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傾国の美妃はひげそりを所望する  作者: まるいのあっと


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9/9

【聖女様の結婚準備・王都編 婚家の事情】

お読み頂きありがとうございます。

マティちゃんの肩書き多いです。

羊の女神の聖女で砂漠の最強部族の傭兵団の強者で前世別の女神の聖女で国一つ滅ぼす原因になった…。

マティちゃんは女神達に幸せを応援されています。

最後は幸せにします。

ep9 聖女様お披露目の変 さあ! 当ててみろ(笑) ③


 

 白に金の装飾で天界の風景が浮き彫りされた重い両開きの大扉の目前、両脇には扉の開閉のための神官見習いが二人ずつ付き。音楽の合図で開く予定。

 あと数歩で大扉の前。

 

 白い被り物に白い男性向けベール、金色で羊の女神の寿ぎの刺繍の入った布を肩から下げ。足元が隠れる白い長衣、被り物から顔横に垂れる飾り紐についた金のタッセルが揺れる。

 厳かに神々しい男神のような…聖女…。

 どうみても聖女じゃなくて男神のコスプレだよな、コレ。

 隣のマティちゃんことマッティア・アブン・ダンティ。

 ちゃんと名前言わないとS級冒険者ロコロドンドの西の砂漠のアブン族の最強種というのを忘れそう。

 

 ここ皇城内の教会で今から聖女のお披露目が行われる。

 

 区画ごとに神々、女神、神獣が描かれた絵画が並ぶ回廊。

 その回廊を進んだ先、大扉の先に聖女のお披露目の為飾り付けられた祭壇がある。

 

 緊張するわ、なんで俺マティちゃんと並んで入場するのかわからん。

 本来なら俺も皇族席にいて出迎える側なんだが。

 

 大体普通は聖女一人で入場だろう?。

 というか、ベールで顔隠してるのは まあ、聖女が身バレして誘拐されたり暗殺されない為の用心というのはわかるが…。

 

 マティちゃんを誘拐出来る(つわもの)おるんかい?

 このヒト、人類最強部族の族長の息子だぞ(次男だけど(笑))

 ドラゴンスレイヤーの称号持ちらしいぞ?

 

 聖女だけど…。

 

 そして、何故二人して顔隠すのかな? 

 何故、俺のベールは女子仕様で可憐な花とかレースがつけられているのだろう?


 侍女達が大喜びで花をつけてくれた。

 朝庭園で摘んだ新鮮ぴちぴちだ。

 

 マティちゃんとお揃いの白い被り物にやはり顔横に金の飾り紐とタッセルが垂れる。

 こちらは少し華奢な飾り。

 ベールもマティちゃんの顔だけのものと違い、かぶりものの上から胸上辺りまである薄いが中が見えない(中からは見える、魔道具?)全面華麗なレース編みのベール。


 ウエディングドレスのベールかい!


 ドレスのように胸から下に膨らみのある白に白の刺繍が入った長衣に同じく肩から下げる飾り布、お揃いの羊の女神の寿ぎの文様。

 花飾りがお花畑だよ侍女達、やりすぎじゃね?


 まあ…侍女さん達が楽しんでくれたなら幸いですけど。

 

 俺、男で皇子!

 そして聖女の婿!

 政略だけど。

 

 マティちゃんにもつけてやれよ、可憐なレースとお花を! 聖女なんだから(笑)

 

 いっそ羊の着ぐるみとか着て入場したい俺。

 ちらりと後ろを確認。

 静々と他の人には見えない、ベールもち羊が2匹ついてきてる。

 

 二足歩行で…。

 

 大丈夫か! 見えてないなら蹴られたりしないだろうか? 心配。

 

 後ろを気にしていたら服の裾をさばきそこなってコケそうになった。

 まだ開場前! ここで白の衣装を汚したら…。

 服をたくし上げて転ぶ覚悟をしていたのに転ばなかった。

 

 ふうっ。

 

 安心したら気が付いた。

 マティちゃんに抱き上げられていることに。

 

 不覚!

 

 「歩幅が合わないからこのまま抱き上げて行くぞ」

 

 ちくしょう、それを言われると弱い、俺の歩幅の二歩半がマティちゃんの一歩の歩幅だ。

 遅れたり小走りになったらみっともない。

 聖女にゆっくり歩いてもらうのも良いがどちらを合わせもお互い綺麗な歩き方じゃない気がする。

 

 扉の内側から音楽が聞こえる。

 

 「開場です」

 扉が四人がかりでゆっくりひらかれる。

 聖女にだっこされた俺はせめて服の飾りが綺麗に見えるように、軽い風魔法でたなびくようにした。

 

 おお、と軽い声が聞こえる。

 俺の魔法が受けてる、受けてる ふふん。

 学園での俺の成績は上の中、いいんだよ攻撃魔法なんざ使えなくて。

 調子に乗って少し強めに風を吹かせると何故か花びらが舞う。

 

 あれ?

 

 聖堂の天上高が三階分位あるのだがそこに二匹の羊が羽はやして飛んでいた。

 蝶ネクタイで二足歩行する四匹の二匹だ。

 花びらをまき散らしながら飛んでいる…。

 

 なんのサービス?

 

 「羊の神と女神、御夫婦で観覧しているようだ」

 俺を腕に据えたマティちゃんが正面を威圧するように向いてぼそりと呟いた。

 

 見栄えいいようにか。

 「観覧サービス」


 マティちゃん羊の女神の聖女だもんね。

 うんうん。

 うなずく俺を怪訝そうにみてるマティちゃん。

 

 俺が無言で納得しているとマティちゃん、ため息一つついて周りに聞こえないように呟く。

 「自分、結構愛されているのに気づけよ」

 「?」

 マティちゃん照れてる?

 顔は布で視えないがこの武骨な黒いのが照れて耳が赤くなっている。

 まあ照れるよな、女神が夫婦で自分のお披露目見に来ているだもんな。

 

 俺はおまけだけど。

 

 お祝いされているんだ。

 確かに聖女の誕生は100年ぶりくらいだっけ、女神様も羊も気合入るよな。

 

 「がんばれ、マティちゃん」

 

 こそっと応援してやる ふふふ。

 応援してやってるのにがっくりした気配がマティちゃんからするんだが…。

 解せぬ。

 

 ゆっくり花吹雪の中を皇王、皇妃、教皇の並ぶ中央祭壇前に着く。

 マティちゃんに降ろされて淑女の礼と騎士の礼、そろって頭を下げる。

 …だってマティちゃんが打ち合わせで淑女の礼をしたほうが自分が騎士の礼をしたとき映えるっていうから?

 でも、これ頭下げる角度があるから大変なんすけど。

 

 「羊の女神アルマリノの聖女、頭をお上げください」

 皇王陛下が立ち上がって俺達に手を差し伸べる

 

 助かった!

 

 父上、俺の体力加減を気遣って普通よりかなり早めに声かけてくれた。

 ありがとう父上!


 「皇国の光、皇王陛下 羊の女神アルマリノの聖女でございます」

 俺は胸の上、手のひらを交差するようにあて向上を述べる。

 「このよき吉日に皇国を寿ぐため、参上いたしました。」

 再び頭を下げるが、すぐ頭を上げる。


 先ほどより角度はない。

 俺の体力の無さに対する配慮です。


 えっと… なんでこのセリフ俺が言うのかな?

 魂胆が見えてくる。

 最初からうすうすそんな気がしてはいたが本気ですか父上。

 

 みてくれが女神ケレスティアだと幼少の頃から言われ、妹の代わりに女神の祭典に女装してさっきのベール被って出ていました。

 ベール被ったら女神に似てるとか似てないとかわかりませんよね?

 

 はい、おかげで女装とか抵抗ありません 五センチヒールは論外ですが。


 頭を上げて立ち上がり、くるりと会場に集まる貴族達の方向を向く。

 煌びやかなじゃがいもやらかぼちゃがひしめいている。

 ひゅっと息をのんでしまった。

 広間一杯の貴族、貴族、貴族。

 兄上にあがらない秘訣を聞いている。

 人間だと思うから緊張する、なら かぼちゃ・じゃがいもだと思えば楽だと。

 …酷いと思う。


 でも。

 あれはかぼちゃ、じゃがいも、ニンジン……と、その間にウエイターのような羊が混じっている。

 

 二足歩行で!

 凄いな羊!

 

 マティちゃんが俺の呟きに反応してとっさに呟き返してきた。

 「じゃがいも、にんじん、かぼちゃに羊肉…チーズフォンデュ」

 ふぼっ!

 耐えろ! 俺の腹筋!!

 

 俺、チーズフォンデュに茹でたじゃがいもつけるの好き!

 でも聖女様、羊肉は女神に不敬だと思います!

 心の中で挙手、羊の女神アルマリノの聖女にいいつける。

 

 ベールの奥でにやりとマティちゃんが笑ったような気がした。

 

 花びらが舞う。

 

 「100年振りに女神アルマリノの聖女がこの地に誕生した、皆の者、聖女の祝福を、女神アルマリノの恩恵に感謝を!」


 気が付いたら俺の眼の前に白い礼装を着た金の羊が一匹、俺と同じように前を向き、両手を胸の高さまで上げる。

 金の輪がすっと金の粉をまき散らしながら大きく広がり、貴族達の上を通りすぎる。

 羊、すげー。

 教皇の寿ぎと羊の光のシャワーに貴族達は盛り上がる 女神、大サービスだなこりゃ。 

 「聖女の証明だ、サービスするぞ」

 後ろから俺の両手を取る聖女?

 

 俺?

 

 「後ろを見るな、俺が合図したら握っている手を開いて胸より上にあげろ」

 

 あげろって命令形? 君は誘拐犯かナニカですか! 

 マティちゃんは勝手に俺の握りこぶしの下に自分の手を置いてそのまま上に挙げた。

 耳もとでイケボイス。

 「そのまま掌を上に開いて高く」

 ぎゃーー!

 ??

 

 背伸びをしながら両手を捧げるように挙げる。

 手の動きに合わせて貴族達の足元から色とりどりの華のつぼみのような珠が現れ天井に上って花開いた。

 手は上げっぱなしだけど、何度も何度も光の蕾は床から立ち上り花開く。


 うおー光魔法!。


 開いた華はゆっくり3回位回ると弾けるように花びらをまき散らす。

 しかし、幾つかつぼみのまま天井を通り抜けていく。

 失敗?


 「あれは外で皇城の空で花開く、外の観客のためのサービスだ」

 楽しそうなマティちゃん。

 こいつ、こういう悪戯みたいな魔法の使い方よく考えるよな。


 「殺しの為の火球より綺麗で楽しいだろ?」

 一瞬ひやりとする。

 が、そう言いながらこいつ何故か耳に息ふきかけてきよった!


 ぎゃーー!

 不意打ち!

 

 そういうことは可愛い女の子にやってやれよ。

 こそっと肘鉄喰らわせているのにマティちゃんは嬉しそうだ。

 こそっとじゃ威力ねえよ。

 こいつには全身全霊かけなければ効かないような気がする。

 ちくしょー!

 

 くやしくて地団駄ふんでやろうかと思うが、目の前の光景が幸せそうなのでやめた。

 

 床から立ち上る光る華の蕾、咲いて散華する様は美しかった。

 その下にいるのは虚飾にまみれた貴族達のはずなのにおとぎ話の舞踏会のように美しく無邪気だ。

 邪気が浄化されているのだろうか? 流石聖女(笑)

 

 その聖女は俺の影で好き勝手していた。


 腕を支えるふりをして光魔法を使った腕は腰に巻き付き、俺の頭に顔を埋めて匂いをかいでやがる。

 はーなーせーぇ!

 人前では猫のフリでぐでーんと逃げることが出来ない!

 はーなーせぇー!

 見てる! 兄上がによによしながら見てる!

 母上! 兄上といっしょにによによしていないで止めて!

 父上ぇえ!

 最後の頼みの綱の父上、皇王は娘を嫁に出す前の鬼になっていた。

 

 家族はダメだ。

 そうだ羊は…。

 

 くん、と足元が沈んだ。

 

 え?

 

 ぞわりと、ナニかが足から這い上がってくる。

 汗が、背中から汗がしたたり落ちて上質な白い生地にシミを作ってしまう。


 「綺麗な魂は綺麗なままで極上の刻を味わいながら…おいで…」


 誰かがささやく。

 

 イケボじゃない。

 マティちゃんが言った言葉じゃない。

 

 気が付けば一人で立っていた。

  

 足元には黄金の麦。

 

 黄金の麦は豊穣の象徴、女神ケレスティアの吉兆の印。

 なのに なにか ちがう?

 

 ざわりと。

 

 麦は円形に広がり、拡大している。

 

 ざわり。

 

 黄金の麦畑、なのにぞわぞわと足元から恐怖が上ってくる。

 不快感。

 

 だめだ。

 

 このまま、この金の麦に呑まれたら。

 

 黄金の麦畑はさわさわと風にゆれながら広がっていく

 偽物、の文字が頭に浮かぶ。

 呑まれたら戻れなくなる。

 

 だがどうしていいかわからない。

 下を向くと握りしめていた手の肉がボロボロと剥がれて骨になっていく。

 

 なんで!

 眼をみひらく顔の肉が剥げる。

 

 獣の口が迫る。

 生臭い息。

 喰い込む牙。

 僕は喰われている。

 誰かが笑っている。

 大人が笑っている。

 助けようと思った()が石の床に倒れている。

 鉄格子のついた小さな窓からは手も伸ばせなかった。

 だめだと。

 絶望した。

 喰われていることではなく。

 鉄格子の向こうに手を差し伸べることが出来なかったことが。

 

 痛いわけではなかった

 苦しいわけではなかった

 

 ただ

 

 絶望。


だ、大丈夫 トニー坊や幸せにするから!

マティちゃん、覇気押さえて怒らないでくれーー!

ぎやーー!

…お後、続きます。

トニー坊や、幸せにするので!

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