弁慶、こんな本も出してたの!?」
「そうみたいじゃの。誰も立ち寄らない部屋を整理したら出てきて」
「読んで良いんですか!?ありがとうございます!本を普段から読まない私でもこれは読みたい!」
「勿論。というより、わしからのプレゼントじゃ」
「えっ!?こんな貴重な物・・・」
「良いんじゃよ」
「すみません。大事にします!」
次に委員会のカードを見て確認をする。
「・・・あれ?ナンバー2のまま」
実は和夜は不死長老に自分はナンバー2に相応しくないから番号を下にして欲しいと頼んでいたのだ。番号が変わっていないので驚いた。
「和夜くんもナンバー2に相応しい。わしはそう思っておる。だから、番号は変えなかった」
「・・・ありがとうございます」
なぜか涙が出そうになったが堪えて和夜は笑顔で言った。
「良いんじゃ・・・ゆっくり花を見て楽しんでおくれ。言うなって言った人は和夜くんに対して申し訳なさそうに思っているのを隠しながら、お茶をくれたお礼をしてやるって言ってたからの~」
「そうなんですね」
和夜はまた笑う。不死長老は秘密がバレているが全然、気にしていなかった。帰った後にマンには、何バラしてんだよー!と怒られたそうだ。和夜は不死長老が帰った後に花園をうろうろした。とても綺麗だった。とても綺麗だったのだが。
「桜、チューリップ、ひまわり、コスモス、あれはツバキ?・・・季節がバラバラなような?ありえるのか?・・・マン先生ならありえるな」
春夏秋冬を一斉に楽しめる花園だった。造花ではなく、本物の花である。
「ヒヒーン」
「ひひん!」
馬の鳴き声がした。というか和夜の真横に1匹の馬の顔があった。和夜は驚き一旦、離れる。その馬は全身真っ白の大きな白馬だった。そして、なぜか羽があり目の間の上に1本の黒い角があった。
「何か色々、混ざっているような・・・」
「ヒヒーン」
馬は目の前で座り出した。和夜は恐る恐る近づき、恐る恐る撫でた。
「あっ、触り心地、良いな」
「ヒヒーン、ヒヒーン」
馬はイライラしていた。触られたのが嫌という訳ではない。良いから早く座れ、と思っていた。
「もしかして、座って良いのかな」
「ヒヒーン、ヒヒーン」
早く座れっと馬は思っていた。和夜が恐る恐る座ると、馬は立ち上がりゆっくりと花園を歩き出す。
「案内してくれるの?ありがとう」
馬に乗りながら花の鑑賞を和夜は楽しんだ。案内されたところにはディアスシア、スズラン、藤、シラー、カモミール等が並んでいた。
「綺麗だね~。どれがどの花かは分からないけど」
「ヒヒーン!」
分からないのかよ!と馬は思った。
花園をある程度、周ると馬は羽を広げて空高く飛んだ。
「落ちる落ちる!・・・いや、安定してるな」
和夜は上から見た景色を楽しんでいた。ある程度、景色を堪能したところで馬は道場の方向へ向かう。道場の外では幹部達が休憩して居る。
「うおっ、馬が空に!?」
「リゼ、馬が飛ぶわけないでしょ。覚えておいた方が良いよ」
「知ってるわ!上を見ろって」
リゼに言われてキンバ、騎士、イカ天、強、伸郎、は空を見た。
「乗ってるのはもしかして」
「流石、騎士くんは見破るの早いね。和夜ちゃんに関しては特に、誰よりも・・・ふふふ」
「何かこっちに来てないか?」
「マジで?」
空飛ぶ馬は男達の前で可憐に降り立った。
「やっほー」
馬に乗ったまま、顔を出し手をあげる和夜が居た。
この馬は怪化薬打倒委員会で飼うこととなった。そして、なぜか馬は和夜しか触らせて貰えず、他の者が触ろうとすれば蹴る。不死長老の庭に馬が入る位の小屋がなぜか、あらかじめ用意されていたので馬の住処にした。不死長老の家の庭のため餌やり等は不死長老が行い、和夜は来れる時に顔を出していた。和夜が愛でている後ろで馬を睨む騎士が居るのであった。
「名前は白いからハワイ語でケオケオとかどうかな」
「ヒヒーン!」
なぜハワイ語なんだ、もう少し神秘的な名前にしてくれ、とケオケオは思っていた。
「おお、喜んでる!」
「そうみたいだね。良かったね」
「うん」
「ヒヒーン」
喜んでねぇ!とケオケオは思っていた。




