29 ハーフエルフっ娘、戦いに備える4
「えっ?私が戦場に同行ですか?」
いきなりのマレクリン将軍からの要請に、フォーリィは首を傾げる。
ちなみに、武器のプレゼンテーションが終わり、元軍人としての役割が終わったと判断した彼女は軍人口調を止めている。
「魔道筒状武器がもっと必要だと言っていたはずですが?」
最初彼女は、一〇〇〇丁調達できないかと言われた。
だが魔石の改造は、魔石の構造が見えるエルフやハーフエルフである必要があるうえ、空気のことを理解できないと無理なので、結局は彼女一人でやる必要がある。
その上、魔道筒状武器を組み立てる際の調整や確認も、その構造を熟知している彼女以外では務まらない。
だから一〇〇〇丁は無理としても、将軍たちが出立した後も、フォーリィが魔道筒状武器を作り続けて軍の補給部隊に頼んで送り届けて貰おうと考えていた。
それなのに、突然の方向転換である。
「今更、あの武器が二〇個から四〇個になったとしても、敵の数からするとあまり変わらない。だから例のカタパルトと二〇個の新型で敵を退ける戦略を考えることにした。それには新型の命中精度を上げる必要がある。現状、うちの部下たちでは一〇〇メアトル先のカカシにも当てられない状態だからな。それでお前さんに同行してもらって、道中、射撃訓練をして貰いたいのだ」
将軍は苦笑いを浮かべながら説明する。
確かに、提供する魔道筒状武器を何倍増やしても、肝心のスナイパーが育っていなければ宝の持ち腐れだった。
それよりも、数は少なくとも確実に狙撃できる者が増えれば、それだけで戦力は跳ね上がる。
この時代、軍は歩兵が圧倒的に多いため、その進行速度は歩兵の移動速度に合わせている。
敵を迎え撃つポイントに到着するまでの数十日間、毎晩特訓すればそれなりに使えるようにはなるだろう。
そう考えたフォーリィは、元気いっぱいに答えた。
「嫌ですよ。お断りします。そんなメンドウ……じゃなくで、私はそもそも軍人じゃないので」
将軍の思考は、十数秒間フリーズした。
だが彼女にとって至極当然だ。
軍人でもない彼女が何日も軍と行動をともにするなど、とても不自然であった。
勿論それを疎ましく思う者も出てくる。それは彼女にとって、とても面倒な事になりかねなかった。
「……驚いたぞ」
やがて彼は絞り出すように言葉を発した。
「国王軍からの正式な要請を、面倒だからと言う理由で断るなんて」
「い、いや、面倒なんて言ってません」
さすがにマズイことをしたなと感じた彼女は、しどろもどろに言い訳をする。
「私は魔法騎士団をクビになった身ですから、新しい武技を餌に戦場に顔を出すのは……ほら……皆の反感を買うというか……」
「面倒だと言おうとしただろ?」
「うっ……ソンナコト、ナイデスヨ」
棒読みの上、声が裏返っていた。
「ほ、ほら、私はそもそも魔法が使えなくなったからクビになった訳だし、その……戦場に出ても足手まといになるだけだから」
「誰もお前さんに戦えと言っている訳じゃない。ただ、あの新型は構造が複雑だから、当然メンテナンスが必要なのだろ?」
「うっ……」
痛いところを突かれた。
確かに銃器はメンテナンスが必要だ。
そして、それを行えるのは、この世界では彼女ただ一人だった。
「出発は三日後だ。それまでに準備しておくように」
「はい……わかりました」
ガックリと肩を落とすフォーリィ。
それを見て、将軍は苦笑いを浮かべる。
(なんで、こうなった……)
こうしてフォーリィは、無理やり戦争に駆り出される事となった。




