城内での戦い4
『
XXXは机にノートを広げて勉強している.父親がイラつきながら,対面して座って勉強を見ている.
「何でこんなこともできないんだ!本当に俺の子供か?」
XXXの父親は,机をバンと叩く.XXXはビクッと震えてペン先がノートにガリッと当たってページが破れる.
「あなたやめて.XXXは女の子なのよ」
「だから何だと言うんだ!?女は頭が悪いから仕方ないとでも言うのか!?」
「そ,そんなつもりじゃ…」
「お前は黙っていろ!お前がちゃんと躾けないから,こいつはこんないい加減になったんだ.分からなければそのままにする.嫌なことからすぐ逃げる.そんなんで大人になったときどうするつもりだ?」
「一度休憩したほうが….こんな気分じゃ上手く行かない」
「チッ,またそうやって有耶無耶に….…….仕方ない.父さんが戻ってくるまで休憩だ」
父親は上の階へ行く.
「気にしないでいいのよ.XXXはすぐにできるようになるから」
「お母さん,どうしてお父さんと結婚したの?あんな人と…」
「そんなこと言っちゃ駄目よ.お父さんは今,仕事でいい結果が出せなくてイライラしているだけ.本当はいい人なんだから」
「分からない…言っている意味が分からないよ…」
』
「ロイス,やった?」
アイカが物陰から出てくる.
「確実に殺した」
「途中からしか見てないけど,やっぱり強いね.あんなに早い相手にどう当てたの?」
「左手の気配を完全に消していた.予備動作も悟られないように上手く動かした.どれだけ早く反応できても,気配が見えないものは反応できない」
「意外と単純ね」
「強いっていうのは分かりきったことを忘れず惑わされず,忠実に実行できることだと俺は思う」
「実際にやるのは難しいでしょ?それはそうと,彼らは3人で行動していたんじゃない?フェルケルの情報が古いかもしれないけど」
「ああそうだ.1人通した」
「なら早く追わないと!」
「待て!お前じゃ蜂の巣になるだけだ.この先の道は罠が仕掛けてあるのを忘れたか?」
「ならロイス,あなたがこの奥に進んだのを倒してきてよ」
「やだよ,弱そうだったし手負いか死んでるかだろうし,ほっといても大丈夫.それよりも残った強そうな奴を殺す方がリターンが大きい」
「ハイン様,こんなこと言ってますが」
アイカはハインと通信していた.
「誰が通った?」
「会話から察するにキョウという男です.騙っている可能性も無いわけではありませんが」
「キョウか.なら放っておけ.この部屋にたどり着くことができれば私が相手をする.アルマをそちらに送る.残りの敵を倒して来い」
「了解」
アルマがテレポートして現れ,2人を連れてどこかへ行った.
ハックは燃えカスの横に転がっているライナの腕輪を見つける.
「彼女を殺したのはお前か?」
「いや,彼女は自ら死を選んだ.僕の力と意思では彼女にはついに届かなかった」
「追い込んだのはお前だな?」
「そうだ」
「ライナは私の娘のようだった.娘が家出していなくなった後,失ったものに気付かされた.そしてこの数日間に過ぎないが,私の空白を埋めてくれた」
「情けない奴…」
「殺した償いは受けて貰う」
「殺していない,彼女が死んだんだ」
「同じだ!死に追い込むのも殺すことも」
「違う,少なくとも今回は違うものだ.彼女の高貴な魂を汚すようなことは許さん」
「何を言っているんだお前は…」
「君,もしかしてこういうのが分からない?娘が家出したのはその理解の無さから来るものじゃなかったのかな?いずれ君の近くから誰も彼もが消えてしまうよ,ハハ…」
「挑発のつもりか?無駄なことを…」
「フフ…,君がどんな地位に居るか知らないが,結構いい地位だろう.でも,君が病気や怪我で動けなくなったり,才能が枯れたら,誰も助けてくれないだろうよ.君の近くに居る奴らも仕事上の付き合いにすぎないのだからな」
「ごちゃごちゃうるさい,弔い合戦とさせて貰う.裏征」
ハックは腕輪を上に上げて裏魔法の封印を解く.
「君に言わなければならないことがある.僕の能力はルール空間の創造.このオーラの範囲内であれば,強制的に僕の作ったルールに従わせることができる.ただし,ルールの説明をしなければ次の魔法の発動および攻撃ができない」
ハックは右手に魔力を集める.魔力は爆発して右腕が溶ける.
「ぐっ…」
「魔術師の標準的な量を上回る魔力は爆発が起きる空間となった」
ハックは火の玉を複数放つ.プブリーは飛び跳ねて火の玉をかわし,四方を封じられて逃げ場を失った状態での最後の1つは風を纏った剣を振って弾く.剣が触れた瞬間に大爆発を起こす.プブリーは爆風を左右に逃す.
「(相手に魔力を継ぎ足して爆発させようなどと…面白い)」
ハックは手を突き出して,爆炎の中へ雷撃を放つ.
「チッ,見えているのか.ルール2,雷の発生源は感電する」
ハックは全身が感電して倒れる.
「ルール3,この床は人体を溶かす毒となる,ただし,直接触れなければ溶けない.そしてルール1および2を解除」
プブリーは剣先からハック目掛けて雷撃を飛ばす.ハックは感電しつつ,背中に焦げ痕がつく.顔と腕の一部が溶けながらも起き上がって雷を弾くバリアを張って起き上がり,突風を起こす.プブリーは後ろに下がって避ける.
「ルール4,下にいる方の五感が消える」
「ルール5,上下の感覚が入れ替わる」
「ルール6,重力が消える」
「ルール3と4を解除」
「ルール7,重力は現在の2倍なる.終わりだ」
プブリーは左手から氷弾を飛ばす.ハックは炎を手から吹き出して氷弾を防ぐ.プブリーは剣先にオーラを乗せ,振った勢いで飛ばす.ハックは手を前でクロスさせてバリアを張る.
「ルール6解除.ルール3を再び発動」
ハックは地面に落下して叩きつけられる.反射的に上に動こうとして地面に強くぶつかる.プブリーは地面に足から降りる.
「ルール5を解除,ルール8,低い方にいる者は目に光が入らなくなる」
プブリーは剣先に魔力を押し固めてハックに放出する.次の瞬間,周囲は強い光に包まれ,プブリーの胴体は溶けて消えた.
「馬鹿な…」
プブリーは倒れたまま動かなくなる.失血死した.
裏魔法が解けて,周囲は元に戻る.ハックは戻った視界で相手を見る.
「(あの失敗作が役立つとは…コンビ組めたら無敵だったのにな…)」
ハックは威力は高いが,すぐに上に吹っ飛んで行く上,目を閉じても届く強力な光を放つので使い物にならなかった魔法を使った.ハックの研究でできた失敗作の1つである.
ハックの後頭部にナイフが突き刺さり,ハックは立つ力を失い,崩れ落ちる.ハックの後ろの柱の影にシルクスが立っている.ナイフをもう1本右手に構えて右足を後ろにして投げる構えを取っていたが,ハックが倒れたことを確認して,ナイフをしまい,腰の剣に手を掛けてハックに歩み寄る.
「(あのプブリーを倒すほどの実力者,ここで殺しておかなければ不味い)」
シルクスは剣を抜き,ハックの心臓に突き刺し回して引く抜く.ハックは一瞬血を吹き,すぐに噴出す血の量が減り,辺りが血で染まる.
シルクスは左手の人差し指と親指から風を起こして剣についた血や肉片を吹き飛ばし他後,布で拭いて鞘に戻す.
「さて,次だ」
シルクスはその場から離れて別の場所へ向かう.
シルクスはオリオンの前に現れる.
「お前,十坐か?」
「そうだ.お前達の敵」
「なら…」
「ちょっと待った.僕の能力教えてあげるよ.その方が面白いからね」
「随分と余裕だな」
「楽しむほうが実力出せるからねえ.僕の能力は10回刺したら勝ちの攻撃.このオーラを纏った攻撃を10回刺したら相手は死ぬ」
「(裏征できるほど魔力が回復していない.だが,奴の攻撃が10回当たる前に近距離必中の表魔法一撃で倒す)」
オリオンはシルクスに突っ込む.シルクスはナイフを投げ,オリオンは左腕でそれを受けたまま,走る.直後に眩暈がしてオリオンは血を吐いて倒れた.
「10回刺さないと死なないと言ったが,本当は1度刺しただけで死ぬぞ」
「くっ…騙しやがって…」
オリオンは息絶えた.
「(こいつの裏魔法は僕の天敵だった.刺さらないと意味の無い毒だから.これで僕にとっての一番の強敵は倒せた)」
シルクスはその場を離れて別の戦場へ向かった.
シルクスはフリックスの前に現れる.
「僕の能力知りたい?」
「……」
「その方が面白いから教えてやる,10回当てたら相手を殺せる攻撃.こんな風に」
シルクスは手からオーラを出してナイフに纏わせ,フリックスに投げる.フリックスは右に跳ねてそれを避ける.
「小心者かい?普通向かってくるのに」
「お前がそれを望むということは,本当の能力じゃないんだろう?」
「へえ?」
「投げる前にオーラが見えた.それは手の先にも残っていた.つまり,お前の能力はすばやく投げる力か何かだ!」
「なんだ,ばれたら仕方ない.本当の能力を隠しても仕方ない」
フリックスは両手で剣を持ち,右肘を引いて身構える.
「本当の能力は音速を超えた速さで投げること.こんな風に」
シルクスはナイフを続けざまに2本投げる.フリックスは1本を払い,もう一本はかわす.
「目が見えればかわせるけど,これはどうかな?」
シルクスは右手を上に挙げる.人差し指の先から照明弾を飛ばし,周囲を眩しく照らす.フリックスは目が眩み,左腕にナイフが刺さる.フリックスは目が回り,血を吐いて倒れた.
照明弾は時間が経ったので消え,辺りは元に戻る.シルクスは左手親指で剣の鍔を少し持ち上げる.右腕で柄を掴み,弧を描くように上に向けて剣を振る.シルクスの背後上空から飛び掛ったエコールは剣で跳ね返され,シルクスの背後地面に転がる.シルクスはエコールにナイフを投げるが,エコールの巻き起こした風に遮られ,ナイフは壁に突き刺さる.
「あらら,君とは相性が悪いんだった.バイバイ」
シルクスは空中に足場を作りつつジャンプして遠くへ逃げた.
「フリックス,大丈夫か?」
エコールは走り寄って様子を見る.顔は青ざめて,体全体が痙攣している.
「毒か…それも容易に解毒できるものではない」
エコールはナイフを抜き,ナイフを地面に突きたて,フリックスとナイフをそれぞれ中心として魔法陣を召喚する.エコールが呪文を詠唱するとフリックスから黒い液体が引きずり出され,ナイフに集まる.同時に血がフリックスの傷から内部に入る.ナイフは黒い液体で真っ黒に染まり,灰となってポロポロと崩れ去った.
「フリックス,聞こえるか?」
「ああ,大丈夫だ.もう意識もはっきりしているし,体も楽だ」
「今のは毒を抜いのと,同質量の血を体内に戻しただけだ.毒が抜けても傷ついた体はまだ治っていない.体が動けるうちに,一時撤退して傷を癒すんだ.急げば間に合う」
「…分かった.だが,一人でいい.君は奴を追いかけてくれ.君の裏魔法とは奴の裏魔法の相性が悪いようだ.いや,それすらも嘘かもしれない.しかし奴は危険だ,放置できない」
「分かった.しかし全員危険だろうに今更」
「輪を掛けて危険だ.毒の存在に気付かせないように場を運ぶ.最初は10回当てないと死なない,などと言って,1回なら大丈夫と思わせる.次は速さの強化に思わせて,やはり少しくらい当たっても大丈夫なように思わせる.しかしそれ以上に危険なのは奴が嘘つきのプロであることだ.もしかしたら顔色一つ変えず,嘘しか言わないと思わせて,本当のことを混ぜるかもしれない」
「気をつけよう.フリックスも気をつけてな」
エコールは走り去っていった.




