63 ハーフエルフっ娘と新たな戦い10 ~ 世界初の越境電撃作戦
マルバーリオ将軍との会談の後も、フォーリィは連日、忙しそうにあちこち走り回っていた。
「おお、お嬢ちゃん、いい時に来たな」
電動モーターカンパニーのようすを見に来たフォーリィに、ロックムートが嬉しそうに声を掛ける。
「何なに?新しい発明?」
目をキラキラさせて彼の顔を覗き込むフォーリィ。ロックムート達、カンパニーのメンバーはその顔が見たくて日夜頑張って改良を続けていた。
「ああ、大発見だ」
そういって、ロックムートは奥の作業場に彼女を連れて行く。
作業場には二〇名のドワーフ達が各々作業をしていたが、彼女が入って来たので、その手を止めて彼女の元に集まって来た。
「実は、オリハルコンに少量のアダマンタイトやリンなどを加えた針金に魔力を流すと、磁力が発生する事が判明したんだ。それで魔力だけで動くモーターを作ってみたんだ」
ロックムートはそう言って作業台の上に置かれていたモーターに魔力を流すと、モーターは勢いよく回り始めた。
「おおおぉぉぉ♪」
フォーリィは食い入るように、そのモーターを見る。
「で?効率は?」
とても嬉しそうな顔を向ける彼女に、ロックムートは自信満々に答える。
「最新型電動モーターの約二倍だ」
「すっごぉぉぉぉぉぉぉい♪」
フォーリィは感激のあまり、ロックムートを含め、カンパニーの職人たち一人一人にハグして、その頭にキスをした。
「じゃあ、じゃあ、アレに搭載する?」
「ああ、今日にでも換装するつもりだ」
ロックムートはニカッと笑う。
「ああ、あと、同じ原理で発魔力機を作っている最中なんだが……」
「効率が一・五倍以上だったら許す!ダムの方には伝えておくから、いつでも交換して」
フォーリィはニッコリと笑って親指を立てる。
◆ ◆
そんなこんなで、慌ただしい日々を送っている中、ラトゥーミア王から謁見許可をもらったラトゥール達は、フロレーティオ男爵と共に電動カーでラトゥーミアの王都に到着した。
王都の門の前で、すでに彼らが乗っている馬のない車は騒ぎになり、フロレーティオ男爵の王都邸に着くまでの道中、大勢の都民たちに追いかけられる騒ぎとなった。
「謁見は明日です。今日は皆さん、ゆっくりとお休みください」
そう言われて数名で一部屋ずつ与えられたが、ここは敵国、交代で見張りを立てるのは忘れなかった。
そして、いよいよ謁見の時が訪れた。
「そなたがカデン男爵か?」
フロレーティオ男爵の時と同じく、ラトゥール達はラトゥーミア王にテレビ電話の使用許可をもらい、フォーリィとホーズア王はテレビ電話越しの会談となった。
『はい、フォーリィ・ルメーリオ・カデン男爵と申します。以後、お見知りおきください』
両手でスカートを少し広げて、貴族の挨拶をする。
ちなみに今、彼女が着ているドレスは、フロレーティオ男爵との謁見の時とマルバーリオ将軍との会談の時に続いて三着目の公用ドレスだ。
普段彼女が領地内を移動する時はカジュアルな服を着ているが、こうした公の場ではラントゥーナ補佐官の監修により作成された高価なドレスを身にまとっている。
『ラトゥーミア王、久しぶりだな』
そして今回も、ホーズア王がテレビ電話で参加している。
両国が戦争状態になる前まで、両者は幾度となく会談をして、互いに顔見知りだった。
「これがフロレーティオ男爵から連絡があったテレビ電話と言うやつか。遠く離れた場所にいる者と会話ができるとは、とても素晴らしい魔道具だな」
ラトゥーミア王は笑みを浮かべる。
その笑顔は爽やかさのかけらもなく、言ってしまえばネチっこくて下品な笑い方だった。
それは、彼の少しポッチャリとした体形に良く合っているとも言える。
彼は透き通るような金髪、つまり純エルフだ。そのため元々太りにくいのだが、普段からどのくらい食べていればこの体形になるのか。
そして、国民が飢饉で苦しんでいるのに、なぜその体形なのか。
フォーリィは、そんな事を考えていた。
『ラトゥーミア王様。フロレーティオ男爵様にもお伝えしましたが、この度、ラトゥーミア王国とホーズア王国の間で停戦協定の締結と、通商再開のご提案をさせて頂くために、この謁見を開いてもらうようにお願いしました』
そう切り出し、フォーリィは自領が提供する物、そしてラトゥーミア王国から提供してもらいたい物を伝え、両国が互いに手を取り合う事がどのように互いの利益につながるかを説明した。
フォーリィの言葉を聞きながら、ラトゥーミア王は無言で自分の髪をいじっていた。似合ってもいないのに長髪にし、内側にカールさせた髪を。
『これにより、両国は今まで以上に繁栄し、民も飢える心配がなくなるのです』
「うむ、とても魅力的な話だな」
説明が終わると、ラトゥーミア王はネバついたような笑顔を浮かべた。
それを見たフロレーティオ男爵やカデン領の使者達は安堵の表情を浮かべた。
だがフォーリィ、ラトゥール、そしてホーズア王は顔には出さないものの、緊張を高める。
「……なんて、この儂が言うと思ったか?愚か者め」
ラトゥーミア王は表情を一変させ、人を見下したような、それでいて少し不機嫌そうな顔をする。
「戦争中の相手国に、こんな軍事機密バリバリの道具を持って来るとは、お前ら馬鹿だろ?表にある馬のいらない馬車も戦争に役にたつな、後でドワーフ達に解析させよう。おい、お前ら。この使者達を捕まえて首を刎ねろ!」
ラトゥーミア王の言葉に、カデン領の使者達が慌てたようすであたりを見回すと、城の兵士たちが困惑しながらもゆっくり彼らを取り囲むように移動しているのが見えた。
『ちょっと!武器も持たずに訪れた使者を殺すって言うの?』
フォーリィがテレビ電話に顔を近付けて叫んだ。
「戦争中に相手国にのこのこと現れる方が悪い。見せしめだ。こいつらの首は塩漬けしてそちらに送り届けてやる」
ヘラヘラと下品な笑みを浮かべるラトゥーミア王。
そして、城の兵士たちがラトゥール達を取り囲み、彼らを捉えるべく手を伸ばしたその時、ラトゥールが懐に入れていた手を高々と上げた。
大きな音と物凄い強い光に、その場にいた全員が動きを止めた。
そう、魔改造した光の魔石と大音量を出すスピーカーを組み合わせた閃光弾もどきで、フォーリィが万一の時に使うようにと兄に持たせていたものだった。
ラトゥールは、視力と聴覚を奪われた城の兵士達が動きを止めた事を確認すると、仲間の使者達を引っ張り、謁見の間から脱出した。
「な、何が起こったんだ?」
暫らくして視力が回復して来たラトゥーミア王は、使者達が逃げ出した事に気付く。
「おい、あいつらを追……」
『国王様!』
ラトゥーミア王の言葉を遮る形で、フォーリィが叫ぶ。
その声に、ラトゥーミア王は下品な笑みを浮かべてフォーリィに顔を向ける。
「何だ?彼らの命乞いか?お前が一人でこの城までくれば考えてやっても……」
『貴様じゃねえ!ゴミ虫がぁ!』
「な、な、何だとぉ!貴様ぁぁぁぁ!」
フォーリィの言葉に激怒するラトゥーミア王。
だが、フォーリィはそんな事は無視して、カデン領に設置してあるホーズア王に直結しているテレビ電話に向かって話す。
『ホーズア国王様、ラトゥーミア王国を滅ぼしてしまっていいですか?』
それを聞いて、ラトゥーミア王は顔を真っ赤にして何やら叫んでいるが、彼女達はそちらに目もくれていない。
そして、ホーズア王は真剣な彼女の眼差しを見て少し考えた後、ニヤリと笑う。
『元より我が国と戦争中だ。思う存分叩きのめすがいい』
それを聞いたフォーリィは、有難うございます、と小さな声で言うと、力いっぱいドレスの胸元を引き裂いた。
そしてドレスの下からは、一五歳のハーフエルフとしてはいささか育ちすぎている胸と、それを包み隠すブラジャーが現れた。フォーリィが、伸縮素材を使って色々と指示を出して作成させた針金入りの、彼女の趣味をめいっぱい盛り込んだとても可愛らしいブラジャーが。
「な、何だ?我が国を滅ぼすとか勇ましい事を言っておいて、結局は色仕掛けか?」
などと言っているラトゥーミア王は無視して、フォーリィは胸の谷間に指を入れる。そしてブラジャーの裏の隠しポケットから小さな鍵を取り出すと、ラトゥーミア王が映し出されているテレビ電話の横の鍵穴にその鍵を刺して軽くひねった。
すると鍵穴の下からは、縦に設置されている小さなパネルがせり出し、彼女はそのパネルにある二つのボタンの内、上の緑のボタンを押した。
―― ブシュゥゥゥゥゥゥゥ
途端、テレビ電話からガスが噴き出し、テレビ電話に大写しになった彼女の胸を食い入るように見ていたラトゥーミア王は思わずそのガスを吸い込み、その場で倒れた。
「国王様!」
そして、倒れた国王を助けようと近付いた兵士達も次々と倒れ、その場で動いている者は一人もいなくなった。
テレビ電話での会談を思いついた時、フォーリィが前世の知識を駆使して急ぎ作らせた催眠ガスだ。三〇分は目を覚ます事はない。
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
その間も、フォーリィは懸命にテレビ電話に向かって声を掛け続けた。
『俺たちは大丈夫だ』
その時、フォーリィの魔道音伝器から兄の声が響いて来た。
「お兄ちゃん!」
フォーリィはすぐ魔道音伝器を手に取ると魔力を流して叫んだ。
『おいおい、あまり大声を出すと見つかってしまうぞ』
「ご、こめん。それで、今はどういう状況なの?」
兄に指摘され、ひそひそ声で話すフォーリィ。
『今は物置みたいな所に隠れている。追手が来なかったところを見ると、お前が何かしてくれたんだろ?ありがとう』
「お礼はいいわ。お兄ちゃんを危険にさらしたのは私だし。それで、暫らくは持ちそう?」
『ああ、床板を外して、その中に隠れるつもりだ。一時間くらいは隠れていられるはずだ。それくらいあれば、お前が何とかしてくれるんだろ?』
疑いなど微塵にも感じていない兄の言葉に、フォーリィは自信満々に答える。
「ええ、それだけあれば十分よ」
そう言うとフォーリィはドレスを脱ぎ捨て、クローゼットに向かうと戦闘服を手にした。
「これより最高レベルの戦闘態勢に移行する。ラントゥーナはテレビ電話をモニタリングし、人が集まって来たらテレビ電話の赤いボタンを押すように。また、人が来なくても三〇分経ったらボタンを押すこと!」
「はい、分かりました」
フォーリィは素早く戦闘服に着替えると走って部屋から出て行った。
◆ ◆
そして三〇分後……
「ん?」
ラトゥーミア王国の王城では、空から響く聞きなれない音に兵士の一人が顔を上げると、奇妙な鳥が飛んでいた。
「鳥?いや、まさかワイバーンか?」
確かに、それは鳥と言うには少々大きいような気がした。
そして、それが頭上を通過した時、何かが城の中庭に落ちてきた。
―― ドオオォォォォォォォォン
轟音と共に城壁が大きく崩れる。
『こちら、ワイバーン1号。爆弾は中庭に着弾。こりゃあ、すげえ迫力だな』
先ほど王城の上空を過ぎ去った零戦型の魔道モーター飛行機から、翼人のエースパイロット、ガヴィーオがフォーリィ達に連絡を入れる。
彼はこの道一か月の大ベテランだ。
『こちら、ワイバーン2号。間もなく目的地上空に到着する』
二機目の飛行機からパイロットが連絡を入れると、後部座席に座っている同僚が慎重に爆弾起動のボタンを押す。
すると、爆弾内部に設置されている魔改造された魔石に魔力が供給され、爆弾内部の水を水素と酸素に分解し始める。
そして分解されたガスは、それぞれ別の結界に圧縮収納される。
後部座席の者がスコープ越しに地上を確認し、王城の真上に到着すると爆弾投下のためにレバーを引いた。
すると、飛行機下部に取り付けられている爆弾は機体から離れて落下していく。
そして地面に落下すると、先端に取り付けられているスイッチが、結界の魔石に供給している魔力を断ち切り、着火の魔石に魔力を送り始める。
―― ドオオォォォォォォォォン
再び轟音と共に爆弾が破裂し、城壁を更に破壊すると共に、集まって来た兵士達も吹き飛ばした。
『こちら、ワイバーン2号。爆弾は目的ポイントに着弾』
その連絡を受け、後続のワイバーン3号の兵士たちは爆撃の準備を始める。
この三機の飛行機のパイロットは全て翼人だ。
それは、彼らに鳥のような小さな翼があるからではない。
途中で魔力供給が途絶えても、自前の魔力で飛行の継続が可能なように、フォーリィは魔力を扱えるエルフ、ハーフエルフ、そして翼人を集めてテスト飛行を行った。
そして彼らの中で、翼人達が気流を読む事に長けている事が判明したため、パイロットは全員翼人となった。
ちなみに、ドワーフも魔力を扱えるが、彼らのサイズで飛行機を作るとフォーリィが乗れないので、候補から除外していた。
そして、三発目の爆弾が着弾し、兵士達が怖がって中庭に近付かなくなった時、ようやく到着した。
フォーリィたち竹飛竜部隊が。
竹飛竜は上空でホバリングを始めると、素早くワイヤーが下ろされ、兵士達がそのワイヤーに器具を取り付けると、次々と地面に降り始めた。
それに気づいた城の兵士たちが慌てて剣を抜き、兵士達に向かって行くが……
―― タ、タ、タ、タ、タ、タン
カデン領の兵士たちに銃撃されて次々と倒れていく。
彼らが手にしているのは、アサルトライフルを模したマシンガンタイプの魔道筒状武器だった。
本体に内蔵されたシリンダーには、結界の魔石と風の魔石を一セットとし、計八セット設置されていて、各セットは二秒間で空気の圧縮が完了する。
そして、シリンダーは二秒で一回りするようにして、秒間四連発が可能となっていた。
こうして、フォーリィ率いるカデン領軍にラトゥーミアの王城は一方的に蹂躙される事となった。
お気づきの方もいたかも知れませんが、サブタイトルが「ハーフエルフっ娘と新たな戦い」のままでした。つまり、まだ戦争は終わっていません。
あと、53話目でフォーリィが大鷹の剥製を作らせていたのは、飛行機を作るためでした。
今回爆弾の話が出てきますが、魔石を使った爆弾の製造は日本では禁止されています、くれぐれも真似をしないようにお願いします。(w)
最後に、誤字脱字報告ありがとうございます。この場を借りてお礼申し上げます。




