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邸内での戦い1

 フリックスとエコールはスナビエのカフェで休憩している.ウェイトレスがティーポット2つとカップを2つを盆に乗せて持ってくる.

「こちらがオリジナルブレンドティー,こちらがチェリーブレンドです」

「ありがとう」

「ご注文は以上でよろしいですか?」

「はい,ありがとう」

「どうぞごゆっくりなさってください」

 ウェイトレスは盆を縦に持ってカウンターの方へ下がっていった.

「さっきの子かわいい」

「ん,まあそうだね,いいんじゃない?」

「お前はソヴェリア以外どうでもいいといった感じだな」

「何を馬鹿なことを.あいつとは同郷の仲間というだけ」

「本当に?」

「本当だ,気持ち悪いこと言うな.俺たちの里の掟で結婚する場合は外の人と決まっている.血の近い奴は安心できても恋心は沸かない」

「あの子,彼氏いるかな?」

「さあ?それよりも…」

「ん?」

「いや,なんでもない.ちょっと神経質になりすぎた」

「魔女がバイトしててもおかしくない」

「…そうだな」

 カウンターの奥から別のウェイトレスが出てウェイトレスを奥へ呼ぶ.

「アルマちゃん,交代の時間.お疲れ」

「もうそんな時間?ではお先に,お疲れ様です」


 薄暗い部屋.渦がある水晶球がいくつも置かれている.その中央に黒い衣に身を包んだ男が座っている.紙に書かれている文字が光り声が届く.

「ドレイク,もはや城の警備は不要だ.お前も攻撃に回れ」

「了解しましたハイン様」

 黒衣の男は立ち上がり,裏魔法を解く.水晶球の中の渦が消える.城全域を覆う幻が消え,無骨な建物が姿を現す.壁の一部が消え,階段や窓が姿を現す.


 フェルケルの足元に黒い渦が生じ,中から無数のムカデが出てくる.フェルケルは振り払おうとするが,ムカデは服の隙間から内部に侵入し,噛み付き,首の上に出て,頭に上ろうとする.

「ひい…裏征!」

 フェルケルは炎を起こしてムカデを焼き払おうとするが,炎に包まれてもなお,動き続け,噛みつづける.フェルケルは暴れまわった後に頭を打って倒れる.ムカデは影も形も無く消えた.

「催眠術か…」

「違う,幻だ」

 ドレイクは右手で剣を持ち歩み寄る.

「僕の裏魔法は幻術.このオーラを目で見たものは幻に掛かる」

 フェルケルは包帯で目隠しする.

「目隠し…だと….だがそれでどうやって戦うつもりだ」

 ドレイクは剣を右手に持ち,左手の先から光の矢を飛ばす.フェルケルは自分を中心に渦状に火柱を6本内から外へ走らせる.フェルケルの右肩に光の矢が刺さり,フェルケルは一歩前に進み出て左手を伸ばす.丁度ドレイクの胸倉あたりを掴み右腕の剣で刺し貫こうとするが,肩が上がらず,左手の先から出した炎と合わせて爆発させて吹き飛ばす.剣を右手から左手に持ち替え,気配を探って火球を飛ばす.

「(そんなもので当てられると思っているのか,無駄だ.普段視界に頼っている人間が視界を封じれば,恐怖でまともに動けなくなる)」

 ドレイクは光線をフェルケルに放つ.フェルケルは熱を感じた方向へ炎の波を走らせる.ドレイクは光線を止めて避けると,全く違う方向から攻撃に掛かる.フェルケルはさっきと同様に炎の波を走らせる.ドレイクは石を拾って投げつける.石はフェルケルに近づくと焼けて小さくなり,フェルケルの肩にかする.フェルケルは動きを止めて耳に神経を集中させる.頭を下に向けて次の石をかわして,足元を確認しつつゆっくりと歩き始める.

「どうした?びびっているのか?その目隠し取ったらどうだい」

「なめるな」

 フェルケルは左手を突き出して剣を水平に持ち,人差し指を上げてその先から放射状に光線を飛ばす.

「(ピントが合ってないのか威力が下がっているぜ,ぬるま湯程度だ)」

 ドレイクは右腕で光から目を守り,左手の先に氷の塊を作り出す.フェルケルは強く踏み込んでドレイクに切りかかり,ドレイクは右手の剣で受けるが,力が足りずに弾かれる.ドレイクは回転して後退するが,フェルケルは尚も戸惑わずに踏み込んでくる.フェルケルは氷を捨て左手で剣の刃の背を押さえて,両肘を引き,右腕を前に突き出して左腕を後ろに下げて相手の剣を滑らせ,そのままフェルケルの左肩に切りつける.ドレイクが振り切った剣を戻す前にフェルケルはドレイクの腹に蹴りを入れ,間髪入れずに切り上げる.ドレイクは後ろに下がってかわすが左腕と胸に切り傷を負った.

「見えないのに近接戦か?よく考えることだな」

「お前,俺と切りあうのが怖いからそう言っているんだろ?」

「恐れているのはお前じゃないのか?深く切れなかったが,お前の両腕は正常に剣を振ることはできない.相手の動きに反応できるかどうか恐れている.違うか?」

「よく分かったよ,お前は少しでも傷つくのが怖いということが.お前は常に防御的な戦い方をする.勝機があってもそれを見逃す,なぜなら防御の構えだからだ.臆病者には攻撃は荷が重いか,目隠ししているというのに,すぐに攻めないから慣れてきたぜ」

「好きに言ってろ…」

 ドレイクは振りかぶって剣を構えてフェルケルの横から飛びかかる.フェルケルの頭の後ろの炎が目隠しのを焼き,目隠しが外れる.フェルケルはドレイクをはっきりと見て爆炎で加速した剣で切り上げてドレイクを両断する.

 腕で顔に着いた血などをふき取る.

「賭けは俺の勝ち.幻術には瞬時に発動できるほど単純ではない,少なくともこいつの使うものはそうだった」

 フェルケルは剣を仕舞って裏魔法を封じ,受けた傷をベルトで塞ぎつつ,簡易な回復を行う.治ってはいないが,出血は止まった.

「不思議なものだな,もっと痛いと思っていたのに,気が張りつめているとそれほど痛みは感じない.実は重症で急に倒れなければ…いい,が…」

 フェルケルは地面に突っ伏して倒れた.辺りから炎が消える.


「ソヴェリア・クィレンティール,水の魔術師か.遠距離攻撃ができる奴には毒針が刺さりにくいから戦いたくないな」

「……」

 ソヴェリアはシルクスの言葉に意図的なものを察知した.それが遠隔戦闘への誘導か未知の毒への過剰な警戒をさせるためなのかまでは分からない.

「裏征」

 シルクスは剣を抜いて振り払い裏魔法の封印を解く.シルクスはオーラを纏ったナイフをソヴェリアに向けて投げる.ソヴェリアは目の前に水の壁を作りナイフを包み込む.水の壁は波となってシルクスへ向かう.シルクスは飛び跳ねて波をかわして剣先からオーラを飛ばす.オーラの輪は水を裂いて地を這いソヴェリアへ向かう.ソヴェリアは左にすり足で動いてかわし,杖先から高圧水流をシルクスに向けて放つ.シルクスに当たり,シルクスは遠くへ吹き飛んで地面に叩きつけられる.

 しかし叩きつけられたのはシルクスの姿を模した泥人形でシルクスは水流の死角からソヴェリアに向かって切りかかる.ソヴェリアは杖を起こして両手で持って剣を防ぎ,剣の滑る先の手を離してかわし,振り上げようとする剣を杖で抑える.ソヴェリアはシルクスに押されて剣が上に上がっていく.シルクスは突如力を抜き,ソヴェリアは前によろける.シルクスは右足を上げてソヴェリアの腹を蹴る.ソヴェリアは後ろに倒れ,シルクスは剣を両手持ちでソヴェリアに切りかかる.ソヴェリアは杖で剣を滑らせて手を離す.体を転がしてその場から離れて起き上がり,手を伸ばして杖を引き寄せる.

 ソヴェリアは吐き気がして,両足を閉じて杖を支えにしてシルクスから目を反らさずに立つ.シルクスはソヴェリア目掛けてオーラを纏ったナイフを投げる.ソヴェリアの右腕にナイフが刺さり,ソヴェリアは足の力が抜けて滑るように地面に崩れる.地面から水の触手を出してナイフを抜いて,傷を覆う.周囲が血と水で混ざる.

 シルクスは剣を地面に刺して指先から光線をソヴェリアの頭に向けて放つ.ソヴェリアは水滴で屈折させてかわし,咳と共に血を吐きつつ半開きの目でシルクスの動きを追う.

「まだ抵抗するというのか?折角楽に死なせてやろうとしたというのに」

 シルクスはさらに距離を取り,ソヴェリアが毒で死ぬのを待つ.荒い呼吸と死人のような肌で睨みつける女性を黙って見下ろす.

「早く楽になれよ.助けが来るとでも思うのか?無理だね.もう皆死んでいる」

「うる…さい…」

「君の相方,エコールと言ったか?彼も死んだよ.…….(何だ?これでも絶望に染まって死の運命に身を委ねようとしない.本当に死ぬのか?こいつは)」

 シルクスは剣を地面に水平に持ち,左手を広げて剣の背を軽く支え,上級呪文の詠唱を始めた.剣の周囲に電気が発生し,周囲の空気は電離し始める.シルクスはソヴェリアに狙いを定めて渦巻く太い電撃を放つ.周囲は轟音に包まれ,水や血は瞬時に蒸発し,床に穴が空く.

「消し飛んだか,さて次」

 シルクスは剣を鞘に戻しつつ,周囲を見渡す.風を纏った石が高い音を出しながらシルクスの横を通り抜ける.飛んできた方向を見ると,ソヴェリアが左手に持った杖で体を支えながら,右手を胸の高さに上げて立っている.

「(動けるはずは無かった.解毒か排出をしたのか?)」

「(水に乗せて押し流したけど,無理をしすぎた.もう限界かも…)」

 ソヴェリアの目から光が消えていく.

 シルクスは剣にオーラを纏わせ,剣を振ってオーラを飛ばす.ソヴェリアは右手に風を纏ってオーラを掴んで横へ払う.

「くっ…本当にしつこいな」

 シルクスは苛立ちつつ,歩いてソヴェリアに近寄り,オーラを纏って剣を振り下ろす.ソヴェリアは剣を右手で掴んで止める.触れたオーラから毒が回り始める.シルクスは手を離して後ろに跳ぶ.ソヴェリアは顔を上げてシルクスを見る.その目には生気が戻っていた.剣から魔力を吸い取って回復し,毒に染まった水を手から地面に落とす.

「ねえ,あなたは長期戦やったことないんじゃない?」

「ははっ,不死身かお前?」

 シルクスは口を歪めながらも目は笑わずに気味悪がる.

「あと何時間戦おうか.10時間,20時間?」

「100秒だ!」

 シルクスは指先から雷撃を剣に向けて放つ.ソヴェリアは衝撃で剣を落として,次の雷撃をかわしつつ,横に飛び跳ねる.シルクスは剣を拾い上げ,オーラを纏わせ,上から振り下ろしてソヴェリアに向けてオーラを飛ばす.

「(奴の毒処理を上回る量の毒を浴びせる.次の戦いなど知るか!もう十分殺した,出し惜しみはしない!やるんだ,シルクス・シャハト!)」

 ソヴェリアは杖を突き出して水流を放つ.オーラは水に溶けつつ押されてシルクスは水に包まれて後ろの壁に全身を打ちつける.頭が割れて大量出血で死んだ.

 ソヴェリアは裏魔法を封じて柱にもたれて座り込む.周囲の魔力を吸いつつ,体力の回復を図る.

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