表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/93

第19話「森からの脱出」

 僕は次々と植物を生み出していく。

 それから数分後。僕の目の前に青々とした木々が茂り、色とりどりの花々が咲き乱れていた。

 うん。綺麗だ。

 まあ、何というか。元通りに戻すのは大変だったので、適当に色んな植物を成長させてみたから若干不自然な風景になったんだけど……これはこれで悪くないだろう。


「こ、これは凄いですね。まるで庭園みたいです」


 リディアも目を丸くしていた。


「……庭園というよりかは、悪趣味な植物園に近いか? それにしても、これ程広範囲に魔法を使っても、魔力切れを起こさないとは。やはり、貴様は規格外だな」


 ヒルデが呆れたように言う。


「森は、これでよし。後はゲートだけど、それはホワイトを見つけてから考えよう。とにかく僕らは、一旦この森を抜けよう」

「分かりました。……里の様子が少し気になりますが、まあ大丈夫でしょう」

「では、エルフの小娘。サッサと私を案内しろ」

「はい。こちらに」


 こうして僕達は再び森を歩き出す。

 脱出のルートは結構回りくどく、幾度も同じような道を通っては、鬱蒼とした森の中をひたすら進み続けること数時間。……暫く歩いたところで、ようやく森の外へと出られた。

 森の外は、何の変哲もない平原が広がっていた。

 ただ、空を見上げると太陽の位置が低い。どうやら、今は昼下がりらしい。

 遠くの方を見ると、舗装されていない土の道が続いている。

 ラッキーだ。あれを辿っていけば、街まで到着できるだろう。


「……わあ! 私、遂に森の外から出ちゃいました!」

「そっか。これがリディアにとって、初めての外の景色なんだ」

「ええ。……ずっと夢見ていたんです。自分の足で、自由に世界を巡ることを……」


 リディアが感慨深げに呟いた。

 彼女にとっては、この旅こそ夢の始まりなのだ。

 ……だったら、僕はその夢を少しでも協力してあげたいと、そう思った。


「リディア。僕で良ければ、いつでも君の力になるよ」

「ありがとうございます。では、早速お願いがあるのですが……。私と手を繋いで貰えないでしょうか?」

「手を繋ぐの?」

「はい。……実は私、ちょっと怖いです。外の世界は、あまりにも知らないことが多過ぎて……」


 リディアは顔を真っ赤にして言った。


「うん、分かった」


 僕は彼女の手にそっと触れた。すると、リディアは嬉しそうにはにかんだ笑顔を見せる。


「えへへ」


 そして、ぎゅっと強く握り返してきた。


「あの、デントさん。改めて、これからよろしくお願いします」

「うん。一緒に頑張ろうね!」

「はい!」


 こうして僕は、エルフの少女リディアを仲間にして、無事に森からの脱出を果たしたのであった。

 しかし、勇者パーティーの合流まで道のりはまだ遠い。

 僕ら三人は、見つけた土の道を辿り、人里を目指して歩くことにした。

 道中、モンスターに遭遇することはなかった。

 どうやら、この辺りは平和な地域らしく、危険な動物の姿も見受けられない。

 僕とリディアは並んで歩いていた。

 ちなみにヒルデは、少し後ろを歩いている。……何だか、少し体調が悪そうに見える。


「くっ、太陽め……! この私の身体を焼こうとするなど、万死に値するぞ!」


 とか何とか言ってるみたい。

 しかし、ヒルデは吸血鬼。陽光によるダメージは、ただ単に日焼けして肌がヒリヒリしているだけとは比べ物にならないのだろう。


「ねえ、リディア。ヒルデの具合が悪いみたいなんだけど、どうにかならないかな? 彼奴、実は吸血鬼で太陽の光が苦手なんだよ」

「まあ、そうだったんですね。でしたら、この折り畳み傘を使ってください」


 そう言って、彼女は折り畳まれた黒い布の傘をヒルデに差し出した。

 ヒルデが受け取ると、すぐに広げて頭から被った。


「おお、だいぶ楽になったぞ。小娘、よくやった。褒めて遣わす」

「いえ、お役に立てて嬉しいです。体調が悪ければ、遠慮なくおっしゃってくださいね?」

「うむ。よきにはからえ」

「……ヒルデがどういう立場の人物なのか、イマイチ理解し切れてないんだよなぁ」

「私は、魔界の魔王になるはずだった最強の吸血鬼だ。偉いんだよ」

「でもそれ、三百年も昔の話なんでしょう? 今頃、もっと強い魔族が生まれてたりしないの?」

「ふむ、今の魔界がどうなっているのか、気になるところではある。まあ現代の魔王が勇者に倒されたとあっては、今頃魔界は大混乱だろう。次の魔王の座を狙って争い合う者も出てくるだろうしな」

「そうなると、また新しい魔王が誕生しちゃうの? 折角倒したのになー」

「そういうことだ。まあ新魔王が生まれた暁には、この私が其奴をぶっ殺して、次の魔王に私がなる。……その時は、デント。貴様も力を貸せ。さすれば貴様を我が配下として迎え入れてやる」

「えぇ……それは嫌だな」

「ふん、まったく生意気な男だ。だが、今はそれでいい。いずれこの私の恐ろしさを思い知る時が来る。覚悟しておくといい」

「はいはい」


 そんな話をしていたら、前方の道の先に村が見えてきた。

 ようやく、人が住んでいる場所を発見できたのだ!

『本作を楽しんでくださっている方へのお願い』


下にスクロールすると、本作に評価をつける項目が出てきます。


お手数おかけしますが、更新の励みになりますので、ご存知なかった方は是非評価の方よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』 をいただけると嬉しいです

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ