第18話 第二回撲滅作戦会議
バレスティアの一件から三日後ゼノは寝ぼけ眼をこすりつつ「太陽の石」でソーセージを音を立てて食べていた。
「ソーセージっていつ食べてもうまいなあ~」
美味しく食べていたところ女将さんが後ろからゼノの背中をバンと叩いた。ゼノは驚いてソーセージが喉に詰まりそうになった。
「ゼノさん!ミキという子が来ているわよ!早く食べちゃいな!」
「女将さん・・・」
ゼノが支度をして宿の玄関に行くと技師の制服を着た魔眼の少女が立っていた。ミキが眼鏡を上げてどこか不満げに感じ取れるような顔をしている。
「ゼノさん・・・おはようございます!今日は会議ですよね?」
ゼノはトラブル防止の為に宿の場所をギルマスとその秘書にしか伝えていない。どちらか・・・いや秘書が漏らしたに違いないとゼノは頭を抱えてしまった。
「あの耳長め・・・あと覚えておけよ・・・」
女性陣にせっつかれたゼノは急ぎ足でギルド本部へ向かった。ゼノは流れるように酒場に行ことしたがミキがその手を引いて待合エリアに座らせた。彼女は暗号化された魔法紙と暗号を解読するための虫メガネを差し出した。
「これは・・・?」
「今日の会議資料です。目を通してください。」
「なんか・・・俺に対してあたり強くない?」
「秘書さんからいろいろ聞きました!ゼノさん会議開始ギリギリに来るし積極的なことしないし《《バディ》》のあなたがなんとかしてくださいってお願いされました!」
ゼノはこの前の遺跡のことを思い出していた。ミキが人質に取られたとき彼女の体すれすれで攻撃したのがそんなにやばかったのだろうかあの時は帰り道謝ったはずと思っているうちに会議の時間が差し迫っていた。
「ゼノさん会議室に行きますよ!」
会議室にはいつものように金級パーティーのリーダーとサブリーダーが席に座っていた。彼らはいつもより早く来ているゼノと隣の技師の少女に注目がいった。
「あら~あなたがお供連れて会議に遅刻しないの久しぶりにみたわ~」
「ようお嬢ちゃん!白金との調査大変だろ?」
ミキはにっこりとした作り笑いのような笑顔を浮かべて隣にいるゼノの腕を掴んで
「はい!とっても刺激的でした!命がいくつあっても足りないぐらいでした!」
(うわ・・・怒ってる?アリアとかに相談しても彼女の肩持ちそうだな・・・)
そうこうしているうちにベルが鳴りギルマスとその秘書が入ってきた。談笑していたものは静かになり、皆の注目がギルマスたちに集められた。
「皆の者、忙しいところ集まってくれて感謝する。今日は違法魔道具の撲滅作戦と定期報告を行いたいと思う。」
各々の金級パーティーが違法魔道具を販売している武装店、魔道具店の摘発に次々と成果を報告していった。特に「銀の天秤」は騎士団と連携しているためか製造元も一つ潰したのだ。
一方ゼノはミキと二人きりというあたり草の根程度の活躍ぐらいしか報じ国出来なかった。
「ゼノさん、今回だけでもメンバー雇いましょうよ白金の名前が泣きますよ。」
「レミスの件もあるだろ。」
「ミレーさんに頼むのはどうですか?ゼノさんの知り合いっぽかったですけど・・・」
ゼノは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべて懐から一枚の紙を取り出した。
「ギルマス。これは俺が信頼置ける情報屋から仕入れたんだが違法魔道具の製造学術院の人間が関わっている可能性が高い。まだ確実な証拠はないがな。」
ゼノの発言に一同はどよめいた。学術院は魔法の研究機関でもあり、違法魔道具の調査と術漬けの患者の治療などギルドと今回の件で密接に関わっているのだ。
「まってください!ゼノさん!学術院が今回の騒動に関わっているとでもいうんですか?」
銀髪の「銀の天秤」の副団長が声を荒げる。ゼノは耳をふさぐふりをしながら距離を取る仕草をした。
「その件ならバレスティア遺跡の件のあと俺が調査を頼んだ。今頃潜入しているから連絡はとれねえが・・・」
ゼノの懐から通信用の魔道具が鳴る音がした。ゼノは会議中にもかかわらず魔道具を机に置いて起動した。一同が見守る中魔道具からミキにとっては聞いたことのある声が聞こえた。
「ヤッホーゼノ。今会議中だっけ?どうせ報告のネタが尽きているんだろうけどこの私が情報提供してあげるからちゃんと聞いてね。結論から言うと学術院はクロ。魔術開発室に潜入して魔道具を売り飛ばし先とそれを仲介する手下たちのリスト手に入れたから魔法紙用意して準備してね。」
ゼノはすぐさまカバンから魔法紙を用意すると魔道具から文字が転写されていく。そこに刻まれておったのは
「再開発した身体強化魔法の副作用」
「依存魔法の快楽性の調整について」
「選別した人間種のリスト化」
「当魔道具及び防具と武器の卸売り先の変更」
「まだまだ掘れるところあるけど証拠が確実なのはこれだけだから先に送っておいたからねーじゃ後で金貨十五枚支払いいつものところでお願いね!」
通信が終わった時一同は思ってもなかった衝撃の事実に言葉を失っていた。特に先ほどゼノに食って掛かった副団長の彼女は魔法紙の内容を信じられない顔で眺めていた。
「彼女・・・だっけここまで調べて大丈夫なのかい?まさか学術院が関わっているだなんて・・・」
「まあ安心してくださいギルマス。彼女逃げ足だけは速いんで。どうします?学術院にカチコミかけます?」
「ダメだ・・・あそこには君と同じ白金級の『法の女王』がいるんだ。もし戦ったら首都での被害が計り知れない。」
「騎士団に通報してもあいつら根回ししているから証拠は消すだろうよ。」
「ゼノ君魔法紙のコピーをくれないか?この件はいったん私が整理してまた後日作戦を立てる。今日のことは皆言うまでもないがくれぐれも他言無用だぞ。」
ギルマスの暗い表情で会議はお開きになった。ゼノはミキの方を見ていると今朝のような覇気がなかった。まさか自分の所属している組織が悪事に手を染めているとは受け入れがたいのだろう。ゼノは力なく歩いている彼女の手を強く握り酒場に連れていった。ゼノは彼女を座らせると
「ほら好きなの頼め。今日は奢ってやる。」
ミキはまだ俯いたままだった。ゼノは勝手にステーキとジャガイモのスープを頼み、自分はいつもの安いジェノベーゼパスタを頼んだ。
ミキの前に大ぶりのステーキ肉と具だくさんのジャガイモのスープ、そしてキンキンに冷えたビールが出されていった。
「自分の職場が違法行為に手染めてんのは信じたくねえのはわかる。この前の遺跡の件もお前の確認を取らずにあんな事してしまったのも悪かったと思っている。こんなことに気づけなかったことやちゃんと慰めてやれないのも許してくれとは言わないから今は温かいものでも食べてくれないか。」
ゼノは優しい語り口調でミキに話す。ミキは最初に戸惑ったものの一口スープを飲むとぽろぽろと涙がこぼれた。スプーンを置いてナイフとフォークを持って何も言わずにステーキをガツガツと食べ始めた。
ゼノは何も言わずに彼女を見守った。
食べ終えた彼女はカフェオレをすすりながらゼノに質問した。
「ゼノさんは自分がいた組織が真っ黒なことをして耐えられるんですか?」
「そういう場面は厭というほど見てきた。でも自分は罰を受ける覚悟はできている。関わったならなおさらだ。」
「ゼノさんにも後ろ暗いことあるんですね。」
「当たり前だ。お前の倍は生きていると思った方がいい。」
「じゃあゼノさん。バディ組んでいる間でいいので約束してください。私のことは雑に扱ってもいいので必ず助けてください。あと今朝はひどいことしてごめんなさい。」
「約束する。今朝のことは気にするな。よろしくなミキ。」
飲み終えた二人は違法魔道具の調査をするためにギルドを出たのだった。




