第5話 王様の心境
暗黒の教団を野放しにしてしまったのは。
僕の甘さが原因かもしれない。
僕は王様になった。
勇者様にベタベタ甘えていた、何もできなかった頃の自分とは違う。
僕のことなんて見向きもしなかった家族を、民のことなんて考えもせず家臣に防衛を丸投げしていた王族の連中を排除して、なんとか王様になったのだから、しっかりしなくてはいけない。
巻き込まれただけなのに戦ってくれた、立派な勇者様に胸を張れないから。
だから、毎日頑張っていたのに、彼女に会いたくてたまらなかった。
そんな弱さが、暗黒の教団に対処しなければいけないと思いつつも、後回しにしてしまったのかもしれない。
二度も別の世界の事情に巻き込んでしまって、彼女には申し訳ない。
でも、顔を見た時にそんな思いは消えささった。
あの頃となんの代わりもない彼女と、同じ目線で立てることが嬉しくて、大きくなった自分を報告できることに舞い上がってしまった。
だからせめて、国宝をかき集めて彼女が一人でも身を守れるようにと、考えたのだけど。
怖がらせてしまっただろうか。
この先、彼女がどんな決断をしても、僕がそれに何かをいう権利はない。
この世界を愛してほしい、できればこれからもずっと自分の隣にたってほしいなんて、言う権利はない。
でもせめて、帰るまでの短い間だけは、言葉を交わすことを許してほしい。
それだけで僕はこれまで頑張ってきた努力が報われるような気がする。




