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クラウディオが言っていたお客様は、翌日モニカの前に姿を現した。
「やあ、君が噂のモニカちゃんだね。初めまして。僕の名前はリックだよ。よろしくね」
正面玄関まで横付けした馬車を降りた途端、ひらひらと片手を振りながら満面の笑みで自己紹介をしたのは、眩しいほどの金髪にエメラルドグリーンの瞳を持つ青年だった。
見たところ、クラウディオより少し年下だろう。
20代半ばの彼もまたクラウディオと同様に大変見目麗しい青年であったが、初対面であるのに距離感ゼロの態度に、モニカはやや引き気味だった。
「……お、お初にお目にかかります。ファネーレ邸でお世話になっておりますモニカと申します」
今日の為にクラウディオから贈られたウール地の薄紫色のドレスの裾を摘まんで、モニカは腰を落とした。
「いやー、噂でしか聞いたことはなかったけれど、可愛らしいねぇー。これ、クラウディオ君からの贈り物?いやぁー良く似合っている。うん、可愛いっ。あと、これから長い付き合いになるから、僕の事はお兄さんだと思って……ふごっ」
ぱぁっと、春の日差しのような笑みを浮かべて、モニカに向かって早口でまくし立てたリックだったが、突然、クラウディオに口を塞がれてしまった。
「リック殿。君はいつから女性に対してベラベラ喋る男になったんだ?……ん?」
「ごめんなさい。なんかちょっとテンションが上がっちゃって……」
「なら、その持て余すテンションを下げる為に、屋敷の周りを走ってこい」
「いやもう、大丈夫。うん、通常より低くなったからっ」
「そうか。それは何よりだ」
途中からクラウディオがリックと自分の間に割って入ったせいで、モニカは蚊帳の外で二人を観察することしかできない。
ちなみにクラウディオは自分に背を向けているので、どんな表情をしているのかわからない。
けれど、リックが涙目になっているから、きっと穏やかとは言い難い顔をしているのだろう。
ただ、大変申し訳ないが今はそのことより、もっと気になることがある。
(……噂って何だろう)
大方、両親を盗賊に襲われ、みなしごになった哀れな自分を屋敷に引き取ったという類のものだろう。
それは間違いなく事実なので、噂と呼ぶのは些いささかおかしい。それにリックのニュアンスは、なんていうか生温い何かを含んでいるようだった。
「モニカ、そろそろ部屋に移動しよう」
首だけを捻ってこちらを向くクラウディオは、いつも通り穏やかな笑みを浮かべていた。
本日は雨ではないが曇り空。真冬の日中は、陽が差さなければ凍える寒さであった。
「はい」
頷いた途端にぶるっと身震いしたモニカに、クラウディオは慌てた様子で背後に回り、背中をそっと押す。
背中越しにクラウディオの手のひらを感じで、ぴくっと身体が反応した途端、運悪くリックと目が合った。
モニカと目が合った途端、リックは意味深な笑みを浮かべてウィンクをした。




