第39話 チュートリアルをクリアできるかも怪しい
「メリーさん!火傷痕消えるの、ちょっとだけ遅れるけどいいよね!?」
あれから10日後、遂に早めのバカンスに出かけたままなかなか帰宅しなかったベルさんのハイライトさんが帰ってきました。
偉大なる吹っ切れを伴って。
「もう、私は私のやりたいようにやるから!私があの子に治療に魔力を使って別の人を治せなくても、悪いのは私!その人がそれで死んじゃっても十字架を背負うのは私!だったら、今のこの見てることしか出来ない苦しさと万が一の場面で背負う十字架の重さを比べてどっちを選ぶか決めるのも私じゃん!」
……あ、これ原作で見た場面だ。
あのまま病んでいくようなら何か助言とかしようかなと思ってたんですが、主人公に選ばれるほどの精神力の持ち主ですもんね、そりゃ自力で立ち直りますよ。
「見事な吹っ切れですね。まあ、私はベルさんの決断を応援しますので好きにしたら良いんじゃないでしょうか?偉いエネルギー関連の学者さんも言ってましたし、『私は好きにした、君らも好きにしろ』って」
「わたくしもベルを応援しますの!治るから治さなくて良い、は理由になりませんの!」
ということで、いってらっしゃーい!
「だよね!行ってくる!」
ばーんと扉を開け放って掛けていく主人公。
まあ、絵になりますよね。
なお……。
【毎日同じことばかり言われて、流石にキレた模様。ベルちゃんの怒りが有頂天】
……なんでト書きさん、ブロント語喋ってますのん?
☆★☆
そんでもって翌日。
あのあとしばらく後に帰宅した、めっちゃめちゃ笑顔だったベルさんが言うには……。
「なんか、毎日お見舞いに来させたり、毎日菓子折り持っていったり、最終的には怪我まで治してもらったからって巫女さん達がお礼にくるみたい」
との事。
ふむ、いいタイミングなのでここで問題の篠影さんの戦い方について致命的な問題点を指摘しておきましょうか。
……いや、彼女の運用自体に問題があるわけではないんですよ。
あの神器の組み合わせなら間違いなくああいう風に単騎で囮になるのが最適解ですし。
周囲の大人や友人、その他身近な人間が曇りまくるのは|勝利のためのやむを得ない犠牲と言えなくもないですし?
ですが、それとは関係なくひとつ……、いや、細分化するとふたつかな?
篠影さんは重大な問題を抱えているのです……っ!
「ご、ご迷惑おかけしましたっ!」
「う、ウチの篠影さんがお世話になりました。……ガチで怖かった」
「篠影さんの治療、ありがとうございました。……お医者さんに怒られる時ってあんな感じだよね」
しかし、やってきた巫女さん達がベルさんに怯えてますね。
何やったんですか一体。
「別に、今まで散々治療を拒否して私にストレスを溜めさせたのを理由に、体中全部、枝毛1本に至るまで完全に治してきただけだよ?正座させながら」
なぜ正座……。
ま、まあ、ベルさんを怒らせたら怖い事を私は良く知ってますし?
気をつけていれば私が巻き込まれることは多分無いでしょう。
……ほんと、気をつけとこ。
「まあ、どうせ菓子折りとかも予算から出てるお金なので大丈夫です。私とルテ、交友費にほとんどお金使ってませんからね。……で、ついでに篠影さん絡みの事をあれこれお話しておきたかったのでちょうどいいです」
「私がらみの事?」
指先を顎に当てながらこてん、と首を傾げるちっちゃい巫女さん。
……あざとい。
まあ、今から多分真っ赤な顔させることに成るのがちょっとだけ申し訳ないんですけど……。
「はい、篠影さんの戦闘に関する、周囲のストレス問題にメスを入れさせていただきます。貴方みたいな小さい子……にみえる子が戦闘の度に大怪我するの、見てられない人多いんですよ。なので、前回の戦闘で私が見つけた問題点を解消できないかと」
「何か気づきましたの?流石メリーですの!……メリーは凄いんですのよ。わたくしの今の魔力制御能力も、使ってる魔法も、全部メリーから指導してもらった結果ですの!メリーが問題を解消すると言うなら、きっと、篠影さんが大怪我をする頻度は劇的に下がりますの!」
思わぬ提案に目を見開く篠影さんと……。
「やろう!」
「やりましょう!」
と、即断で飛びつく残りの巫女さんズ。
まあ、近くで見てたと思われるこの2人が一番蓄積ダメージ大きかったでしょうからね。
「……ルテちゃんから聴く限り、メリーさんって結構脳筋根性論の人な気がするんだけど、ほんとに大丈夫なのかな?」
で、ベルさんはそんな事をつぶやいてますが……。
……ちょっと、自覚はあります。
「ということで、問題点の洗い出しなんですが……。まず、これで遊んでもらえますか?」
とりあえず、気を取り直して篠影さんの事ですね。
さて、ここに取り出したるはいい感じに大きめのタブレット。
表示されているのは、とある音ゲーの画面。
チュートリアルを抜けた先の初期ステージですね。
当然、難易度は最低、流れてくるノーツの速度だけちょっと早めにしてありますが、これぐらいなら音ゲー初心者でもクリア自体は簡単に出来るぐらいの難易度です。
「あ、ぴこぴこだ!えっと、流れてくるマークがここに重なったらタッチすればいいのかな?ふむふむ、音楽のリズムにそって流れてくるんだ……?え?一定以上失敗したらげーむおーばー?……あの、これ、凄く難しいやつだったりする?」
「いえ、簡単な奴ですね。初心者でもセンスが良ければノーミスクリアできるぐらいです」
「じゃあ、大丈夫かな?ここのスタートって書いてあるのを押せば始まるんだね?」
ということで、篠影さんの音ゲー初プレイ。
行ってみましょう!
☆
軽快なリズムに沿って、それでもゆっくり流れてくるノーツを巫女服の少女が必死の形相で追いかけ……。
「すごっ!中盤まで来てPERFECT1回もなし!?え?篠影さんってここまでなの!?」
「というか、地味に日本語版ですね?ご配慮ありがとうございます。……篠影さんには関係ないみたいですけど」
はい、プレイ開始から8回のゲームオーバーの後、ノーツの速度低下などの更なる難易度低下を加え、更にそこから3回ゲームオーバーし、12回目のゲームオーバーに直進しているのが現在のプレイです。
まあ、その、篠影さんなんですが……。
リズム感が全く無く、反射神経がナマケモノといい勝負が出来るレベルなんです。
なら、当然その両方を使う運動競技なんて全部ダメでして……。
はい、いわゆる運動音痴……という奴になります。
「……なるほど、そもそも先日の戦闘で最初の一撃を入れられた時、見え見えの大振りなのに回避行動すらとってませんでしたの」
「確か、篠影ちゃんって怪我しても運動能力下がらないんだよね?それじゃ、毎回大怪我するのって……」
お気づきになられましたか、お嬢様方。
「うあーん!このぴこぴこ難しいよ!絶対簡単なんて嘘だよー!」
「……ちょい貸してー。あ、ちゃんと全曲解放してある。えっと、設定変えてこの曲で……。篠影さん、ちょっと見てて」
「金摺、音ゲー好きですよね」
「まーね」
顔を真っ赤にしてゲームオーバー画面を見ながらぷりぷり怒る篠影さんから、ピアスバチバチ金摺さんがタブレットを奪い取り……。
「ほいクリアー。ブランクあるからちょっとミスったかな」
高難易度の曲をあっさりほぼパーフェクトでクリアしてみせました。
あと、音ゲーマー特有の、ミスをした時首を傾げるやつも見せてもらいました。
……あれ、なんでみんなやるんでしょうね?
で、自分がやってたゲーム画面とは比較にならない高難易度曲をクリアする様子を見せつけられ、呆然としている篠影さんに辛い事実を突きつける時がやってきました。
「……つまり、貴方が毎回大怪我をするのは、貴方自身に反射神経とリズム感が全く無いからなのです!」
「がーん!」
なので、私のリハビリがてらちょっと一緒に運動しましょうか。
ええ、大丈夫。
日本の祓魔庁と違って、私は手加減しませんから。
☆★☆★☆★☆
そもそもアレだけ被弾が多かった理由は「本人が鈍すぎて避けられなかったから」というオチ。
メリーさんは知ってたので、怪我でぼろぼろになっていく姿を見ても「まあ、うん、そうなるよね……」的な心境で見てました。
本人的にはそれでも問題ないんですが、怪我が減ると周囲がとても喜ぶので逃げ場はありません。
頑張れ篠影さん。メリーさんは結構脳筋だぞ!
ということで次回こそ「いっしょにとれーにんぐ」です。
更新予定は8月24日20時。
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