第27話 オセアンダイビング
ザバン!
俺たちは一斉に海に飛び込んだ。
アカリの魔法のお陰で服が濡れる感覚もないし、地上と同じ感覚で息をすることができる。
ブクブクブクブク(みんなちゃんと息できてる?)
どうやら海中で会話は成り立たないらしい。
ソフィアとルーシーは最初ばたついていたが、息ができることが分かると今は2人とも楽しそうに泳いでいる。
「え!みんな海中で息できるん?」
エラがかなり驚いた表情をしながらこっちにやって来た。先に行ったんじゃなかったのか?
「うちな、自分だけ海に潜って『俺ら息出来へんわ!』ってツッコミが来るのを待っとったんよ。それなのに本当に海に入って来たやん。あんたらすごいな!」
あくまでボケだったのか、、、。
「あ、今魔法で水中でも会話できるようにしたげる!声よ水を震わせろ!アクアボイス!」
エラが水中で文字を書くようにして魔法を唱えた。
「ありがとう。」
声が出るようになった。
「さて、呼吸魔法はかける必要がなさそうやからこのままうちの村まで行くで!みんなうちに掴まり!」
エラが手を差し出す。
エラの右手を俺が、俺の足をソフィアがというように左右で3人3人になるように繋がっていく。最終的にエラを起点としてVの字になった。
「それじゃ水中散歩に出発!ぶっ飛ばすよ!」
なんかすっごくやな予感がする。
エラが尾びれを動かし始めると6人を引っ張りながらもぐんぐん加速していく。
力を入れていないと振りほどかれそうだ。ちなみにアンコウは頑張って横を泳いでいる。
ただアカリと違い、俺たちのことを考えていてくれているようで、時々後ろを振り返り俺たちの様子を見ながらスピードは調節してくれた。
潜るにつれて日光がどんどん届かなくなり、青黒い深海の世界に入っていく、、、。
何も見えなくなってから5分、かなり怖い。エラの手を握る感覚とソフィアが足を掴んでいる以外の情報がないからだ。
また海水も冷たくなってきている上にエラの親父ギャグも寒いから体感温度はさらに低い。
人魚ってこんな所に住んでいるのか?
「みんな急に明るくなるから気をつけてな!」
エラが布団が吹っ飛んだレベルの絶対零度親父ギャグを放ったあとにそう言った。
そして次の瞬間目の前が急に明るくなり、水面と同じようにエメラルドグリーンの水で海底が一面に満たされる。上を見ると太陽の暖かい光まで差し込んでいるようだ。
「とってもきれいですわ!」
オリビアが歓声を上げる。
「せやろ?うちらの魔法で海底を明るくしとるんよ!」
エラが自慢げに話してくれた。
【さすがは人魚ですね。これだけの高い魔力量を必要とする魔法を常時発動させているわけですから】
アカリも感心しているようだ。これだけ広範囲の空間をいじっているわけだからそんな反応になるのも頷ける。
振り返ってみるとさっきまでの真っ黒な海水が壁になっている。ここを堺にして魔法が発動されているようだ。
「さあ、ここまで来たらうちの村まですぐやで!もう少し海底を楽しんどいてな!」
そこからさらに10分ほど進むと目の前に巨大な岩が見えてきた。海底から見上げて50メートル弱ある。よく見ると岩をくりぬくような形でいくつもの穴が開いていた。
「あそこがうちの村や!」
エラが指差す。
それから俺たちはエラの家にお邪魔させてもらうことになった。場所はなんと岩の一番上。丸い入り口とは違い、中は奥行きだけでなく、水平方向にも広々とした家だった。
部屋はいくつもあり、かなりの豪邸に見える。水中ということもあってか天井にもものが置いてあったりと地上とは少し違う内装だった。
「いらっしゃい!うちのエラが世話になってます!ほらあんたもしっかりあいさつしいや!」
「どうも。娘が迷惑をかけていると思うがこれからもよろしく頼む。私の名前はジャック。ここの村のリーダーをやっている」
家で出会ったエラの両親と挨拶をする。
「エラって村長の娘だったんだ!」
「あれ?言っとらんかったっけ?うちのオトンなこう見えてもめっちゃ強いんやで!だから村のリーダーなんや!」
エラも誇らしげに自慢する。
それから両親と談笑をしたあと、俺たちはエラに連れられて近所を散歩することにした。
アンコウのポポちゃんをケージ(もはや生け簀だな)に入れると早速出発する。
5人も泳ぎには慣れてきたみたいで俺たちはゆっくり泳ぎながら近くの海底を散策する。スキューバダイビングをしている気分だな。
俺はこの付近の魚の状況を調べたかったので、エラに頼んで別行動することにした。エラたちはサンゴ礁などを見て回るようだ。
ちなみにルーシーはこっちについてきた。おそらく勘が働いたんだろう。フフフ(笑)その感覚は間違っていないぞ。
ーーーーー
「うわー、めちゃくちゃ魚がいるね!」
ルーシーが口をあんぐりと開ける。
「ああ、そうだな」
少し泳いでいくと魚がかなりたくさん泳いでいた。それもマグロやサバ、キンメダイなど、水面近くにいる魚から深海魚までごちゃまぜだ。ということは水圧も魔法でいじられているようだ。
これでオセアンで魚が捕れなくなった原因が分かったぞ。
おそらく人魚が引っ越し、魔法で居心地の良い空間を作ったことでそれまで漁場にいた魚がここまで逃げてきたからだろう。ここなら人間が来ることもまずないからな。
エラは沢山魚を取ったからだと言っていたが150人ですべての魚を捕りつくせるわけがないからね。魚が移動していなくなったと考えるのが妥当だ。
「あ、見て!足が10本ある魚がいるよ!」
ルーシーが指差した先にあったのはイカだった。そういえば昨日の食べた料理にもイカは出てこなかったな。食べるか!
俺は水流魔法を使ってイカよりも速く泳ぐと両手でつかみ取った。
そしてその場で皮を剥いだりして下処理を済ませるとアカリに頼んで炎魔法を出してもらう。ちなみに炎は大きな気泡を作ってもらい、その中で使った。
簡単にイカをあぶってイカ焼きの完成だ!
「おいしい!歯ごたえも抜群だし、これはお酒に合いそうだね!」
ルーシーがガブリとイカに噛みつきつつグルメレポートをする。見た目は中学生でも発想がおっさんみたいだ。口には出さないけど。
「、、、今酒場でひたすら酒を飲んでいるおっさん冒険者みたいって思ったでしょ」
「美味い!あー祭りの屋台を思い出すなぁ」
「話をそらすな!そう思ったんでしょ?!」
「そこまで思ってねえよ」
「そこまでって少しは思ってるってことじゃん!」
「うるさい、大人しくイカ食べとけ」
こうして懐かしい味を堪能し、他にもあれこれ魚を食べたあと再びエラ班と合流した。
あ、もちろん真面目に調査はしたからね。




