83 ハーフエルフっ娘の王都防衛4 ~ ドラゴン戦1
「「「「「おおおおぉぉぉぉぉ♪」」」」」
コエリーオ王国の騎竜隊の事実上全滅した瞬間を見ていたテレビの前の人達は歓喜に沸いた。
『えーと、資料によると先ほどの攻撃は、現在発売中のカデン領戦記に出てくる神気の発射型で……えーと、飛翔神気だそうです』
テレビ局カンパニーの看板レポーター、ホシャロンがしどろもどろ解説する声が流れてくる。
彼女達は今、テレビ局カンパニー内のスタジオで、スタッフが一生懸命遠隔操作している小型テレビカメラからの映像を元に、事前に渡されていた資料を元にあれこれと検討しながら説明していた。
『おおっと、ここで敵陣に増援が到着したもようです。え……と、虫?巨大な虫です!……えっ?違う?……な、なんとドラゴンの一種だそうです。名前はガヴェ……ガヴェニート。緑色の表面は、無数のウロコが隙間なく並んでいるんだそうです。でも、どう見ても巨大な虫で……って、ええっ?えええっっっ!?』
そこでホシャロンは、カメラが緑鎧龍の後方を映し出した事により、その後ろに佇んでいる巨体が目に入った。
『な……なななななななななな……ちょっ、ちょっ、ちょっと!あれって火竜じゃありませんか?』
かなり動揺しているホシャロン。
だが、動揺しているのは彼女だけではなかった。
テレビ局カンパニーのスタッフたちや、テレビの前の皆もその映像を見て固まった。
火竜と言えば災害級のモンスターだ。
普段は人間にはあまり興味を示さないが、数十年に一度、彼等は遊び感覚で街などを破壊する。
その時、国が討伐隊を編成して討伐に向かわせるが、多くの場合はすでに火竜は街の破壊を完了させ、満足して帰った後だったりする。
仮に間に合っても、複数組の魔法騎士団が取り囲んで、ようやく倒せるレベルのものだった。
「みんな!この兵器を使用するわ。前の塀を倒してちょうだい」
一方、第一防衛ラインでは、フォーリィがとりあえず目の前の緑鎧龍を倒すべく、新開発の武器の前に移動し、上に掛けられていたシートを取り外した。
その武器は、長さ四メアトルの筒が二本並んで、かなり頑丈な銃架に固定されていた。
彼女は武器と言っているが、カデン軍の誰もがそれがどのような武器か分かっていない。
それどころか、武器として機能するのか疑問視する者も多かった。
フォーリィは戦闘服のポケットから鍵を二つ取り出し、その内の一つをこの武器の本体に差し込んで捻る。
すると、ヴゥゥンと微かな音が響き、武器に魔力が供給され始める。
次に彼女はもう一つの鍵を、武器の横に設置されている箱に差し込んでフタを開けると、中には一〇センチ四方、長さ四〇センチの金色の金属の棒が数本入っていた。
彼女はその内の一本を手に取り、武器本体の差込口にそれを押し込んだ。
「みんな!危ないから離れてて!」
彼女の言葉に、近くにいた全員が慌てて距離をとる。
もう、その時点でかなりの魔力が漏れ出しいて、とても恐ろしい状態になっていたからだ。
緑鎧龍もその漏れ出した魔力を検知したようで、こちらに向けて弾かれたように走り出した。
そして中距離攻撃の有効範囲まで近付くと、そこで足を止め、開口部を開いて魔力を込め始める。
だが遅かった。
緑鎧龍が魔法攻撃を始める前に、フォーリィは新武器の発射レバーを引いた。
――バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリィィィィィ
稲妻のような放電を伴い、二本の光が緑鎧龍目掛けて飛んで行く。
その攻撃を食らった緑鎧龍は鉄より硬いと言われている表面のウロコもろとも一瞬でボロボロに崩れながら吹き飛んでいき、他の緑鎧龍は驚いて攻撃が中断してしまった。
フォーリィはそのまま新兵器の発射口を水平方向に移動させていき、次々と緑鎧龍を粉砕していく。
そして、光が止んだ時、先行していた二〇体の緑鎧龍が跡形もなく消え失せていた。
「な……何だ、ありゃあ?」
その光景をテレビで見ていた一人が呟いた。
だが、誰もその答えを持ち合わせていない。
自分は夢でも見ているのではないか?
みんな呆然とテレビ画面を眺めていた。
『……はっ!し……失礼しました』
いち早く復帰したのは、テレビ局カンパニーの面々だった。
『え……えーと、今の攻撃は、ですね……ちょっとぉ。何なんですか?あれは』
ホシャロンが他のスタッフに助けを求めた。
『えっ?五三ページ?えーと、こ、これですか?この光の帯が敵に向かって飛んで行くって書いてある』
彼らも、事前に説明資料を渡されただけで、その武器の全てが頭に入っているわけではない。
だから、カンパニー全員が資料を隅から隅まで探して、やっとそれっぽい物を見つけだした。
『えーと、資料によると、この武器の名前はカデン粒子砲。何でも金属を細かく砕いて、高温で熱した上で射出する武器だそうです』
ホシャロンの説明に対し、一般市民は彼女が何を言っているのか分からず聞き流していたが、南カデンのドワーフ達は違った。
どこのカンパニーが創ったのか。どうやって金属をあそこまで細かく粉砕できるのか。など、激論が始まっていた。
そう、これこそフォーリィがガネトムートに開発させていた秘密兵器だった。
彼女がこの武器を創ろうと思ったのは、彼女が偶然、金属の原子間のつながりを弱くする魔石を発見したからだった。
この魔石で金属を粉砕した時、粒子がイオン化する。だがそれは不安定な状態で、魔石への魔力供給を絶てば、再び結合して安定した状態に戻る。
だからフォーリィは、イオン化した状態で強力な磁力を発生させ、不安定な状態のままプラスイオンとマイナスイオンを二本の筒でそれぞれ加速して飛ばしてみた。
その実験が想像以上に上手くいったので、このアイデアを元に、ガネトムートに武器開発を依頼したのだ。
加熱はそれほど難しくなかった。
フォーリィは冷蔵庫などに使われている冷却の魔石を魔改造した。
冷却の魔石は原子振動を抑えて物体を冷却する魔石だ。だから逆に原子振動を活発化させて加熱するように改造するだけだった。
オリハルコン合金のコイルを使って強力な磁場を生み出す砲身。イオン化した時により高い加速度や破壊力を出すための最適な合金の選定などは全てガネトムートに丸投げした。
こうして出来上がったのが、このカデン領の粒子砲。名付けて『カデン粒子砲』だ。
この武器の攻撃力は想像以上に高かった。
だが、それでも倒せたのは先行していた二〇体だけだった。
フォーリィは続けて二本目の金属棒を手に取り……そこで固まった。
よく見るとその手がプルプルと震えている。
『おおっと!ここでカデン伯爵様、ホーズア王国を侵す敵に対して、怒りに震えているようです』
ホシャロンそのように解釈したが、フォーリィは頭の中で別の事を考えていた。
(この棒、一本で三千万クセル……領地の借金がまた増える……)
ガネトムートが色々試した結果、一番効率が良かった合金は、金とヒスイ鉄と言うファンタジー金属の合金で、どちらもかなり高価だった。
フォーリィは暫らく葛藤を続けたあと、大きく肩を落として合金の棒をカデン粒子砲にセットする。
残りの緑鎧龍はと言えば、少し離れたところでこちらの様子を伺っていた。
だが、フォーリィは緑鎧龍が近付いてくるのを待っているつもりはない。
彼女は素早く磁力出力のレバーを目いっぱい倒すと、再び発射レバーを引く。
――バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリィィィィィ
二発目の攻撃。
まさかここまで届くとは思っていなかった緑鎧龍は慌てて距離を取ろうとするが、時すでに遅し。
破壊の光が順番に緑鎧龍を粉砕していく。
そして光が収まった時。そこには緑鎧龍の姿がなかった。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
テレビを観ていたホーズア国民達は、歓喜に沸いた。
あの恐ろしい竜を、こうもアッサリと全滅されたのだ。
興奮で手が震える者。感激にポロポロと涙を流す者。目の前で両手を合わせて祈りだす者。
だが次の瞬間、彼等の興奮は一気に冷めた。
火竜が飛んできて、フォーリィの前、一〇〇メアトルほどの距離で着地したからだ。
『久しぶりだな。人間の少女よ』
怒気を含んだ声で、火竜はフォーリィに話しかける。
「誰?」
それに対して、フォーリィにキョトンとした顔で首を傾げた。
お金の力で敵を倒すカデン粒子砲♪
火竜との戦いまで書きたかったのですが、カデン粒子砲のシーンが思ったより長くなってしまったので、一旦ここで切らせて頂きます。
次回は火竜との戦いです。




