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問13:着信拒否の思い出を具体的に述べよ。全蔵が誠心誠意一緒に悲しむものとする。

お待たせしました。環境が変わったりと、バタバタしており、中々更新ができなかったです。申し訳ない。

 ”白帝”という災害を振り返ろう。


 俺の世界で御伽噺(おとぎばなし)だった“竹取物語(たけとりものがたり)”に出て来る帝の成れの果て。

 もしかすると、竹取物語は、俺や全蔵のように世界を渡った人が残したのかもしれない。


 不死の薬が二つ。己と、(おきな)達から奪ったもの。その二つを取り込んだ“白帝”は三つ首の白き虎。過去に一度、“白帝”を日本の先鋭達が倒した事があった。文献によると高出力の火の魔法を使って焼き尽くしたそうだ。しかし、火が晴れると、“白帝”は首を一つ減らしただけで五体満足で生きていた。

 その後、部隊は壊滅。その時代に二度目の討伐は行われなかった。


 迦具夜(かぐや)に話を聞いた所、不死の薬は人が飲めば不死になる。しかし、人より上の存在が飲めば効果が弱まる。とのこと。

 つまり、過去の話と照らし合わせると、白帝は首の数だけ残基を持っている。マリオかよ。と言いたくなるが、ただでさえ、凶悪な力を持つ白帝を二度倒さなければ勝利は無い。


 加えて、白帝は迦具夜の指定した宝を取り込む事で力を増し、その宝に由来したと考えられる力を得ている。最新の“白帝”について書かれた著書にはこう書かれていた。


 一つ。五色の光を纏う時、魔を纏わない攻撃効かず。


 二つ。燕が舞う時、猛る虎の子現われし。


 三つ。灼熱の炎を纏う時、いかなる魔術も効かず。


 四つ。帝を護る石あり。それらは意思を持ち、宙を舞う。


 とのこと。厄介極まり無いのが良く分かる。この後控える決戦の日を逃せば、白帝は更なる力を手に入れ、迦具夜を殺す。


 とは言え・・・。


「小学生が考えたモンスターかよ」

「インフレ末期のMMOと同じレベルでござる」

「ワクワクするね」


 両の拳を胸の前でグッと握る佐久間さん。最近、佐久間さんが女の子にしか見えなくて困っています。最近は元の顔を思い浮かべても、顔が薄れてしまうほどに別人だ。距離感が近いんだよな。ドキドキしちゃう。


「乗り込むのはいつにするでござるか?」

「“白帝”の位置を考慮するなら、作戦決行は約五時間後だ」

「ふむ。では、レオ殿は事前の通り行動をお願いするでござる。拙者達は輸送車を奪って現地に向かうでござるよ」

「車の運転はどうするんだ?」

「ボクが出来るよ。帰宅部に所属していると、特例処置があって十六歳で免許取れるから」

「ではお任せしたでござる」


 帰宅部は凄いなぁ・・・。(諦め)


「オーキ殿はここで伽具夜殿と一緒に。拙者は必要な物を集めてくるでござる」

「長丁場になると思うからね。ボクも準備してくるよ」

「助かる」

「俺は外でエミリアさんを待つ。見張りを。と言われているからな」


 意図的に作られた二人きりの空間。


 伽具夜は物語の通り美しい。過去の時代の美醜(びしゅう)は現代の価値観と大きく違うと聞くが、伽具夜はどの時代でも美しいと言われていたのだろう。

 闇夜のような黒髪は(あで)やかで、怪しく輝く月光色の瞳は宝石を埋め込んだように綺麗で、吸い込まれそうな魅力がある。幼い風貌ながらに品があり、口数の少ない顔は人形のよう。ただ、物語では大人の姿になっていた伽具夜。もしかして白帝に見た目も縛られているのか・・・?だとすると、白帝は幼女趣味かもしれない。


 そんな彼女と二人きり。外見が幼いので辛うじて俺の心は平穏を保っているが、相手が同年代の女子ならドキドキしていたかもしれない。いや、三馬鹿はねぇわ。

 あれ、俺って三馬鹿を除いたら友人と呼べる異性がいない・・・?あ、佐久間さんいたわ。ふぅ、余計な心配して損したぜ。


「今更止めたりしない・・貴方に話をしても通じないから・・・」

「通じてる。通じていて、無視しているだけだ。安心してくれ」

「余計にタチが悪い・・・」


 それはそう。


「"白帝"は強い・・・。今まで誰も勝てなかった」

「俺は負けないよ」

「何故?」

「ワンピースをまだ全巻読んでいないから」

「・・・貴方は本当に意味が分からない」


 これまで涙無しには見られなかった。何回泣いたか分からない。これからもルフィ達の成長と物語の終わりを見守りたい。ワンピースが連載している今に生まれてきたことに感謝しかない。


「今どこまで読んだの」

「新世界に入るとこ」

「その後、主人公死ぬ・・・」

「え、なんで!?」

「嘘・・・読んだことない・・・」


 なんてことしやがる・・・!!冗談なんてレベルじゃねぇぞ!!

 今すぐ彼女を裁判に掛けても怒られない。世の中のオタクが彼女をきっと制裁してくれるだろう。


「・・・。ねえ」

「なんだ?」

「諦めなくてもいいのかな・・・?わ、私は、もう一度だけ期待しても、いいの・・・?」


 不安そうに俺をじっと見つめる伽具夜。その瞳は先程と違い、感情が揺れ動いているのが見て取れた。俺は何も言わずに次の言葉を待つ。


「疲れたよ。凄く疲れた。ここまで来るのに長かった・・・。とても、長かった。ようやく楽になれると諦めた。貴方が、変なことを言うから・・・頭の可笑しいことを言うから・・・私は、また、考えている。何にも縛られてない自分を、夢見ている・・・。悠久の時に想像もしなかった、出会った事の無い貴方に、私は、心を動かされている・・・胸がざわざわして落ち着かない。無性に貴方に触れたくなる・・・。人肌が恋しい・・・。おかしいの。私は・・・!!もっと、生きたい・・・!!」


 今まで溜め込んでいたものを、一人で抱え込んでいたものを、全てを伽具夜は吐き出した。瞳に涙を抱え、俺の胸に額を擦る。酷く震えた体と声。押さえ込んだ感情が押し出される。


 ふぇぇ・・・桜華、助けて。お兄ちゃん、女の人が泣いている時の対処法をまだ習っていません。頭の中がパニックです。

 こ、こういう時は落ち着いて抱きしめるのが正解か?いや、ハラスメントに厳しい時代だ。指一本、目線を一つ合わせようなら訴えられ可能性がある。女性の涙に漬け込んだなんて言われたら敗訴確定だ。伽具夜のこれからどころか、俺のこれからが危ぶまれる。


「じ、示談でお願いします」

「私は、貴方が嫌い」


 俺の言葉を聞いて伽具夜の体の震えは止まった。すん。っと出会った当初からの感情が隠れた無表情に戻って俺を睨みつける。目元は赤く、腫れていたが涙はすっかり引っ込んでいた。


「漫画・・・?あれ、読みたい」

「あ、ああ。用意しよう」


 桜華がな!


「カブトムシは、よく分からない。忍者も意味が分からない。けど、色々したい・・・。今までの全てを忘れるような、楽しいことを・・・」

「分かった」

「それと、帰る場所が無い、から・・・」

「任せろ。偽造が得意な親友がいる」


 口にして思った。その親友、本当に大丈夫だろうか。一度、付き合いを改めた方がいいかもしれない。


「伽具夜は、年齢的に・・・」

「妹」

「いや、でも」

「妹」

「ほら、あれだろ?」

「妹」

「うっす」


 譲れない何かを感じた。女性に年齢のあれこれは、時代がどれだけ移り変わっても不変らしい。

 桜華なら歓迎してくれるだろう。母さんは細かい事は気にしない。父さんは・・・。まあ。最悪度数の高い酒をしこたま飲ませれば、記憶障害で受け入れてくれることだろう。


「ここで、待ってる。だから、助けて」

「任せろ」


 己の腕に浮かび上がった鎖を強く右手で握りしめ、強く言葉を紡ぐ。俺はその言葉に、期待と、大きな不安を感じた。心中なんてさせない。

 俺は、伽具夜の握りこんだ手を掴み、彼女より強く言葉を返した。



 エミリアさんが帰って来た後、全蔵と佐久間さんは中型の護送車に乗せられた。別車で、レオとエミリアさんも現地へ向かう。

 途中で護送車を奪った佐久間さん達がエウレカに一時帰還。俺を乗せて再び現地に向かう。


「もしもし桜華?ごめん、寝てたか?・・・うん。ちょっと今日帰れそうにない。・・・うん。別にやましいことなんてないよ。女の子を拾ったから、今から白帝に喧嘩売りにいくだけだよ・・・うん。嘘じゃなくて。・・・・・・リアリー。リアリー。・・・いや、それはちょっと・・・はい。すみません・・・いや、黙ってた訳じゃなくて・・・」


 深夜どころか既に朝方。LINEを覗くと桜華から鬼のように通知が届いていた。999+って初めて見たぞ。取り敢えず電話をして事情を説明する。


「ふう・・・」

「大変でござるな」

「逆に良くこの説明で納得してくれたと思うよ」

「やりかねないと思われているのでござるよ」


 それはそれで嫌だな・・・。以前の二三桜樹ならまだしも、今の俺は凄くまともで誠実なのだから。

 ”拙者も電話を・・・”とママちゃんに連絡を入れる全蔵。


『おかけになった電話番号への通話は、お客様のご希望によりお繋ぎできません』


 俺と全蔵だけだが、車内になんとも言えない空気が流れる。着拒されてる・・・。


「”白帝”がなんぼのもんじゃい!!ギッタンギッタンにしてやるでござる!!」


 全蔵の悲しい声が、車内に響き渡った。

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