第14話 新たな出会い
「太陽の石」でゼノは新聞を読んていた。新聞には何処で魔獣の被害が出たとかこの場所で何があったかを知れるいい情報媒体だ。宿に備え付けられている新聞を読みながらゼノは朝ごはんのホットドッグを食べていた。その様子を女将さんは後ろから軽くはたかれてしまったが。
装備を整えゼノはいつもの通り冒険者ギルドへ足を運ぶ。街の樹は青々しく生い茂り春が別れを告げるような気がした。ギルドに着くとなにやら学術院の制服を着た若者たちがギルドに入っていく。
ゼノはそんな若者たちから気配を消しながらギルドに入っていくと朝からギルドは大盛況だった。アリアとレーナは書類仕事と受付に手一杯で話しかける暇がなかった。
いつも通り酒場の隅の席で煙草を一服していると受付の方からあの秘書の声がゼノのいるところまで響いてきた。
「学術院の皆さま!ようこそおいでくださいました!違法魔道具撲滅のため我ら冒険者ギルドと学術院は協立関係を結びました!学術院調査隊はおのおの冒険者パーティーに臨時加入し魔道具の調査に同行してください!」
それを聞いてたゼノが椅子から転げ落ちた。出された酒を一気に飲み干すと帰っていく秘書を捕まえて問い詰めた!
「おい!聞いてねえぞ!この件ギルドが何とかするって話じゃなかったのか?」
「ああ、ゼノさん。おはようございます。この件なんですが学術院と協力していくことになりましてゼノさんの方にも隊員が来るかと思いますね。」
「俺はガキ共の面倒を見られねえぞ!」
「それについてはご安心ください。あそこにいる大半は他の金級パーティーや白金級パーティーに加入することとなっております。間違ってもゼノさんに子守をさせるわけではないですよ。」
「俺聞いてない・・・もしかして“嘆きの迷宮”に行ったときに決まってた?」
秘書はバツの悪そうな顔をしてそっぽを向いた。どうやら正解と悟ったらしい。
秘書は何か思い浮かんだ顔をして学生たちの中をかき分けていってあるおさげの女の子を連れてきた。
「誰だそいつ?もしかして・・・」
「はい!この子はミキちゃん。今日からあなたの臨時バディですよ!では私はこれで!」
秘書は逃げるように事務室へ行ってしまった。ゼノは置いてかれた彼女を見る。
年齢は十代後半。どこか特徴的な瞳に丸い瓶底眼鏡をしている見た感じ普通の女学生だ。ミキと呼ばれた彼女はゼノの方へ体を向き丁寧に挨拶をしてくれた。
「はじめまして!私ミキといいます。王立学術院で魔道具製作をしている技師でございます。しばらくの間よろしくお願いします!」
(見た感じ普通の女の子に見えるがあの目・・・魔力でも入っているのか・・・いやそれよりも礼儀正しそうなのでよかった。どこぞのノンデリ子爵令嬢タイプじゃなくてよかった。)
とりあえずミキを酒場兼待合所に連れてきた。隅の席に座らせるとゼノは軽い自己紹介をした。
「あー俺はゼノだ。この際俺の等級については何も言わないでくれ。とりあえず俺はお前の実力を知りたい。お前がどのスキルを持っているかどこまで体力があるかそれを知らなければいけないからな。」
ゼノは酒場のマスターからコーヒーを貰い彼女に差し出した。
「それ飲み終わったらラント平原に行くぞ。実力を見せてもらう。」
彼女は少し考えながらコーヒーに口をつけた。その時彼女の瞳がわずかに宝石のように輝いた。
二人はラント平原につくと互いの荷物を広げた。ゼノが刀を持ってミキに
「書類では既にわかっているかと思うがお前のスキルを見せてもらう。それが終わったら俺のも見せてやる。」
ミキは眼鏡を少しずらし、何か気が進まない表情を浮かべていたが宝石の目はゼノを真っ直ぐ見つめた。その瞬間彼女の目は妖しく光り、ゼノを捕らえた。見つめられたゼノは立ち眩みをしたが振り切って大丈夫な姿を見せた。
「生物の神経に直接影響を及ぼす魔眼、それがお前のスキルか、なかなかの力だ。
一日にどれぐらい使える?」
「四回ほどです。術式調べるのに魔力を使うので実質三回です。あの・・・ゼノさんは私の目をみて何も思わないんですか?」
「いいや、俺は生まれからして過酷だったからな。お前さんほどではないが人の外見をとやかく言える立場ではないからな。」
ゼノは自分の闇がでている顔をそっと撫でる。思い出されるは凄惨で過酷だったがそれでも一条の光があった過去を振り返る。
ゼノはゆっくりと刀を人のいない方へ向け光を纏わせた。刀を構え、斬撃を放つ。
光の斬撃は遠くの岩を紙のように簡単に斬ってしまった。
「これが光魔法だ。学術院にも光を使える奴はいるだろうけど、俺は大体こうして攻撃につかっている。一応応急措置程度だが光の治癒もできる。後は弾丸にして撃ったりする程度だな。」
ゼノは刀を高く掲げた。ゼノの体からは闇が流れ出し刀に纏わりつくように収束した。初めて見る闇にミキは戸惑った。
「これが闇魔法だ。基本防御や捕縛に使う。光と同じく治癒さらにバフやデバフ、攪乱に使う。いわば補助用の魔法だな。」
一通り技を見せ終えたゼノはカバンからポーションの瓶をミキに投げた。ゼノはミキから少し離れて
「ミキ、これからは基本俺が戦ってお前が解析に回るわけだがダンジョン内だと思いもよらないことが起きる。その時にはお前も前線でなくとも支援に回ってほしいからとりあえず正確にそのポーションを俺に向かって投げてほしい。」
ミキはとりあえず適当に投げてみたがゼノには届かず草むらに落ちてしまいゼノから「やり直し」と出てしまった。
「俺が万が一倒れたらお前はただ魔獣に喰われるか、逃げるしかできんのだぞ。お前の生存率を上げるためだからちゃんとやれ。」
ミキは今度はちゃんとゼノに届くように投げた。ゼノはさらにミキから離れてポーションを投げた。それを繰り返すこと一時間、やっとゼノからポーション投げの訓練を終えた。その頃には太陽は真上に上っており二人はお昼ご飯を食べることとなった。
「わあ、ゼノさん。お弁当かわいいですね!」
「宿の女将さんが厚意で作ってくれているからな。ありがたく食べねば。」
ゼノのお弁当は東洋のコメを煮炊きし蒸したものを丸めて「オニギリ」という形にしたものが三つ弁当箱に敷き詰められていた。コメには塩気が効いており、そのまま食べてもあまくて美味しいが食べ進めると東洋の漬物「ウメボシ」が顔をのぞかせる。
慣れない指導で疲れた身体を癒してくれる。オニギリのほかにはひき肉を丸めたミートボールに薄焼き卵を丸めた卵焼きにアスパラを湯がいたサラダまでついており満足感が高かった。
一方ミキのお弁当はライ麦パンにハムと卵のサラダが挟まれた簡素だがおいしそうなサンドイッチと熱魔法で温められたジャガイモのコンソメスープを食した。
午後はポーション投げから変わってゼノが考えた生存率を上げる訓練を始めた。最初にミキの体力をつけるために走り込みを行った。ミキは駆け出しとはいえ体力使う技師の仕事をやっているがゼノ的にはまだまだらしく、彼女がへとへとになるまで走り込みを続けさせた。
ゼノは疲れ切ったミキにポーションを渡し再び投げの訓練を再開した。あまりにもしんどい訓練に弱音を吐きそうになったがそのたびにゼノが
「ダンジョンはもっときついぞ。俺についていくにはまだまだだ。明日は実践込みで訓練するぞ。」
「そ・・・そんな・・・勘弁・・・」
日が落ちて黄昏色に染まった頃二人は冒険者ギルドに帰ってきた。ミキは併設された酒場で冷えたビールを飲んで体力を回復していたところにゼノがクエストの紙を持ってきてやってきた。
「おっビールかいいな。とりあえず明日は調査も兼ねて簡単なダンジョン探索やってみるか!」
どこか明るい表情をしたゼノにミキは聞こえないふりをしてビールを思いっきり喉に流し込んだのだった。




