第67話「転・制限時間」
「さってと……場外乱闘の心の外の問題はこれくらいにしておいて、今度は心の内だよ」
桃花は姫に冷静になるように努める。というかかなり頑張ってなだめる、世界種ほどでは無いが、宇宙種である天上院姫……もといミュウをまともにメインコントロールルームで止められるのは桃花先生しか居ない。信条戦空も止められるがあっちは肉体言語だし、桜愛夜鈴だと……なんと言うか憑依される危険性がある。
白玲渚も止められるが、どう止めるか想像がつかないし。天上院咲も止められるがとう考えても姫側の味方をする。……真城和季も人徳的に止められるが何というか実力行使になり事態が拡大&悪化する可能性がある。
世界種クールマは論外、あれは姫の悪行を更に悪化させる、悪い意味で相性が良すぎるからだ。
「……ふう! ふう……!! ……そうじゃな……。外のことは軍勢に任せよう……。あとは第1章の制限時間、タイムリミットの設定じゃな」
ネームがほぼ完成している以上、自分も皆も設計図を知っているので未来予知は出来る、あとは本編の時間感覚の設定だけだ。それが最初の本気の時、吸血鬼大戦の時はタイムアップは0時00分の1週間に設定され。EWⅠの時は無自覚だったとしても〈2020年東京オリンピック〉に設定され、それで皆が神のゲームに挑んだ。GM姫が無自覚だったとしてもだ。
だが今回は自覚有り、今の所時間進行は2030年に決まっている。人間側の不利な点としては2028年から2030年で天上院咲の物語を処理しきれるかどうかにかかっている。
で、今回のEWⅡ、第1回大会だが第1章の全貌を知っているGM姫も桃花も、これもゴールまでは簡単では無い事は解っている。
「対戦相手からは〈今までは眼中に無かった……今度こそは……〉って感じが伝わって来るね」
「いや、プレイヤーが挑む分には歓迎なんじゃが、こっちが無自覚だったのがなあ~……」
姫としては喜んでいいのか悲しんで良いのか微妙な立ち位置になった。
設計図という名の盤面を見る限り、湘南桃花の感想は……。
「24時間じゃないよね、6時間くらいかな?」
「それは普通の感想じゃが、令和生まれの初心者に6時間はちょっとキツイかもしれないな……」
咲との冒険のせいで難易度が〈甘く〉なっている姫、第三者や読者の事も考えて、実際に挑むプレイヤーのことも考えての裁量とも言う。
「じゃあ難易度2つにしたら? プロは6時間、アマは12時間」
桃花はプロとアマで2倍差の難易度にしようと提案した。
「あと、年月日いるかな? また〈いつまでですか?〉 って聞かれても嫌だし……不本意?」
吸血鬼大戦はそもそも意図的に年代は記載していない、あくまで1週間のいつかの出来事、という世界観だった。不確定だからこそ美しい事を美徳とした世界観。
だがこれは本戦だ、当然運営陣もミスは出来ない。
「えっと……まず春がいい……春の大三角形とかどうじゃ?」
姫が感覚で季節を言う。これ以上冬はゴメンだという意味も込めて。
公式大会開始日時は、今現在歴2030年4月3日〈水〉12時00分スタート。
初心に戻って星に由来させる形式。春の大三角形、アルクトゥルス、スピカ、デネボラの星が良く見える日に設定。
つまり、タイムリミットは。
プロ級は今現在歴2030年4月3日〈水〉18時00分。
アマ級は今現在歴2030年4月4日〈木〉0時00分。
が、今回のゲームのタイムリミットである、それを超えると、公式大会として時間切れのゲームオーバーだ。
「私達が進行するのは?」
「アマ級を置いてきぼりにしたくないから12時間でネームはやる」
咲もいるし、その意見は解らなくも無い。
「おっけい」
桃花はそれでネームを切った。
それから数分後、桃花の手が止まる。
「おーい姫~、4月1日が漫画で、小説は4月3日が今言った内容なんだけどどっちが正しい?」
「あー誤差か……なら漫画が正しい。4月1日〈月〉だな」
改めて……。
つまり、タイムリミットは。
プロ級は今現在歴2030年4月1日〈月〉18時00分。
アマ級は今現在歴2030年4月2日〈火〉0時00分。
となるのが公式らしい……まだらしいなのだが……念のためである。
◆
オーバーリミッツVS機械神アーカーシャ、盤上の戦い。
「……ここに来て制限時間が決まったか……」
オーバーリミッツが小さく小言を呟く。
「ハイ、もう後戻りは出来ません。タイムアップは誰かの犠牲を意味します」
アーカーシャは淡々と今までの事実を言う。
失敗すれば誰かが犠牲という名の責任を負い、その失敗の歴史が刻まれ〈残る〉、たぶん人間たちはそうやって失敗の歴史を後世に伝えて強くなっていったのだろう。
「まーここまで来て解ったことはある。絶対に失敗できない盤面で、あんたは必ず私と同じ手になる!」
とどの所ずボシ、誤散があるとすれば……。
「ハイ、ですが、倍返しで同じ手を打ち返します」
「……いくら迷走しても結果は同じということか……または妖精の尻尾を追う、残った足跡を追う……まるで設計図の指示通りに現実の釘を刺すように……」
「……まあ、それが仕事ですので……」
それはスズの意志なのか、機械神の意志なのかは判断がつかない……。
「おっけい、見知らぬ他人も解った。弾丸の正体も解った。あとは自然災害にビビらなければ私の勝ちだ!」
暗い暗い夜の道の先。存在の炎はこの時、確かに遠くに街の灯りを視た。
「お供しましょう……」




