026 HEROS
各所に無線で報告を済ませた御室が、俺の側に駆け寄ってくる。
俺は、魔物の気配が消えたことを念入りに確認する天空耳に声をかける。
「天空耳さんもこっちへ」
亜空間の中で息絶えたオーガの魔素が、不思議なことに俺たちの身体に吸収されていった。
オーガの巨体は、大型犬程度まで小さくしぼんでミイラ化した。
『やっぱりな。ゴブリンの時に俺にも魔素が流れ込んだから、反対に亜空間からでもできると思ったんだ』
「そんなことがあったのか」
『あの魔素で起こったスキル化のおかげで、俺は自我をはっきりと取り戻せたんだよ』
生霊は素手でオーガミイラの解体を始めた。指で掴んでちぎられる乾いた肉。ウヘェ。
どこからか取り出した魔石を見せてくる。
『魔石の取得もできるんじゃないか?』
俺は、スマホの画面を上に向けて持つと、亜空間にいる生霊がその上に魔石をかざす。
魔石は、スマホの画面に沈むように消えた。
しばらくすると、ギルドアプリの通知が入り、俺たちはステータスの変化があったことを知った。
名前 津神 凉
年齢 24
ギルドランク E
状態 生霊召喚中
パーティー 未所属
所持ゴールド 17,300
所持ポイント 420
武器
腕/トンファー(非装備)攻打60:耐斬突打100
防具
上半身/ライダーズジャケット(非装備)耐圧耐打40:耐電耐熱25:耐斬耐突15
HP 150/150(+15)
MP 60/60(+10)
物理攻撃力 80(+15)
魔法効果 25(+10)
物理耐久力 105/105(+15)
魔法耐久力 20(+10)
状態異常耐久力 75/75(+25)
精神耐久力 40/40(+10)
即応能力 80(+20)
移動力 90(+10)
運 15(+5)
スキル
生霊召喚Lv.3(+2UP)
一般スキルはDランクより取得可能となります。
魔法
低レベルのみ取得可能
アイテム
オーガの魔石×1
隣で、俺と同じようにステータスを確認していた御室に声をかける。
「ゴブリンの時の方が数値の伸びが良い気がするんだけど、なんで?」
「一番最初の魔素吸収は効果が出やすいんだよ」
「お前のは?」
「やめろよ。セクハラかよ」
「。。。」
「俺は初めての上位魔物の魔素だからな。結構な変化があったよ。お前はもうゴブリンくらいじゃ、差は出にくいかもな」
「僕も、最近の中では最も良い伸びです。何もしてないのに、ありがたい」
「お前には、ステータスはないのか?」
『ない。もしかしたら、あるのかもしれん。あっちの世界じゃ、そんな風に確認する方法もなかったんだ。ステータスウィンドウが目の前に開くこともなかった』
「ふーん。こっちの方がゲーム的な部分もあるんだな」
『スマホっていいよね。俺も欲しいぜ』
「俺のを勝手に好きなように弄ってるじゃん、いつもさ」
生霊を見ると、オーガミイラの脚をくわえてしゃぶっていた。
「そ、それ美味しいの?」
『うーん。味がしない。亜空間の身体は食ったり飲んだりする必要はないけど、つまらんね』
「へぇ」
『ほんとはスルメみたいで乙な味なんだぜ。あっちで醤油がどれほど欲しかったことか』
生霊は、味がしない肉に飽きたのか、オーガの脚を骨ごとねじり折って、ポイ捨てした。
ピッ!
「ん?なんか音しなかった?」
警告音とも、操作音とも取れる音がしたよな。嫌な予感が。。。
「おい、あれって!」
御室が指す方向を見ると、滑走路のすぐ外の海面に、十数個の半球状の光が発していた。
すぐに光が収まった。なんだよ、びっくりさせんなよ。
「あ、なんか、海から滑走路に這い上がってきてるんだけど」
「またまたぁ。御室さんお疲れなんじゃないですか?」
「いいえ、僕には暗く遠くて見えませんが、気配はします。しかも複数!」
御室は突然、無線機に向かって叫び出した。
「海面から、ゴブリン多数発生! 数は20! 滑走路を走って向かってきます!数分以内に接敵します!すぐに応援を!!」
「オーガの脚になんか仕掛けてあったんじゃねーの?」
『ふふふ。俺は知らん!知らんぞ!』
「はぁ。。。」
『次は、お前の番だぜ。ちょうどいいじゃん。復習の時間だ!』
俺たちは、滑走路の上を乗客のいる建物から離れる方向に向かって走り出した。
考えた通りに、ゴブリン達は俺たちを追って向きを変えて走ってくる。
俺はライダーズジャケットと二本のトンファーを装備、天空耳は日本刀を二本と黒いパーカーを装着しフードを被っている。
御室は、銃剣を付けたモスバーグ500ショットガンをゴブリンに向けて走っていた。
「ナニそれ、かっこよくね。ずるいぞ、御室のくせに!」
「北条警視から借りてきた。こんなの俺の持ってるゴールドやポイントで買えるわけないじゃん」
「じゃあ、援護よろしくな!」
「了解!」
御室は片膝をついて立ち止まり、ストックを頰づけして銃を構える。
俺と天空耳は、御室から両翼を前に伸ばすように広がり前に進む。
30mほど進んで俺はゴブリンの一体と接敵した。
無手のゴブリンが両手の爪を構えて、大きく飛びかかってくる。
重心の前後の動きから察していた俺は、姿勢を低くして斜め前方上空へと裏拳のようにトンファーを繰り出した。
ガツッ
対空攻撃を受けたゴブリンは体制を崩すが、勢いを残して前方に転がり落ちる。
俺は落ちてくるゴブリンを斜め前方に前転してかわす。
起き上がる寸前に、別のゴブリンが迫ってくる。
パン
御室の銃撃を受けてつんのめるように手をつく二体目のゴブリン。
御室がボタン操作を、俺たちに聞こえるように声を出して叫ぶ。
「ポチっとな!」
ゴブリンに撃ち込まれたダブルオーバックの散弾数発が、炎を噴出して爆発した。
頭部を無くし、全身に大きな穴を開けたゴブリンが倒れる。
そのゴブリンが倒れる前に、移動した俺は対空攻撃で撃ち落としたゴブリンの角を後ろから左手で掴み、石割の要領で後頭部にトンファーを打ち込んでトドメを刺した。
天空耳は同時に二体を相手していたが、片方を御室が先ほどと同じカタチで撃ち殺すと、残ったゴブリンの首を斬り飛ばした。
「俺、めっちゃ調子いいぜ!」
そういうこと言ってると死んじゃうよ、御室さん。
また、一体のゴブリンが迫る。俺は振りかぶったゴブリンの腕を中段で受けるが、足さばきが追いつかない。
生霊は膝を狙ってたな。俺は右手のトンファーを回転させてゴブリンの膝横を打ち付けた。
膝が砕ける感触の後、崩れるように横に倒れようとするゴブリンを左手のトンファーで引っ掛けて近寄せ、右を顔面に武器ごとカウンター気味に叩き込んだ。
なんとかなりそうだ。たぶん。
『そうだな。お前もうまくやってるが、御室が連携をうまく取ってる。かなり訓練はしてるんだな。うまく前衛の動きを読んで、フレンドリーファイアも避けてるぜ。アホのくせに上等だ。弾切れには注意してやれ』
それな。
「げ、排莢ミスった!」
「ちっ!」
新たに1体を斬り倒した天空耳の背に爪を深く立てたゴブリンがそのまま摑みかかろうとする。
俺は自分の即応と移動の値を信じて天空耳の元に駆けつける。
「たっくん! ゴブリンが!!」
一陣の風が舞うと、天空耳の背にいたゴブリンが蹴り飛ばされ他の個体に激突する。速い!!
「知ってるか? 夢は呪いと同じなんだってさ。お前の呪い、俺が相乗りしてやるぜ、未来の勇者さんよ」
「えと、なんで俺の勇者の話を?」
ニヤッと笑い、男は手首をスナップして音を鳴らし、ゴブリン達の方に駆けて言った。
ふと、側を見ると、網タイツ忍者が頰を抑え、潤んだ瞳で男を見ている。俺に気づくと、シュタッ!と良い音をさせて消えていった。
忍者さん、ずっと見てたのね。
「俺のことを好きにならないやつは嫌いなんだよぉ!!」
別の男がゴブリンを斬り伏せながら叫んだ。気持ちはわかるけど、そう言うことは大きい声で言っちゃダメ。
「若いですが、Bランクの猫下たくみさんのパーティーですよ。彼は強い。安心してください」
「あなたは?」
「俺は、古代裕介。同じくBランクです。ほら、よっと」
古代と名乗る男は、長い棍を使いゴブリンの脇を捉え投げ飛ばした。
親指を立てて俺を見た後、古代もゴブリンを攻撃に向かう。
「ひじきさん!」「あしも!」
「オンドルギッタンバッタン!!」
「小龍召喚!」
「お前の罪を数えろ」
あちこちで戦う男達の声が聞こえる。
おい。どーよ。こっちの世界にはいっぱいいるんだ。勇者なんてさ。たぶん。
『確かに。負けてられねーな、お前も』
まぁ、そういうことでいいなら、頑張ってみようかなぁ。
『まだまだ、救わなきゃいけない人がいるんだ、この世界には。知ってるだろ』
愛梨の淋しげな顔が脳裏に浮かんだ。
それほど時間もかからず、ゴブリンはすべて倒された。
バスで、空港で合流した冒険者達の活躍によって。
気づけば、滑走路の先に太陽が顔を出そうとしていた。
こういうネタをやってたら、メジャーに絶対なれないなw
でも、すげーやりたかったんです。。。




