第32話 お別れ
「「「おーー!ってナニコレ!?」」」
部屋を開けた瞬間に部屋の明かりが青色なのがわかった。
でも眠るのにはちょうど良いかもしれない。
「エラ、、、これ、シャコガイ?」
「うん、シャコウガイって貝やで」
シャコガイと言うのはホタテとかと同じで2枚貝なのだが、上向きに口が開く貝だ。
日本でもオオシャコガイといって2メートル近く大きくなるものが存在するがそれよりもさらに大きくなって人間がすっぽりと入る大きさになっている。
例えるならば天然のカプセルだな。
ここまではいいんだ、ここまでは。
「ギャァーーー!!」
ソフィアが叫び声をあげながら部屋を出て行く。
ソフィアが立っていた場所の足元を見ると
モゾモゾ、モゾモゾ、、、
あの有名なダイオウグソクムシが不気味な動きをしながら歩いていた。これは気味が悪い。
そのダイオウグソクムシの上をポポちゃんよりもブサイクなチョウチンアンコウが青白い光を放ちながら泳いでいる。ってか部屋の照明こいつかよ!!
それ以外の魚も泳いでいたが、もはや深海水族館状態だった。図鑑でしか見たことがないようなものもいて面白いけど、この中で眠るのは怖い。
「なあ、エラ、なんでこんな内装なんだ?」
女子の部屋と比べて精神的安全が確保できなさそうなんだけど。
「なんでって2人をもてなすためや!男のロマンがこんなかにはたくさん詰まっているんだ!ってうちのおとんが言ってたで!」
(((エラパパの趣味かよこの部屋!)))
エラパパの好意とわかった手前この部屋に泊まることを断るわけにはいかず、俺とライアンはこの部屋に残った。
そしてエラと女性陣は自分たちの部屋に戻っていった。俺もここじゃなくてそっちの部屋に行きたい。
あ、他意はないからな。
「、、、寝ようか」
「、、、そうだなおやすみ」
ライアンの提案に俺は乗った。この海底1万メートルみたいな部屋でガールズトークならぬボーイズトークが弾むわけがない。
俺たちは早速それぞれのシャコガイカプセルのなかに入った。貝の口の部分に泡の膜が貼られており、その内側は空気で満たされている。
【この魔法は何回見ても素晴らしいですね】
泡の膜の内側に入った時、当然服は濡れていないわけだが、アカリによるとこれは高度な魔法らしい。
「膜の内側に水分を通さない」となると内側に入った時点で体内の水分が奪われ、ミイラになってしまう。
だから条件を指定して魔法をかけなければならず、とても難易度が上がるようだ。
ちなみに食事の時にあった泡もこれと同じ魔法だ。
貝の内側は外側の地味な見た目と違い、白色の清潔感のあるものだった。ランプもあって明るさの調節もできるし、これなら快適に眠れそうだ。
こうして俺は明日の朝ごはんが何かを考えているうちに眠りについてしまった、、、
ーーーーー
モゾ、モゾモゾ
うーん、頭がくすぐったいな、、、zzz
モゾ、モゾモゾ
なんだよこれ、、、zzz
モゾ、モゾモゾ
いい加減にしろ!!!
俺は顔を横に向け、貝の中にあったランプをつけると
目の前に真っ黒な目が2つ、そして数えきれない足をもつ、ダンゴムシみたいなアイツがいた。
モゾ、モゾモゾ、、、シャリ
&(%<~][\%$$$~~#%>!!!
完全防音な貝殻の外に俺の悲鳴が聞こえることはなかった。
ーーーーー
「タクミ、朝だ起きてくれ」
翌日ライアンがシャコガイカプセルを外から開けたことで目覚めた。
うん、全然眠れなかったね。なんで目の前にダイオウグソクムシがいるんだ?多分俺がカプセルに入る前からいたんだろうなぁ。
そんな最悪な目覚めの後、朝食を食べた俺たちは地上に戻ることにした。出来ることはやったからね。
「それじゃあみんな元気で!また遊びに来てな!!」
エラやエラパパ、エラママはもちろん村の人魚の人たちも見送りに来てくれた。
「ああ、また来るよ」
「僕もだ。約束する」
「次に来る日を楽しみにしておりますわ!」
「私も楽しみにしてるわ」
「うん、必ず来るね」
「うわーん!ぜっっったいまだぐるがらねーーー!」
ルーシー泣きすぎ。30歳の泣き方じゃないよ。
「ルーシーちゃん泣かんといてや!うちかて泣かんように我慢しとるのに!寂しくなるやん!」
そういってエラがルーシーを抱きしめた。
感動的なんだけど普通はポジション逆だからな。年上のルーシーが年下のエラを抱きしめるんだから。
こうして名残惜しくもエラたちと別れた後、アカリに頼んで水流魔法を使ってオセアンまで帰った。
地上に戻ると一昨日と同じようにそのまま漁協に向かう。受付をするとすぐにメンデルさんがやってきてくれた。
「本当にありがとうございます。そして人魚村のリーダーに会う機会まで設けて頂いて、感謝してもしきれません。」
俺たちはエラパパに頼んでメンデルさんと会う日取りも考えてもらっていた。
これで後は人魚村の人たちとオケアンの町の人たちの話し合いで決めることになるだろう。
そしてメンデルさんからライアンに一枚の紙が手渡された。
「これがクエスト成功証明書です。こちらをギルドに提出して下さい。この度は本当にありがとうございました」
今回のクエストのように魔物の討伐ではないようなものは、依頼主がクエストの成功を証明する紙を発行して冒険者に手渡す。
これをギルドに提出すればギルドはクエストが成功したとみなして冒険者に報酬を支払うのだ。
メンデルさんに改めてお礼を言った後、俺たちは漁協を後にした。
調べたところカーイル行くための馬車は明日の朝来るらしいからそれまではのんびりできるな。
それからの1日はクエストが終わったこともあってリラックスの時間にあてた。
女性陣はこの前のクエストの報酬金を使ってショッピングに行ったりしてたし、俺は寝不足だったので宿で昼寝をしてだらだら過ごした。
そして次の日の朝、馬車のやってきそうな時間になったので俺たちは馬車乗り場の前までやってくる。
「これで海とも見納めかー」
ルーシーが寂しそうに海を眺めている。エラの事でも思い出しているのだろうか。
俺も最後に海を見ておこうと遠い水平線を眺める。その瞬間、
ゴロゴロゴロゴロ、、ドーーーーン!!!!
海の方から爆音が聞こえてきた。




