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018 No rain no rainbow

ビーーーーーーーーーーーーーーーーー!


『涼、ギルドから緊急通知だ!』

「またゴブリンか!?」

「なに!」


男の戦いが始まろうとした直前に、ギルドから緊急通知が入ってくる。

津神のスキルの恐ろしさのひとつに、生霊がスマホを操作して自由にギルドアプリから情報を引き出せることだろう。

おそらく、トンファーの呼び出しも生霊が行なったはずだ。

通常ならスマホを操作して、武器の取り出し、スキルの使用、魔法の発現を行う、それらすべてを津神が望めば生霊が代わって行うのだろう。

突然、何が出てくるか予測できない。銃があっても油断できない相手であった。


俺はスマホで自分にも届いた通知を確認しようとした時、身体が動かないことにようやく気付いた。


「くっ、動けねぇ。くそ、トンファーが!」


どうやら津神も同じようだった。トンファーが強制キャンセルされたのか姿を消していた。


『えーと、仕方ない。俺が読むぞ。お前ら、よく聞け』




『冒険者ギルドの重大な規約違反を感知しました。

違反者の一時拘束を実行します。


Dランク御室明良、Eランク津神涼の2名は、

冒険者ギルドの規約で禁止された、

冒険者同士の殺意のある私闘を行おうとしました。


よって、この2名には、ペナルティとして、

所持スキル、魔法、アイテムの利用の強制制限を行います。


制限期間は3年間、制限範囲はギルド所属の女性冒険者すべてと、

ギルド関係者の未成年すべて、ギルド関係者の女性すべて

冒険者含むギルド関係者の家族にいる未成年と女性すべてとなります。


制限内容はセクシャルハラスメントに利用できる機能全般となります。


3年後の制限解除に関しては、2名の素行を監視しつづけた上で判断を行います』




『だってよ』

「わかった。もう、お前はパンツ覗けないんだな」

『JKZのパンツは見れないままか。ちっ、覗いとくんだったぜ』


津神が生霊に話しかけている。すでに闘争心はないようだ。

呪縛が解けた俺は銃をホルスターに戻した。


「お前もそうだ。これで、JKZの蕾とやらの状況を知ることはできなくなったな」


「くっ!」


『ギャハハハ!お前らのセクハラはギルドに監視されていたんだ!まさに大岡裁きだぜ!』

「主に、お前のセクハラだろ!」



「ふっ、お気楽なもんだな。なぜ、ギルド関係者だけなんだ!これじゃ、俺の闇は晴らせない。。。」


俺は続ける。


「お前らに、恋人だと思っていた女の口から、知らない男のザー○ンの臭いを嗅ぎ取ってしまう俺の気持ちがわかるか?」


「なんだとっ!? っく、そ、そんな」


「お前らに、交番にいるとき、毎朝笑顔で挨拶してくれる少女が、ある夏の日を境に大人になったことを理解してしまう俺の気持ちがわかるか!」


「もういい!もういいだろぉ! そ、そんなことが。。。あんまりだ」


津神の潤んだ目が俺を見ていた。


「俺が求める道というのは、そういう道なんだよ」


俺は、「知覚強化(大)」の「透視」を得るまでの苦労を含む果てしない「道」を津神に説明をした。


「あんたって、すげえヤツだったんだな」

「お前なら、わかってくれる。そんな気がしてたよ」


『ふだんから、スケベ心でスキル発動してんのが原因じゃねーか!』


「そんな俺が、変わりなく清らかな蕾の存在を知ったら、それを守りたいと思ってしまうのは仕方ないことだろう!」

「可能なら、お前の脳からJKZの記憶を削り取りたい。そんな思いは正直ある」

「ふっ、そうだろうな。このことは俺たち2人の秘密にしてくれないか? 冒険者仲間に知られたら半殺しですまない。魔物の餌にされてしまう」

「ちっ、わかったよ。ちくしょう。で、その蕾の詳細は俺には詳しく説明してくれるんだろうな?」

「津神、お前だけには話そう。蕾、いや秘密の花園の全貌を!」

「御室!」


『おーい、ギルドに監視されてること忘れてないかー?』




津神は俺の説明を真剣な顔で聞いてくれた。

その後、俺は津神と硬く握手したあと、自転車に乗って署に帰ったのだった。





〜 あの夜。


俺が現場にたどり着いたとき、津神とゴブリンが遭遇した直後だった。


「はやまりやがって、それは人形だ!人間の子供じゃねぇ」


ガレージ手前の車用玄関は、厳重に封鎖され中を見ることはできなかった。

知覚強化スキルを用いた聴覚と臭覚で現場の状況を理解した俺は、ホルスターからニューナンブを抜いた。

敵が人型サイズの魔物であることまでは理解していた。

魔物と戦った経験はある。だが、俺の戦闘経験はホーンラビットとスライムだけだ。

魔物との戦闘で警察から支給された銃を使ったことはない。これが効くかどうかも確信はなかった。


どこかで止まったタクシーから降り、こちらに駆けつける足音が複数。

この匂いはJKZだ。間違いない。彼女たちの幼さの残る蕾の匂いを間違えるはずがなかった。


「無理しちゃダメだよ。オムロン。あたしらに任せて!」

「状況は?」


埜乃ちゃんと亜美ちゃんが俺に声をかけてくれる。


「相手はゴブリンのようだ。先着したFランクと戦闘が始まったばかりだ。当然だが推されてる」

「ちっ、なんでそんなことに、行くよ!」


「待って、耐久魔法だけは掛けさせて!お願い!」


桃花ちゃんが魔法をJKZと俺に掛けてくれている間に、現場の環境と状況を説明する。


「どうも人形を、襲われている子供と勘違いしてるようだ。ナニッ!」

「どうしたのっ?!」

「Fランクがクリティカルを打ちやがった!」

「へぇ〜、マジで?やるじゃん」

「なるほど。使えそうですね」


埜乃ちゃんと亜美ちゃんは、Fランクになんらかの興味を持ったようだ。

桃花ちゃんの魔法はすぐに終わり、亜美ちゃんは手早に作戦を2人に伝える。


「まずい、Fランクがぶっ飛ばされた!」


「行くよ!」

「私が助ける。大丈夫よ。優しい人を死なせたりしない!」


3人は玄関から突入した。


それから、俺は知覚スキルを用いて、騒ぎに気付いた近隣の住宅を回る。

現場に近づいてくる人がいれば、先回りして人を遠ざけることだけに努めたのだった。

その後、美杉が到着したことも気付いていたが、俺は近隣の人々をなだめるのに必死だった。


俺は幸いにも管轄内の住人の皆さんに慕われていると思う。

「御室さんが言うなら」と今回の件でも、快く従ってくれた。ありがたいことだ。


ギルドのクエスト一覧には、困っている住人の情報が集まっている。

Dランクにもなれば、閲覧できる情報量は多く、フィルタリングによって地域の絞込みも可能だ。

それに、俺の持つスキルの力を足すことで、クエストになかった案件にも対処できる。

俺は毎日のパトロールで、この周辺の方々とも顔なじみだった。







御室を乗せたチャリンコは去っていく。

残された俺たちは、秘密の花園の真実に打ちのめされていた。。。


『おい、涼』


なんだよ。


『お前さ。友達はちゃんと選んだ方がいいよ』


ん?それ、お前のこと?

冒険者は、変態が多いけど、みんなちょっとだけいい人なんでしょう。

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