第30話 海のお仕事
遅くなってすみません!
陸に帰ってきて早速俺たちは漁協へ報告しに向かう。
「ありがとうございます!本当に助かりました!これで漁師の方にも良い報告ができそうです。引き続きよろしくお願いします」
メンデルさんに事情を聞いてほっとしたようだ。
これから作業のために複数日海にいる旨も伝え終えると宿に戻った。
ーーーーー
次の朝この町に来た時に訪れた浜辺へ向かった。船が無いほうが行動しやすいこともあり、エラとの待ち合わせはここにしたのだ。
待ち合わせの時間より早かったので砂浜を散歩していると
「キャーーー!」
ソフィアが叫び声を上げた。
「どうした!?」
「ひ、人が倒れてる!!!」
ソフィアが指差した先をよく見ると確かに人が波打ち際で仰向けに倒れていた。
慌てて俺たちはその人の下へ走る。近づくにつれてその人の詳細が見えてきた。茶色い髪の毛なところを見ると女性なようだ。そして波打ち際に見える足、、、足?どう見ても魚の尾びれだ。
スーーー、スーーー
「、、、エラここで何してるんだ?」
そばまで駆け寄ると波打ち際でエラが爆睡していた。こんな外で寝てたら風邪ひくぞ。
「んーー、ハッ!!しまった朝やん!!」
俺がのぞき込んだところでエラが起きだした。そのまま俺と目が合う。
「あ、タクミ、、、おはよう!いい朝やね!」
何もなかったように振舞ってるけど口元に涎の跡が見えているよ。
取調べを行うと楽しみすぎて眠れなかったらしく、朝陽が昇るよりも前に集合場所に来て海中で待っていたそうだ。そしてそのまま寝てしまい、浜辺に打ち上げられたという。
「さ、今日も張り切っていくで!」
出鼻は挫かれたが気を取り直していこう。
俺たちはエラに連れられて深い海の底へと潜っていった、、、
ーーーーー
「おはよう。よく来たな」
村に着くとエラパパが出迎えてくれた。
「早速だが配りたいものがある」
エラパパは俺たちに一つずつ物を渡していった。
ボウリング玉サイズの貝殻で巻かれていった先端には咥えられるように穴の空いた棒が付いている。
「「これは?」」
俺以外のみんなには分からなかったらしい。
「これはホーラ貝という貝を使った、ホーラ笛というものだ」
エラパパが笛を吹くと戦国時代で戦の開始を伝える音が鳴った。完全に法螺貝だな。
「これを魚の群れめがけて吹いていく。これに驚いた魚は逃げていくから上手いことやってこの空間から追い出していくぞ」
なるほど、そうするのか。
それに海中の方が音が伝わるはずだから効果は高そうだ。
吹き方のコツを教わったあと早速魚たちが多くいるポイントに向かった。
いくつもの岩石が積み重なったような場所ですき間があり、魚の隠れ家には持ってこいだ。
「まずは私とエラでお手本を見せる。しっかり見ておくように」
エラパパとエラは少し打ち合わせをしたあと、エラがポイントの1番深いところまで泳いでいった。そして岩にホーラ貝をくっつけると
ボーオオーーーー
鼓膜がビリビリするほどの大音量が周囲に響き渡る。
音に合わせて岩からたくさんの魚が飛び出してきた。岩のさまざまな場所から逃げ出していくので魚が散り散りになっていく。
ここでエラパパは猛スピードで魚のいるところまで泳いでいき、最初のエラの笛よりは小さい音で魚が逃げ出していく方向を調整し始めた。
これをエラも手伝う。するとバラバラだった魚もだんだんと一ヶ所に集まっていく。
その10分後、魚たちが何かおりの中に閉じ込められているんじゃないかというぐらい球体に固まって泳いでいた。
同じ魚の群れならわかるがサメやイワシが一緒くたになっているところを見るとなんとも奇妙だ。
「これを君たちやってもらうわけだが、どうだ?簡単だろう?」
エラパパがさも当然というようにこっちにも求めてきた。
「「「できるわけないじゃん!」」」
これが答えだ。難しすぎる。そもそも魚を上回るスピードで笛を吹いて動き回るという時点で俺たちには無理だ。
「うーん、そしたらこうしよか!6人にはこのできた魚の群れを移動させてもらいたいねん。この魚の群れはな、囲うようにして同じ強さの音でホーラ笛を吹けば維持できるんよ。それをそのまま境界まで持って行って!」
とエラが提案してきた。
というわけで俺たちは6人で同じ強さに吹く練習を始める。また話し合いでステラが様子を俯瞰的に見て指示を出す係になることが決まった。念話で伝えてもらえると早いからね。
それと吹き続けるのは辛いから4人で吹いて1人は休憩をすることにした。
「そしたらそろそろ交代するでー!1.2.3で変わるよ、はい1.2.3!」
エラパパが吹くのを止めると同時に、ステラと休憩のソフィアを除いた4人で一斉に吹き始めた。地上で吹くのに比べて吹くのにも力がいる。
球体だった形は4人で吹くと四面体の形に変化した。魚が逃げてはいないが形が少しずつ歪になってきたのが分かる。
(タクミ!少し強い!もうすこしおさえて!)
ステラの指示に合わせて調節すると形が綺麗になった。これなら維持できそうだ。
そして少しずつではあるが移動を始めて交代しながら、ついに境界線までたどり着いた。
ボーーーー!
最後はライアンが全力で吹いて外へと追い出した。
「ゼェ、ゼェ、、、疲れた、、、でもやったよ!」
ルーシーが息を切らしながらガッツポーズをする。
泳ぐスピードは速くないからいいけど息を吹き続けるのが思った以上に辛かった。
少し休憩した後スタート地点に戻ると、エラが笑顔で手を振ってきた。
「みんなー!また捕まえてきたでー!」
ちょっと待て、なんかさっきの倍以上の魚がいるんだけど!
【、、、頑張ってください】
アカリの言う通りこれはしんどい仕事になりそうだ。




