表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雑魚モンスターしかコピーできないハズレスキルとして追放された俺、 魔導書を読んだら“世界の前提”が見えるようになった  作者: Y.K
第58章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1028/1040

断罪宣告

「――有罪」


 その一語は、落ちた。


 光ではない。


 刃でもない。


 だが空間が、確かに歪む。


 音が、半拍遅れて響く。


 ***


 堕天使《断罪失墜者グラヴィエル》の掌から、

 光が糸のように伸びる。


 それは直線ではない。


 曲がる。


 選ぶ。


 対象を。


 ミリアが踏み込む。


 だが。


 足が沈む。


 半拍、遅れる。


 光が肩に触れた。


 ***


「……っ!」


 痛みはない。


 だが重い。


 視界の端に、

 淡い紋様が浮かぶ。


 罪状。


 ――過剰出力

 ――無謀踏破

 ――戦闘強行


 文字ではない。


 概念が、浮かぶ。


 ***


 ノウンが即座に言う。


「状態異常確認」


 一拍。


「《断罪宣告ジャッジメント・コール》」


 光が、今度はエルドへ。


 盾を構える。


 だが光は止まらない。


 盾を“通過”する。


 触れた瞬間、

 重さが増す。


 ***


 エルドの動きが鈍る。


 防御姿勢が固定される。


「……くそ」


 踏み替えが、遅れる。


 重心移動が、迷う。


 ***


 リュカが即座に分析する。


「有罪付与状態!」


「効果は!」


「被行動選択肢減少!」


 言葉が、空間で遅れる。


 その遅れが、判断をさらに削る。


 ***


 堕天使の声は、淡々としている。


「越えた者は、測られる」


 その目に怒りはない。


 憎しみもない。


 ただ、機能。


「不適合は、矯正される」


 光が今度はカイラへ伸びる。


 ***


 カイラは反射的に

 《戦況最適化オーバードライブ》を起動しようとする。


 だが。


 視界に浮かぶ概念。


 ――最適未算出

 ――判断遅延

 ――強行侵入


 演算が鈍る。


 “罪”として処理される。


「……違う」


 最適解が、出ない。


 ではなく。


 “出すことが有罪扱い”になる。


 ***


 エルフィナが前に出る。


生命線維持ライフ・ラインキープ》展開。


 だが光が絡む。


 ――過干渉

 ――過接続

 ――依存


 繋ぐ行為が、

 裁かれる。


「……!」


 術式が揺れる。


 深く繋げない。


 ***


 レインが理解する。


 これはダメージではない。


 “選択肢の削減”。


 行動を、正誤で縛る。


 迷いを罪とする。


 ノーリトリートと、真逆。


 ***


 ミリアが歯を食いしばる。


「……重い」


 剣が、ほんのわずかに遅れる。


 踏み込みが、躊躇する。


 罪状が増える。


 ――強行突破

 ――危険行為


 動くほど、

 裁定が強まる。


 ***


 堕天使が静かに言う。


「未確定は、罪」


 光が再び広がる。


 今度は、レインへ。


 ***


 視界が歪む。


 概念が浮かぶ。


 ――裁定回避

 ――選択拒否

 ――非決定


 胸の奥が重くなる。


 呼吸が浅くなる。


 “決めない”ことが、

 有罪扱いされる。


 ***


 ピコが、小さく跳ねる。


「……ちがう」


 光が、ピコに触れる。


 だが。


 反応がない。


 罪状が浮かばない。


 堕天使の目が、

 わずかに揺れる。


「……未分類」


 その言葉が、遅れて響く。


 初めての遅れ。


 ***


 レインは歯を食いしばる。


 重い。


 理解が、重い。


 だが。


 裁定は、宣告だ。


 まだ“執行”ではない。


「全員、下がるな」


 声が、遅れて響く。


 それでも言う。


「動きを止めるな」


 有罪状態でも、

 止まれば確定する。


 動き続けるしかない。


 ***


 堕天使の掌が再び閉じる。


 光が、より濃くなる。


「宣告は、完了した」


 一拍。


「次は、位階を固定する」


 空間の重力が、

 わずかに沈む。


 第一フェーズは、

 まだ始まったばかりだ。


「――位階固定」


 その宣告は、低く落ちた。


 音は遅れる。


 だが効果は、遅れない。


 ***


 空間の重力が、沈む。


 床がわずかに黒く濁る。


 鏡面だった黒曜石が、

 波打つ。


 堕天使《断罪失墜者グラヴィエル》の背後、

 砕けた光輪がわずかに浮き上がる。


「現在位階を、保持せよ」


 それは命令ではない。


 “決定”。


 ***


 ミリアが踏み込む。


 出力は出る。


 だが次の瞬間。


 止まる。


 足が。


 意志ではない。


 空間が、決める。


 “今の出力”を。


 ***


 断門獣戦後の遅延。


 わずかに鈍った判断。


 微妙に戻りきらない踏み込み。


 その状態が――


 固定される。


 ***


「……っ!」


 剣を振り抜く。


 だが戻りが遅い。


 補正が効かない。


 “今の自分”が、上限になる。


 ***


 エルドが盾を押し出す。


 だが足運びが重い。


 回復前の出力が、

 そのまま固定される。


「動けるが……上がらん」


 踏み替えが、

 元の速度に戻らない。


 ***


 カイラが目を見開く。


戦況最適化オーバードライブ》を

 再度起動する。


 演算が走る。


 だが。


 途中で止まる。


 “現在位階”が固定される。


 最適化前の状態が、

 最大値として固定。


「……上がらない」


 震える声ではない。


 確認だ。


 それが、

 恐怖を深くする。


 ***


 リュカが分析を続ける。


「出力上昇不可!」


「現状ステータス維持!」


 言葉が遅れる。


 判断も遅れる。


 上げられない。


 補えない。


 ***


 エルフィナが《生命線維持ライフ・ラインキープ》を

 強めようとする。


 だが術式が弾かれる。


 深く繋げない。


 固定された出力以上、

 伸ばせない。


「……増幅、不可」


 癒せないわけではない。


 だが上げられない。


 ***


 レインが理解する。


 これは強制デバフではない。


 “現状肯定”。


 お前は今、その程度だと。


 裁定が、固定する。


 ***


 堕天使が静かに言う。


「不完全は、ここまで」


 片翼がわずかに開く。


 光が、床へ落ちる。


 重力が、さらに不均一になる。


 迷いがある者ほど、

 足が沈む。


 ***


 ミリアの足が、

 わずかに沈む。


 躊躇はない。


 だが焦りがある。


 それが“罪状”として重くなる。


 ***


 エルドが低く唸る。


「……上がらんな」


 だが後退はしない。


 固定された出力で、

 立つしかない。


 ***


 カイラの額に汗が滲む。


 最適解が出ない。


 ではなく。


 “出せない”。


 上げられない。


 補正できない。


 それは彼女にとって、

 何よりも恐怖だった。


 ***


 リュカの計算も鈍る。


 数値が増えない。


 誤差修正が効かない。


 固定された誤差。


 固定された遅延。


 固定された不完全。


 ***


 ピコがぽよ、と跳ねる。


 空間は変わらない。


 沈まない。


 重くならない。


 堕天使の目が、

 再び揺れる。


「……位階未定義」


 ピコは、

 “現在値”を持たない。


 だから固定できない。


 ***


 レインは、歯を食いしばる。


 《完全模写理解フル・アナライズ・コピー》を

 深める。


 だが理解が重い。


 固定された自分を、

 理解することになる。


 伸びない。


 上がらない。


 それでも。


「止まるな」


 声が遅れて響く。


「今の出力で、削れ」


 完全でなくていい。


 最高でなくていい。


 “今のまま”で戦う。


 それしかない。


 ***


 堕天使が両翼をわずかに広げる。


 片翼は崩れている。


 だがもう片翼は、完全。


「位階、確定」


 空間の重力が、再び沈む。


 第一フェーズは、

 完成した。


 ノーリトリートは、

 不完全なまま固定された。


 重い。


 上がらない。


 伸びない。


 それでも――止まれない。


 ***


 ミリアが踏み込む。


 固定された出力。


 遅延した判断。


 それでも剣を振る。


「……っ!」


 光が刃に触れる。


 火花ではない。


 概念の摩擦。


 “有罪”と“抵抗”がぶつかる。


 剣は通る。


 だが浅い。


 深く入らない。


 位階が、そこまでだから。


 ***


 堕天使《断罪失墜者グラヴィエル》は動かない。


 避けない。


 ただ受ける。


「現在位階、妥当」


 評価。


 それだけ。


 ***


 エルドが踏み出す。


 盾を打ち付ける。


 衝撃は届く。


 だが押し切れない。


 押す力も、戻す力も、

 固定された範囲を越えない。


「……押せん」


 それでも退かない。


 固定された強さで、

 前に立つ。


 ***


 カイラが強引に

 《戦況最適化オーバードライブ》を

 回す。


 負荷が走る。


 視界が焼ける。


 だが上がらない。


 “今の彼女”が最大。


「……違う」


 最適解が出ないのではない。


 “出すことを許されない”。


 それが分かる。


 ***


 エルフィナが繋ぐ。


 浅く。


 壊れない程度に。


 だが深く繋げない。


 裁定が、過干渉と判断する。


「……なら」


 無理をしない。


 固定された出力で、

 支える。


 ***


 リュカが叫ぶ。


「固定は“現在値”依存!」


 息が荒い。


「上がらないが……下がりもしない!」


 一瞬。


 全員が理解する。


 削られない。


 これ以上は。


 ***


 レインの目が開く。


 《完全模写理解フル・アナライズ・コピー》が

 裁定構造をなぞる。


 位階固定は、

 “現在値の固定”。


 増えない。


 だが減らない。


 その瞬間。


「……削られるな」


 小さく呟く。


 有罪は重い。


 だが即死ではない。


 固定されたまま、

 持久戦に持ち込める。


 ***


 堕天使が片翼を広げる。


 光が床を走る。


 重力が、さらに沈む。


「不完全は、適切に留める」


 押しつぶすのではない。


 “上げさせない”。


 それが裁定。


 ***


 その時。


 ピコが中央へ跳ねる。


 ぽよ、と。


 重力に沈まない。


 光が絡まない。


「……おまえ」


 堕天使の声が、わずかに揺れる。


「……きめすぎ」


 ピコは言う。


 単純な言葉。


「いま、きめる?」


 一拍。


「まだ、みてない」


 その言葉で、

 空間がほんの僅かに揺れる。


 裁定は“確定”を前提とする。


 未確定は罪。


 だが。


 “見ていない”はどうだ。


 ***


 レインが理解する。


 裁定は観測を必要とする。


 観測なき確定は、

 矛盾を孕む。


 ピコは“未定義”。


 未分類。


 未確定。


 だから固定できない。


 ***


「全員」


 レインが言う。


「“決めるな”」


 一瞬、戸惑う。


「動き続けろ。評価させるな」


 裁定は確定を求める。


 ならば揺らす。


 未確定を維持する。


 ***


 ミリアが歯を食いしばる。


「……曖昧で戦えって?」


「いつも通りだ」


 短い返答。


 それで十分。


 ***


 エルドが盾を構え直す。


 固定された出力で、

 “揺れる”。


 リュカが計算を変える。


 最適ではなく、

 変動を維持する。


 カイラが強引に

 演算を不安定に回す。


 固定に対抗する、

 “不確定”。


 ***


 堕天使の目が細まる。


 光が、わずかに乱れる。


「……未整列」


 裁定が揺れる。


 ほんのわずか。


 だが確かに。


 ***


 レインは深く息を吸う。


 第一フェーズ。


 断罪宣告。


 位階固定。


 完成された裁定構造。


 だが。


 揺らせる。


 未確定は、罪ではない。


 “可能性”だ。


 ***


 堕天使が、両翼を大きく広げる。


 砕けた光輪が浮上する。


 光が六方向へ走る。


「――第二裁定へ移行する」


 空間が、変わる。


 重力が傾く。


 柱が浮き上がる。


 法廷が、形成される。


 第一フェーズは終わる。


 次は――


 裁定場。


 被告席だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ