052 笛吹き男のステ確認
「涼、いまさらだけど、箸をちゃんと持ちなさい。エルちゃんを見習って」
「うっ」
祖母があきれた顔で俺を注意する。
俺はクロスさせて持っていた箸を握り直して、ぎごちなく食事を続けた。た、食べづらい。
木野の教育の賜物か、エルの箸使いは完璧だ。木野め、余計なことを。
エルの食事風景は面白い。
「たくさん食べてくれるから嬉しいわ。うふふ。美味しい? 次は、これね。トンカツって言うのよ」
頰をハムスターのように膨らませたエルは無言で何度もうなづいている。
それから、トンカツの乗った皿を、大きく見開いた目で追っていた。
口内いっぱいの肉ジャガを飲み込んでから、ふにゃっと柔らかく目を細める。
アサリの味噌汁を一口飲んでから、トンカツを口内に放りこんだ。
電撃に襲われたようにビクンと全身を震わせ、再び見開いた目で祖母を凝視する。
「美味しい?」
エルは何度も大きくうなづいていた。餌付けは成功しているようである。
「涼は早く食べなさい」
「いやいや、朝から隣でさ、こんな大食いされたら見てるだけで腹いっぱいだって」
「あんた、魚食べるの下手よねぇ。エルちゃんなんか、あっと言う間に平らげたのに」
「頭から丸のみしただけじゃん。俺にもアレ真似しろって言うの?」
エルの足下には、食べカスがこぼれ落ちるのを待つケルが待機していた。
「いってらっしゃい」
「なんか、あったら電話しろよ」
俺の言葉に、少しだけ目を細め不満を顔に出すエル。
エルには、型落ちのスマホを契約して渡してあった。
「分かった」
エルとケルが散歩に出ていった。
エルは、俺の新品のジャージを着ている。メイド服でご近所を徘徊されるわけにはいかないのである。
ジャージはブカブカだが、脚の丈が足りていない。脚長すぎだろ。
エルは俺より10cmほど身長が低いと思う。彼女の姿勢が良いので見た目の身長差は、それより少ない。
「子供扱いするなって、目が言ってたわよ」
「微妙に表情が分かるようになってきたよね」
「あんたのお下がりとか、澄ちゃんのお古ばっかりじゃ可哀想よ。服くらい買ってあげなさい」
「ばあちゃんの病院が終わったら行ってくるよ」
「お金あるの?」
「あるある」
「どこで手に入れてんだか」
祖母はそれだけ言ってリビングへと消えた。
俺はマルファスを召喚して、玄関から外へと飛ばした。念のためにエルの尾行である。
エルが我家に来て6日。昨日までは俺の散歩に付き合わせる形だった。その際、何度かアレをやらかしてるのだ。
「私はリョウの奴隷」という自己紹介を。
メイド服を着た白人美少女が、そんなことを言い出したら、ご近所が大騒ぎするに決まっている。「この女の子は海外に住む遠い親戚の娘」と言い逃れして退散するしかできなかった。
ばあちゃんに報告すると、「この辺りの人は、澄ちゃんで慣れてるから気にしないでいい」と言う。
母さん、あんた何やらかしたんだよ?
ということで、俺は後をマルファスに任せて自室に戻る。エルケルマルの大冒険である。
ようやく落ち着いたので、いつもの確認作業をしようと思うのだった。
ベッドに寝転んでスマホの画面を開く。
「おおっ!!」
そこには、手ブラで胸を隠す魔法少女カオルが表示されていた。
身につけているのはパンツ一枚のみである。
「ほほう」
『ほほう、じゃねーよ。急に操作しないでくれる!』
「なにやってたんだよ、お前は?」
『え? ちょっとチャットが盛り上がってて、そのぉ』
「で、言葉巧みにカオルを誘導して、エロい写メを送らせてたのか?」
『そ、そんな、頭の悪い女子中学生を騙す変態親父みたいに言わないでくれる!』
「自覚あるんじゃねーか!」
まったく。これだから生涼は。
『おいこら。勝手にカオルの画像を保存するんじゃねーよ!』
いいなぁ、お前が羨ましいぜ。
『お前だって、愛梨にケルの写真送って喜ばれてたじゃん。犬画像で釣りやがって』
うん。「涼くんだけの写真も欲しいな」だって。くふふ。
『何枚も写メ撮り直しやがって、どれも変わらんちゅーの。で、返信に要求した愛梨の写メは来たのか?』
。。。
『また、既読スルーか』
「いいんだよ。愛梨の姿は、俺の脳裏に超立体画像になって刻まれている!」
愛梨の淋しそうな笑顔。大粒の涙。細い肩。震える唇。切ない声。
『いい年して、愛梨の妄想だけでヌケるくらいだからな』
そういう言い方は止めてくれない? お願いだから。
『俺は、カオルとのチャットに戻るから、なんかあったら呼んでね。じゃ!』
やれやれ。
名前 津神 凉
年齢 24
ギルドランク D
状態 気疲れ中 マルファス召喚中
パーティー 未所属
所持ゴールド 863,256
所持ポイント 900
武器
腕/トンファー×2(非装備)攻打60:耐斬突打100
腕/ククリナイフ(非装備)攻斬100:耐斬70
腕/ひつじさんハンマー(非装備)攻打1
腕/グロック20(非装備)攻突250
防具
上半身/ライダーズジャケット(非装備)耐圧耐打40:耐電耐熱25:耐斬耐突15
胴体部/軍用プレートキャリア(非装備)耐突耐打耐圧耐斬400
HP 200/200(+40)
MP 70/85(+15)
物理攻撃力 110(+20)
魔法効果 50(+15)
物理耐久力 135/135(+20)
魔法耐久力 35(+10)
状態異常耐久力 90/90(+10)
精神耐久力 50/50(+10)
即応能力 110(+20)
移動力 110(+15)
運 20(+5)
スキル
生霊召喚Lv.8(+4UP)
一般スキルはDランクより取得可能となります。
魔法
低級回復魔法Lv.6(+5UP)
低級召喚魔法Lv.4(+3UP)
アイテム
ホーンラビット魔石×1(召喚時必要MP5)
電気スライム魔石×2(召喚時必要MP40)
マルファス魔石×1(召喚時必要MP15)
ヌタウナギ魔石×1(召喚時必要MP150)
召喚魔物用魔力袋×4(MP60充填済み)
FMJ10mmAUTO弾×300
グロック20マガジン×3
グロック用ヒップホルスター
グロック用レッグホルスター
トンファー用ベルト
ククリナイフ用ウエストホルスター
さて、成長したステータスの解説を簡単にしよう。
まずは、身体スペックだ。
HP、攻撃、物理防御などのスペックは、すでに一流格闘家の平均を軽く超えている。
冒険者で言えば、Bクラス下位レベルでもギリギリ通用すると思う。
即応や移動については、国際的アスリートを大きく超えて、Bクラスで十分通用するようだ。
アンヌの尻を見過ぎな美杉に、比較用のステータス表をもらったので、それで使った自己評価である。
美杉には、秋に駒沢陸上競技場で予定されている冒険者の体力測定に出るよう勧められていた。
JKZも出るらしいので、これで彼女らに俺の実力を見直させることもできるだろう。楽しみである。
「冒険者が陸上競技に出れば、金メダルも余裕ではないか?」と美杉に聞いたことがある。
だが、そんな美味い話はなく、冒険者が一般人と同じスポーツ競技に出場することは厳しく禁止されているという。
「昔、ベ○○ョン○ンという競技者が新記録を出して世界を騒がせたんだ。でも、冒険者なのがバレてな。ドーピング疑惑をかけられて、社会から抹殺されたよ」
とは、美杉の弁である。俺と同じことを考える奴は昔からいたようだ。
続いて魔法関連。
魔素吸収前の短い時間に使用していた魔法はレベルが上がりやすい。
魔法効果や魔法耐久力も上がりやすくなるが才能の影響が強いので、魔法のレベルほどには大きい変化はない。
今回確認したところ、召喚魔法も回復魔法もレベルが上がっていた。
ダンジョンで吸収した大蜘蛛、オーガ、ヌタウナギの魔素の影響だろう。
魔素関係なく、魔法のレベルは使用すれば自然に上がっていく。
レベルが10になれば、中級魔法の取得が可能になるが、その際にもコストが発生する。
中級になれば、単純な回復魔法は必要MPも下がり、より効果の高い回復も使えるようになるとのことだ。
現状の低級魔法のままでも、MPと魔法効果が増えているので、効果が少し上がり、使用回数も増えている。
中級魔法を取得するかどうかは、その時にもう一度考えることになるだろう。
他に取りたいスキルや魔法もあるからね。
さらにスキル。
固有スキルである「生霊召喚」もレベルは上がっているが、さらに上位があるのかは不明だ。
前例のない超レアスキルだから、情報が何もない。
スキルの場合、そのままレベルの数字が上がり続けて10を超えることも少なくないらしい。
上位スキルの取得条件がレベル20や30、さらに50を超えることもあるのだと言う。
御室の使う「知覚強化」は(小)の上限は15で、(中)の上限は30だとのこと。
ちなみに御室は(中)の30である。日常的に使っているからな、あいつ。
(大)にするには、2500ポイントが必要になるらしい。大変だね。
御室は近いうちにCランクに上がるだろうが、Cのクエストは難易度が高い。
クエストに合わせて、装備や魔法を新たに取得すると(大)の取得は難しいかもね。
その他のステータス。
状態異常耐久力は、比較的に高めである。
おそらく、ひつじさんハンマーを食らっても亜美と同じくらいは耐えられるだろう。
精神耐久は、ようやく一般人より、少し上になった程度。
運は、まだまだ低い。余計なことに巻き込まれるのは当分続きそうである。
次はアイテム。
ホーンラビット魔石は、生涼が懐いて可愛いというので、一個だけ貰ってきた。
だが、さすがに我が家で飼うのはどうかと思う。ケルとの相性もあるしね。
電気スライム魔石は、使い道がありそうなので2個もらってある。
ダンジョンでは数十の電気スライム魔石が回収されていた。
合体魔法で作られた魔物を自衛隊で研究するらしい。
ヌタウナギの魔石は、自衛隊員からリオへの貢物として献上されていた。
倒したのもリオなんだから、貢物としてはどうかと思っている。
召喚に必要なMPも高く、低級召喚では扱えない魔物だった。
交換できるアイテムは「超高級ローション1年分」である。いらねーな。
即応と移動のステータスUPに使えば、どちらかを20ほど上げることができる。
これは、なかなかの効果である。
換金や交換できるポイントも低いので、ステUPに使うことになるだろう。
他に持っているのは、武器を身につけるための装備品である。
武器の召喚にはタイムラグがあるので、必要な時はあらかじめ取り出しておかなくてはならない。
その際に必要な物となる。
続いて、武器などの装備品。
グロック20は、250の突攻撃力を持っている。
銃の場合、剣などの武器と違って、俺自身の攻撃力は上乗せできない。
ククリナイフなら俺の攻撃力と合わせて、最大210の斬攻撃力が出せる。
だが、現在の俺の技量では、そこまでの威力を出すことは難しい。頑張っても180くらいだろう。
グロック20の場合、誰でも当たりさえすれば250の攻撃力を持つ。
銃が規制されるのも当然である。
ちなみに御室の持つニューナンブは攻突90ほどである。
通常の5.56mm弾のM4カービンは300程度らしい。特戦群の458.socomの高速弾なら500だ。
軍用プレートキャリアは、いつまで経っても返せと言ってこない。
特戦群は、通常の自衛隊と違って、備品の管理にうるさくないのかもね。
と、だいたいこんな感じである。
『冒険者ギルドの分は終わった? じゃあ、次は木野からもらった分の確認だな』
まあね。そっちは気になるんだな。やっぱり。
『そりゃ、当然でしょ。カオルが俺のために用意した物を、あいつ教えてくれないんだよ。見てのお楽しみなんだと。他にもイロイロあるらしいぜ』
へぇ。そりゃあ、楽しみだ。




