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016 助けて!そう○ちろうさん!

俺の名は、御室明良、24歳。

正義の味方「警察官」でありながら、人知れず闇を晴らす「ギルド所属の冒険者」だ。


俺は現在、裏稼業で得たスキル「知覚強化(中)」を稼働させながら、自転車に乗ってパトロール中である。

スキルによって強化された視覚と聴覚を用いて、人々の暮らしと安全を守るのが俺の使命。

俺がこの管轄にいる限り、悪が見逃されることなど、絶対にあり得ないのだ!


この「知覚強化」シリーズは冒険者にとって非常に有効なスキルなのだが、コストの高さが原因で意外にも取得している冒険者は少ない。

誰もが興味を持つだろうが、見栄えの良さや派手さを優先して戦闘用スキルなどを取得してしまうという。本当に嘆かわしいことである。素人どもが!

まぁ良い。スキル取得に必要なポイントやゴールドは、冒険者にとって大きなハードルなのだ。


そんな理由もあり、上位ランク者でも「知覚強化」シリーズを取得しない者が多い。たまにいても、下位の「知覚強化(小)」がせいぜいである。

現に俺もこのスキルを取るために払った代償によって、Cへのランクアップの道のりは遥か遠くになっていた。

ランクアップは、所持しているポイントの総額で決まる。

スキルや魔法の購入にはポイントが大量に必要なのだ。

複数のスキルや魔法、コストの高いスキルや魔法を所持している者に共通の悩みであった。


だが、コストだけが原因ではないだろう。

このスキルによって強化された知覚は、使用者に相応の負担を与える。

当然であろう、使用者はとんでもない情報量を扱うことになる。下手に扱えば脳が焼き切れるなどと言われている。

だが、俺のような「知覚強化」シリーズのプロであれば問題ない。


「知覚強化(中)」からは、「詳細設定」画面により、どの知覚を強化するのか細かく設定が可能である。

視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚、シックスセンス、すべてをスクロールバーによって別個にレベル調整したり、OFFにしたりできるのである。さらに運用に合わせて感度の方向性なども設定可能!

パトロール中は、視覚の範囲設定と聴覚のワイド設定だけで十分だった。他はすべてOFFにしてある。それで十分だ。


だが、「知覚強化(中)」から利用可能になったシックスセンスの感度だけは弄れない。常にOFFである。

好奇心に負けてレベルを少しだけ上げた時があるのだが、当然のように「見えちゃいけないモノ」を目にしてしまった。

その後、数日間1人で夜のトイレに行けなくなってしまう。寮の同僚には迷惑をかけてしまった。反省である。


俺はパトロールの動線に合わせて、「独居老人の話し相手」「ベランダから落ちた洗濯物を持ち主に返す」「井戸端会議の揉め事の仲裁」などのギルドクエストを次々とクリアしていく。

報酬は少ないが、すべてが「世界平和」に繋がっていると俺は信じている。


そう、俺は正義の味方なのだから。



パトロールの途中、俺は1人の若者が側溝に入りスコップで汚泥を一輪車に積み込んでいる姿を発見する。

懐かしい。おそらく「どぶさらい」クエストを行なっているのだろう。低ランク冒険者にお馴染みのクエストである。

通常であれば、暖かい目で見守るだけで通り過ぎるのだが、ひとつ見過ごせないことがあった。


側溝のそばに建っているアパートの管理人の女性が彼に話しかけていた。

彼女は年の離れたご主人を喪ったが、うら若き身で健気に夫の残したアパートを切り盛りしている。

いつも笑顔だが、時折影を感じさせる彼女は、近隣の誰もが気にかける存在であった。


彼女には笑顔でいて欲しい。


『俺の正義』がそう言って俺を引き止めたのだった。



「鏡子さん、こんにちわ。どうしました?」

「あら、御室さん。ごくろうさまです。こちらの方が溝の掃除をしてくださってまして」

「ああ、この前の大雨でナニかが詰まったんでしょう。貴方が彼に依頼を?」

「いえ、水が溢れて困っていたら、この方がご自分から。本当に優しい良い方なんですよぉ」


やはり、そうか、ギルドのクエストの発注者は謎に包まれている。

誰が何のために市井の人々の苦難を察知し、クエストを作っているのか?

まるで起こる未来を知っているとしか考えられない内容も少なくない。


だが、そんなことより鏡子さんに話しかけられて、デレデレしているこの男が気にいらない。

こんな奴がいる時に限って、鏡子さんはミニスカートだ。

側溝の底に立つヤツの視線は低い、なんとかせねば。

奴は、Tシャツがぴったり張り付いた鏡子さんの胸元をチラチラ見ながら鼻の下を伸ばしている。

間違いない。この男を鏡子さんに近づけては危険だ。


『俺の正義』がそう確信していた。


また、胸元を見やがったな!

ふん、素人め!

女性は男の目線に敏感なのを知らないのか?

俺は決して貴様のように、あからさまな視線を注いだりしない。

真の紳士に必要なスキルを持ち合わせているからだ!

俺は「知覚強化(中)」によって得た広い視界と高解像度により、目線を鏡子さんの顔から一切動かさずに、おっぱいを凝視することができる。


素晴らしい。


細身でありながら、Dカップ(推定)は下るまい。なんという美巨乳。なんというスタイルの良さ。

まだ旦那さんが生きていたら、思わず逮捕してしまったかもしれない。俺の正義を歪ませる。そんなおっぱいが怖ろしい。


そして、スマホを見ることもなく、臭覚のレベルをコソッとあげた。

あまり上げると汚泥の臭いが強くなるので設定は詳細に行わなければならない。

だが、俺の広い視野を持ってすれば、そんな操作屁でもない。

それでも漂う消しきれない汚臭は、俺の天性の才能でカットする。才能に見合ったスキルを選択することは冒険者の必須事項だからな。


さぁ、今日も鏡子さんの清潔感あふれる香りに酔いしれる時間だ。

爽やかな汗の香りが素晴らしい。

鏡子さんのアパートは、まだ洗浄式トイレを使っていないんだね。

ん、そろそろ排卵日が近いのかな?オリ○ノの香りがいつもより多い気がする。

今なら、響子さんに授精できるかもしれんな。げへ。

ホルモン分泌が分かるまで臭覚感知レベルを上げたいが、このドブ掃除野郎がいるから無理だ。次に邪魔したら、逮捕してやる!

それより、鏡子さんの淋しい夜を、立派になった俺の正義で満足させてあげたいぜ。ゲヘヘヘヘ。


「え、ポリの目がやばいって?目線が一切動かないのに血走ってる?こええな」


誰もが聞き逃す囁くようなつぶやきも、俺のスキルは聞き逃さない。

バカめ、真の紳士であり正義の味方でもある俺が、そんな愚かな表情を表に出すわけないだろう!

それに、お前の位置からでは俺の顔までは見えないはずだ。

俺は、愚かな冒険者から鏡子さんを守るため、奴の視線を塞ぐように立ち位置を変えた。


「嘘だろ?黒のTバックだと?あんな綺麗なお姉さんが。。。マジかよ」


バカなことを、お前の前には俺がいる。いなくてもその角度で見えるわけがないだろう。下品な妄想はやめろ、逮捕するぞ!

いや待て、もしかして、こいつもスキルを!

いやあり得ん。この状況で見えるとすれば「知覚強化(大)」によって得られると『噂』の『透視』しかあり得ない。


このスキルシリーズは、「知覚強化(小)」を高額の負担を支払ってまず手に入れ、さらにスキルレベルを上げた者だけが「知覚強化(中)」にスキルアップさせることが可能だ。その際にも大きなコストが発生する。さらにそこから「知覚強化(大)」に上げるのは、まさに人生をかけて挑む大事業だと言っていい。

「知覚強化(大)」は持っている冒険者が少なすぎて、その詳細は誰も知らない。だが、そこには男が人生をかけて挑むほどのロマンがあるはずである。噂の透視の実在は疑いようもない!

透視、それは男の夢。俺が人生をかけて挑む男のロマンだ!


まさかな。あり得ない。


だが、レアスキルを固有スキルとしてEランクから所持する、逮捕されて当然とも言えるルール違反な奴もいるのだ。油断はできない。

俺は、側溝の中で必要以上に前かがみで作業する冒険者に目を向けた。


「あ、おひさしぶりです。御室さん」


そこにいたのは、津神涼だった。

わずか一年でEランクまで上がった期待のルーキーと呼ばれる男だ。

若い冒険者たちからは、JKZとの距離の近さを危険視される、忌むべき存在。


そして、ゴブリン戦の後、この男がなんらかの固有スキルを手に入れたことを、俺は知っているのだった。


その時、風が舞う。

鏡子さんのフリフリスカートを巻き上げて。


「きゃあ」


黒だった。



師よ。。。

こんなところにいたのですね。

大事なことに気づいても後回しにしちゃう、それが冒険者です。


更新頑張ります。

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