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問9:佐久間(姉)の名前は未定。いい名前を考えてあげて欲しい。

 定期考査が終わった九月末。クラスの話題は来月の大魔祭(たいまさい)一色だ。名前大丈夫?と考えてしまうネーミングだが、前の世界で言う体育祭に近い。

 違う点は全員参加では無い事。参加は、選ばれた代表生徒のみ。そして相手は東条院(とうじょういん)中の生徒だ。

 つまり、西日本で魔術に優れた高校を決める年に一度のお祭りだ。


 華族のみが通う高校や、魔術専攻科がある高校が飛び抜けて強く、俺達のような普通以外に芸能科があるので顔面偏差値が多少高めなだけの高校は思い出作りのお祭りらしい。

 しかし、去年は魔力馬鹿()身体能力馬鹿(全蔵)が進級を脅しに参加したので、割と上位を獲得したそうだ。


 大魔祭の期間は一週間。今年は那古屋(なごや)での開催。その事もあり、話題が尽きない。代表生徒以外も応援や、祭り期間中はあちらこちらで屋台やセールをするので暇することも無いようだ。


 今年も参加させられるのだろうか。参加させられるだろうなぁ。


 始業の鐘が鳴る。少し遅れて教室に入って来たミッキー先生はハイテンションだ。


「今日は転校生を紹介します!!やったね!!拍手―――!!!」


 ミッキー先生の一言でクラスは大盛り上がり。このクラスの騒ぐ時の一体感は凄まじい。


「オーキ殿!!女の子かな!?女の子なのかな!?」

「テンション上がりすぎだろ」


 ござる(アイデンティティ)を忘れて騒ぐ全蔵。転校生コールに、騒ぎすぎて過呼吸を起こした三馬鹿。転校生へのハードルがどんどん上がっていく。


Leo(レオ)=E=遠山」


 わお。一瞬でクラスが静まり返った。


 紫がかった白髪に切れ長の瞳。腕には蛇の鱗の刺青。両手を黒手袋で覆い、制服の胸ポケットからは煙草の箱が見えている。

 腰に据えられたのは長剣。名前のEは“七災”の聖器シリーズに選ばれた聖騎士の証。腰の長剣は聖剣。つまり彼は世界的に身分を証明された華族(貴族)。何やら訳ありのような感じだ。


「はい!俺、桜大門!!」

「拙者全蔵!!天才忍者の服部全蔵!!!」

「佐久間だよ!先月まで男だった!!」

「苺!!!苺―――!!!ごほっ、ごほっ」


 我がクラスには、彼の尖った雰囲気はあまり関係なかったようだ。転校生も驚いた様子だが、口元には小さく笑みが浮かんでいた。悪い人では無さそうだ。

 お約束とばかりに隣のクラスの先生が怒鳴り込むまで騒ぎは続いた。


「幹先生。確かに学友と騒ぎ、楽しむ事は彼らに取って思い出に残る大切な事です。ただし、節度はもっと大切です。生徒を見張る立場にある貴方が、生徒と一緒に騒ぎ、歯止めを効かせられないなんて言語道断です。今後はもっと自覚ある行動をお願いします」

「はい、すみません」


 ガチ説教である。


「以後このような事が無いように気を付けてください。分かりましたね?」

「はい!!気を付けます!!!」


 ミッキー先生の元気な返事と共に教室を後にする隣のクラスの先生。お疲れ様です。

 隣のクラスの先生が見えなくなると、頭を下げ続けていたミッキー先生が、


「よし!!授業なんてやってられねぇよ!!!かくれんぼしようぜ!!!」


 本当にこの人は・・・。反抗期の小学生みたいだ。


「転校生歓迎会を兼ねた学校かくれんぼだ。盛大にやろう!!放送部、橋本!!!」

「放送部に連絡済み・・・放送室のジャック完了。マスターキーは破壊しておきました」

「応援部!!桜大門!!!」

「押忍っ!!!窓開けますっ!!!叫びますっ!!!かくれんぼするひとぉぉぉぉおおお!!!!」

「広報部、赤松!!」

「既にルールを作成し、纏めてあります。緊急連絡網を使用して生徒全体に連絡しますか?」

「いけっ!私が許可する!!!」


 とんでも無いことになった。


「お前ら!!かくれんぼしたいかーーー!?」

「「「おおおおおおーーー!!!」」」

「誰にも見つかりたくないかーーー!?」

「「「おおおおおおーーー!!!」」」

「ミッキー先生はーーー!?」

「「「世界一可愛いよぉぉぉぉぉおおお!!!」」」



 なんだこれ。



「遂に始まったでござるな。学校かくれんぼ」

「いや、楽しそうだけど、今、授業中・・・」

「ふっ・・・オーキ殿。これは()らなきゃ()られる戦い。逃げ出す訳にはいかないでござるよ?」

「勝手に殺し合ってろよ。転校生、困惑で置いてきぼりだぞ」


 ピンポンパンポーン


 『放送部です。ただいまより、学校全体を使用したかくれんぼを開始します。活躍した人にはミッキー先生より、食券が配られます。独身公務員の財力を舐めるな。とのことです』


「ふっ・・・全蔵。これは()らなきゃ()られる戦い。逃げ出す訳にはいかないぜ?」

「食券に釣られたね」

「食いしん坊でござる」


 うるさい。こちとら財布はいつも素寒貧。少しでも美味しいもの食べたいんだ。


「だけど、このかくれんぼ。そう甘くないよ。毎回唐突に開催される学園規模の遊び。上位勢は帰宅部のボクでも苦戦する奴らばかりだ」

「「「「「「「学園大会四天王をお呼びかな?」」」」」」」

「俺の一声で全てを動かす、放送部───橋本!!」

「近付いた奴は拳で黙らせます。応援部──桜大門!!」

「僕の辞書に不可能の文字は・・・・・・・78件ヒットしました!広報部──赤松!!」

「クレーンゲームは苦手です。ギャルゲなら簡単に落とせるのに・・・ゲーセン同好会───高梨!!!」

「私に触れた者はホモへと誘われる・・・BL愛好会──浜崎!」

「敵も味方も審判さえも金で解決します。金持ち──金成!!」

「え、えーっと、風紀委員長──早乙女!!」


 学園四天王が七人居ることに突っ込めばいいのか、大半がクラスメイトな事を突っ込めばいいのか、ボケが飽和し過ぎてよく分からないので俺は無視する方向でいきます。こういう相手は構うと懐かれて家まで着いてくるから良くない。


「王者の私をお忘れじゃないかしら?」


 なんか増えた。


「私は前回の学校ケイドロ十八代目チャンピオン。佐久間。次回登場予定の無い悲しい女よ」

「佐久間って・・・」

「ボクの双子のお姉ちゃん」

「次回登場予定が無いとは?」

「私は少しでも爪痕を残したい。多くの読者にインパクトを植え付けたい」

「そんなひな壇芸人みたいな」

「あわよくば読者人気キャラクター投票で『登場回数少ないのに異様に人気が高いキャラ』に私はなりたいッ!!」

「桜樹殿、メインキャラクターの拙者達からあの御仁にかける言葉はござらん」

「ごめん、本当に意味がわからない」


『かくれんぼの鬼は2年B組より。二三桜樹とLeo=E=遠山です。それでは皆隠れてー!!』


 まさかの転校生と俺が鬼か。全員が散り散りになる中、教室に取り残される。


「二三桜樹です」

「敬語はいらない。俺もいきなり貴族とか言われて困っている」

「了解。桜樹って呼んでくれ」

「俺もレオでいい」


 話し方は凄くサバサバしているが、とても話し易い。紅香さんと同じく感情が表に出にくいタイプなのかもしれない。


「悪いな。うちのクラス騒がしくて」

「いや、新鮮だ。悪くない」

「なら良かった」

「こういうのとは縁遠かった。世間知らずな部分があるとは思うが、あんまり気にしないでくれ」

「大丈夫。俺も自分が住んでるところの名前知らなかったし」

「それはどうなんだ?」


 軽く挨拶を済ませた俺とレオは、授業中にも関わらずかくれ始めた馬鹿共を探し始める。


『おい、押すなよ。狭いだろ』

『し、仕方ないだろ!おい、どこ触ってんだよ!』

『隣から感じるホモォの波動を感じる』


 個人ロッカーに隠れているな。四天王(七人)の一人もいる。


 面倒くさそうなのは全蔵とチャンピオンと呼ばれていた佐久間さんのお姉さんだろうか。

 まあ、全蔵は今日、朝飯を俺の家で食っているので匂いを辿ればすぐだろう。食いしん坊万歳。


「四天王が敗れたようだが、まだこの学園には裏四天王である俺がいる!!園芸部部長ッ!!轟だぁ!!いざ尋常に勝負しろッ!!」

「みつけた」


 レオと一緒に廊下を歩けば裏四天王だの、十英傑だの、十二神将だのよく分からない奴らが次々と姿を見せてくれる。この人たち、かくれんぼを知らないのだろうか。

 ついでに壁に擬態していた全蔵を確保。天井に腕力で貼り付いていた佐久間さんや、跳び箱の中に隠れていた佐久間さんのお姉さんを確保。順調に参加者を見つけていた。


「ちっ、見つかったか…」

「だが、こちらには全国模試三位の永山がいるッ!侮るなよ後輩!」

「ふっ、この永山に掛かればかくれんぼなど……かくれんぼの公式をまだ授業で習っていません…」

「予習しとけよ永山ァ!」


 教科書のどこを探してもそんなトチ狂った公式載ってないと思う。


 この学校で頭がおかしいのはうちのクラスだけだと思っていたが、どうやら学校全体がイカレていたようだ。俺が見ていたのはこの学校に残った良心だったのか・・・。隣のクラスの先生に恋しそう。


「オーキ、あと何人だ?」

「結構見つけたと思うんだが・・・」


 そう言えば、緊急連絡網でメール配布をしていたとか。

 メールを確認すると参加者リストが載っていた。出て来る人のほとんどが何も聞いていないのに名乗ってくれるので、上から順番に候補を消していく。


「あと1人だな」

隣のクラスの(皆本)先生・・・参加していたのか」

「どうする?」

「学校内は粗方探した。これで見つかっていないのなら直接交渉しよう」


 全蔵にメッセージを送り、皆本先生の連絡先を聞き出す。六さんの存在は凄いな。マスターキーだ。


『私です』

「皆本先生。交渉をしましょう。今からミッキー先生を生徒指導室に誘導するので見つかってください」

『私からも食券を出そう』

「ありがとうございます。それで先生はどちらに?」

『窓から上を見たまえ』


 皆本先生の言う通り、レオと窓から上を見ると巨大凧に貼り付き、空を浮遊する皆本先生の姿が。あの人、良心の皮を被った化物だった。


「オーキ、あれが普通なのか」

「俺も最近、普通が分からなくなってきた」


 それより、ミッキー先生に電話しないとな。


『もしもし、世界一可愛いミッキーだよー』

「あ、二三です。ミッキー先生、お願いがありまして」

『なんでも言ってくれ!火の中でも、グリードアイランドでも、暗黒大陸でも私は喜んで行くぞ!』

「生徒指導室まで来てください」

『分かった!!!!私が直々に危ない生徒指導をしてやるから待ってろ!!!!』


 流石面食い。欲望に素直だ。

 生徒指導室から断末魔が聞こえたが気のせいだろう。今日のお昼は沢山食べられそうだ。

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