エピローグ:狼
ランドが居なくなってから3年が経っていた。
プリムはいつもの様に、BARでメロンソーダを飲んでいた。
「プリムちゃん…いつの間にか大人の女性になったよね」
BARのマスターはグラスを磨きながら話しかける。
「まぁね!」
プリムはあまり成長して居なかったが、見栄を張る。
「ソフィアちゃん…結婚したんだって?」
ソフィアはあの後、森に帰り森で出会った雄狼と恋に落ちついこの間、史上初の教会で狼の結婚式が行われた。
と言っても、訪れたのはソルとルルとルナとプリムだけだったが、ソフィアはとても嬉しそうにしていた。
たまに、森からソフィアと雄狼はルナの家に訪れる。ルナはいつも、嬉しそうにしていた。
「ソルとルルもアクアランドで就職が決まって、最近恋人まで出来たって言ってたわ」
プリムはメロンソーダを飲み干す。
「じゃあ、ルナさんは今家に1人で居るのかい?」
「ううん。私が一緒に住んでるの。ほら私、成婚の儀をしなきゃいけないんだけど、アイツが居ないと出来ないじゃん?だから、家を出てきたの」
プリムは少し照れ臭そうだった。
「ああ…彼か。今、どこに居るんだろうね…」
マスターは心配そうに言う。
「お母様に聞いたら、遠い場所に行ったって言ってたわ。それ以上は、何も教えてくれないの」
マスターは2杯目のメロンソーダをプリムの前に置いた。
その時、店のドアが開いてお客が入ってくる。
若い男性が3人ほど入ると適当な席に座ると談笑を始めた。
マスターも接客に戻る。
プリムはカウンターにうつ伏せになる。もう、3年もランドと会っていない…寂しくてしょうが無かった。
男性の話が聞こえてくる。
「俺、ついに狼の魂を手に入れたんだ!子供の時から、世話してたんだけど…やっと死んでくれて魂を体に宿させてくれたぜ!」
「俺は鳥の魂だぜ?スゲーだろ」
「良いなぁー2人とも…俺なんか、あんなに可愛がってやったのに魂を宿してくれなかった」
今ちまたでは、魂ブームになっており、死にかけの動物を売る店まで出てきた程だ。
「お前、狼とか言って実は犬の魂なんじゃねーの?」
男性客の1人が煽る。
「何だと?じゃあ見てみるか?」
狼の魂を持っていると言う男性は自慢げに獣人化をするが、まだまだヒヨッコレベルなのか殆ど人間の姿だった。
プリムは少し気になり見ていたが、直ぐにカウンターの方へ視線を戻した。
「どうよ?完璧に狼だろ?」
狼男性は得意げに言う。
他の男性が呟いた。
「俺…つい2日前くらいに、狼の魂を持った人に助けられた事があんだけど…。その人は殆ど狼になっていて毛並は綺麗な金色だったぜ?お前とは全然違うなぁ」
毛並が金色!?その言葉を聞きプリムは呟いた男性の元に駆け寄った。
「ねぇっ!その人、どこで見たの!?」
男性の胸ぐらを掴み叫んだ。
「えっ…いやぁ〜、この町から少し離れた所かな…」
男性は脅えながら説明をする。
少し離れた場所…ランドの家の近く?でも、ランドは家に帰って来てない。どうして…?帰れない理由でもあるの?
プリムはそのまま考え込んでいると、ヒヨッコレベルの狼男性がプリムの肩を掴んできた。
「オイッねーちゃんよ!もしかして、俺らと遊びたいのかよ?」
狼男性はニヤリと笑う。
「そんな訳無いでしょ?」
プリムは胸ぐらを離すと冷たくいい放つ。そして、スタスタとまたカウンターに戻っていった。
「ランド…どうして戻って来ないの」
プリムは呟いた。
「おぅねーちゃん!もしかして、男に捨てられたのか?だから、1人で飲んでるんだろ?」
いつの間にか横に狼男性は立っていた。プリムの独り言を聞いていたようだ。
"捨てられた"
その言葉にプリムは怒って言い返す。
「そんな訳無いでしょ!何も知らない癖に!放っといてよ!」
プリムの目は本気で怒っていた。何も知らない赤の他人に言われた事が何よりも悔しかった。
「そんな男忘れて、俺たちと遊ぼうぜ?」
男はまたプリムの肩を掴む。
「うるさいわねっ!」
プリムは力一杯に手を振り払った。しかし、その事が男のプライドに傷をつけたのか急にキレだした。
「この野郎!魂も持ってない人間風情が俺の誘いを何度も断りやがって…」
「アナタだって、何が狼の魂よ!ただの犬じゃないっ!狼はもう絶滅してるのよ!」
1人を除いて…と言いかけたが、別に言わなくても良いかなと言葉を止めた。
「何だと…女!てめぇ、さっきから生意気な事ばっか言いやがって…俺の力を見せてやるぜ!」
男は拳を振り上げた。
プリムはぎゅっと目を瞑った。こんな時、ランドが居てくれたら…こんな奴、コテンパンにのしてくれるのに…。
プリムは少しの間、目を瞑っていたがなかなか衝撃が走らない。
少しだけ目を開けて見てみる。狼男性はまだ、立っていたが、拳を振り上げた姿で止まっていた。
止まっていたと言うよりは、何かに脅えてると言った感じである。
カウンターの上に置いてあったコップがカタカタと音を立てて震えていた。
「何なんだよ…この殺気は…」
狼男性は、プリムから少し離れると周りを見渡した。
他の男性客も、辺りを気にしていた。素人でも感じる殺気…。
「かはっ…」
狼男性の息が切れる音が聞こえた。プリムはそっと顔を上げる。
狼男性の首に手がかかっており、片手で首を持ち上げられている。
「プリムに手を出すな!プリムを殺すと言うなら、お前を殺す!」
金色の毛並の狼人間が、男性の首を絞めながら言う。男性は泡を吹き気絶をしたので、狼人間は他の2名のテーブルまで投げ飛ばす。
「去れ…」
殺気は、この狼人間から発していたらしく男性客は慌てて気絶をした男性を担いで店から出ていった。
狼人間はため息をつくと、人間の姿に戻る。
腰まで伸びた茶色の髪の毛先をバンダナで結い、少しみすぼらしい格好をした年の頃20歳くらいの青年が顔を出す。
「おかえり…ランド」
プリムは声をかけた。
ランドは振り返りプリムを見た。
「ただいま…プリム」
「3年も何処に行ってたの?」
「…少し遠い所さ。何か奇跡が起こったみたいなんだ」
あさっての方を見ながらランドは呟いた。
「奇跡?」
「ああ…奇跡さ本当に。奇跡って起こるもんなんだな」
ランドは笑って答えた。
「それは、ランドがあの後に何処かに行った事に関係してるの?」
「まぁな…。それより、早く家に帰りたい…ソルやルルやソフィア…それから、母さんに会いたい」
「うん!帰ろっ!」
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「母さん…ただいま」
ランドはルナの部屋のドアを開けた。
「ランド…?生きてたのね!」
"生きてた"この言葉にプリムは疑問に思う。
この場合、"生きてた"と言う表現はおかしい…。
「ああ…奇跡的に助かったみたいなんだ」
"助かった"と言う言葉にも疑問に思う。
"生きてた""助かった"この2つの言葉の共通点は"死"
プリムは意を決してルナに聞いた。
「お母様…ランドは本当は死ぬハズだったんですか?」
この問いにルナはうつ向いた。
「何で何も言ってくれなかったの!」
プリムは艦酌を上げて叫んだ。
「…もし、知っていたらプリムは俺とキッシュの戦いを止めていたか?」
「当たり前で…っ!?」
プリムの動きが止まった。そう…つまり、死ぬと分かってたら私はどんな事をしても止めていた。
「だからって…」
「プリムちゃんごめんなさい。ずっと黙ってて…私、何て言えば分からなかった。だから、何も言えなかった」
ルナは曇った声で謝る。
「母さん…良いんだ。俺がいけなかったんだ。プリムやソフィアに何も言えなかった俺が…ゴフッ!」
ルナに駆け寄ったランドがいきなり後頭部を押さえて倒れた。
プリムは後ろで拳を固めて立っている。
「はぁー…ランドが帰って来たら1発殴らせてって言ったでしょ?忘れちゃったの?」
「だからって、今殴る事は無いだろ!」
ランドは半泣き状態で体を起き上がらせてプリムの方を見た。
「今の1発で許してあげる!でも、またそう言う隠し事をしたら次は…」
プリムの後ろに怒りのオーラが鬼神となって形を表す。
「わ…わかったって!そうそう!母さんが元気そうで良かったよ」
冷や汗をかきながらランドは無理矢理話を変えた。
「あったり前でしょ!私はいつでも元気よ」
ルナは無理に笑顔を作り答えた。
「そっか…なら安心して、俺も行けるな」
ランドの言葉に周りは静かになった。
「母さん…プリム…俺、まだ完全に復活した訳じゃ無いんだ。まだまだ、取り返さないといけない物が沢山あるんだ」
「取り返す?何をだい?」
「肉体と魂…俺の肉体と、兄さんの魂をね」
ランドはおもむろに服を脱ぎ捨てる。服の中には何も無かった。
「ランド…体が無いの?」
ルナは驚いた。何も無い空間から首と手と足が生えている。
「そう…コレが副作用だったんだ。肉体が崩壊するって"死"では無かった。体が無くなる事だったんだ」
脱ぎ捨てた服をまた着るとランドはプリムに視線を向けた。
「また何年も先になるかも知れない…俺はもう1人は嫌だ。だから、俺と一緒に旅に出よう」
その言葉にプリムは飛び上がる程、嬉しかった。しかし、不安がよぎる。
この家にルナを1人で残すのは嫌だった。
ルナももう年だし、私が旅に出たらルナはもう1人になってしまう。
プリムは首を横に振った。
「私は行けない…」
その言葉に驚いたのは、ランドよりもルナの方であった。
「プリムちゃん!何で?私の事は良いから行ってきなさい」
プリムは首を振る。
「私が行かないのは、ランドのせいよ。ランドが、完全に体を取り戻してまた会いに来るまで、私は待ってる」
「そうか…ありがとう。プリム、母さんをヨロシク頼むな…」
ランドは笑顔で言う。
「分かった。でも、私は後2年しか待たないからね!」
「十分だ!」
ランドは頷いた。
ランドは窓を開け放つ。草や木の言い香りが部屋に充満した。
ランドは獣人化をする。
金色の綺麗な毛並が太陽の光に反射してキラキラと光って見えた。
ランドは窓の縁に足をかけると、振り返らずに言う。
「行ってきます!」
そして、窓から外に出ると姿を消してしまった。
「あの…お母様。お母様じゃなくてお母さんって呼んでも良いかな」
ルナは静かに頷いた。
今日も良い天気。
今日は息子が帰って来たと同時に娘が出来た。
こんなに素晴らしい日があったとは…
「ありがとうランド」
ありがとうございました。この話、中途半端に終わりました。が、これから番外偏が出たり出なかったりしますが、これからもヨロシクお願いします。




