第55話「転・神様のこわいもの」
「信条戦空、ちょっとお前に聞きたいんじゃが」
GM姫は珍しく光の勇者戦空に相談を持ちかけた。
「うん? 何だ? つまんねー話ならやらねーぞ?」
「いや、やってみなきゃ面白いかなんてわからねーじゃろ? そんなんじゃからお前は最初の1歩が遅いんじゃよ」
「……口が達者になったな」
「……咲の冒険様々なんじゃがな」
簡単に言うと闇と光が会話をする。
そう言って、姫は戦空の隣のイスに座る。
「ふう、……もしさ、世界種クールマの紙のみの願いを叶える。……をやめたらどうなると思う? 目に視える物以外も叶える、透明な原初の状態じゃ」
戦空もそれを聞いて考える、確かに目に見えないものが勝手に見える化して動き回ったらコントロールは出来ない。だがしかし、それは小さな子供は誰しも初めは持っている力で。成長していくに連れて今の力を手に入れる。おもちゃから鉛筆、鉛筆からタブレット、タブレットからキーボードへ……、順番は違うかもしれないが。子供が世界種クールマに餌を与えられない構造になっている。
「たぶん、怖がってるんじゃないかな。その亀を」
「怖がってる……か、実際そうかも。痛い目にもあってるし」
「ん~、よくわかんねーけど。願うだけで何も出来ないことはない、ってなっちゃって、たぶん、ビビったんじゃないかな?」
良かれと思って叶えて、見える化して、出来ないことを出来るようにするのが姫のためだと思って周りの皆がやった結果が今の現実なら、確かに怖がるのも無理はない。
それが意図せず力を持って、邪道の物語が大反響したなら尚更だろう。星明幸=ミュウ=天上院姫には王道の物語を作る道も力もあった。希望の光の物語、例えばおとぎ話とか昔話とか、ホンワリした物語で終わらせる力もあった。
それが邪道を進んだ結果、見える化して、皆が集団で自分の闇です。なんて知らなかったら、そりゃビビるだろう。泣き寝入りもしたくなるというものだ。
「んで、3000回愛してるって言われて、最後まで解らないって言われて負けた気分はどうなんだ?」
戦空は嘘が下手なので、正直に今さっき起こった事を口にする。
「……、切ない気分はもうコリゴリじゃな……」
同じ内容を何度も形を変えて回された身としては、別の意味で情緒不安定になりそうだった。本気の感情や情熱が胸を打つ物語……たぶんこれは新しい物語と言う名のネームを描かないと回り続けるのだろう。
「……ま! これもウチよくわかんねーけど! お前は相手に信じてもらいたくて頑張ったみたいだけど。今度はお前が皆を信じてみたらいいんじゃねーか?」
「……というと?」
「ちゃんと言うと。信者が神を信じるんじゃなくて。今度は神が信者を信じてみるとか。そうしたらクールマは夢を食べ放題だ!」
子供に寄り添うゲーム進行だと、確かにそうなるのだろう。
確かに、世界種クールマの力の本来の使い方は。キーボードも、鉛筆もおハシも、文字も読めない子供に与えられた唯一の夢の力だ。
「ふむ、……まあ世界中の信者を信じてみるのもアリ……か……、まあ何でも叶える……は勘弁じゃが……」
そう言って、姫はクールマを抱っこして。首輪を一時的に外すことにする。
「なぁ~~?」
世界種クールマは「大丈夫?」と姫の心の感情を読み取る。まるで初めて犬に触るようにビクビクおどおどしながら、その亀を空中へ浮かせる。
「……とりあえず一時的だぞ? その首輪外すからリールのない自由な犬みたいに草原を走り回ってみろ。……何度も言うが全部は叶えるなよ……? あーあと、ちゃんと帰ってくること」
「なぁ~~~~!!」
そう言って、元々ふわふわした存在が視覚化してたのもあってか、クールマの存在はどんどん大きくなり、透明になり、空に溶けていきながら、思いっきり走り回るように超巨大な世界と溶けた。
「……ちょっとは恐怖心は消えたか?」
「……まあちょびっとだけ心晴れたかな」
戦空と姫はイスと空の下で物思いにふけるように黄昏れていた。
どうやら創造神ミュウの〈こわいもの〉は、世界種クールマだったらしい。無自覚だが、それこそ深層心理と言ったところだろう。




