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第11話 嘆きの迷宮Ⅱ

 彼ら一行は迷宮を進み始めた。迷宮と名付けられるだけとあって道は複雑に入り組んでおり、道中で虫型のモンスターやアンデッドと遭遇し応戦してきた。迷路を抜けた一行はややひらけた場所にたどり着きモンスターよけのお香を焚き彼はバッグから食器を簡易式の調理器具を取り出した。


彼はまな板で肉を切り鍋に入れて軽く焼いた後事前に斬っておいた野菜を投入し水を張る。沸いてきたらルゥを入れ溶かしこんでいく。とろみがついたら皿に盛りつけてパンと一緒に差し出していく。スパイスのいい香りに一同緊張の糸がほぐれる。


「できたよ。冷めないうちに食べよう。」


斥候が一足先にスプーンですくってスープを口に入れる。口にスパイスの辛さとルゥのまろやかさがマッチして食べる手が速くなる。


「うまいっす!やっぱちお前の作る料理は最高っす!私の専属シェフになってもいいっすよ」


「ははは言い過ぎだよ。でも喜んでくれて売れしかったよ。」


「ルゥなんて高いものよく買ったな。でも食べると力が湧きあがるしここにぴったりの料理だな。」


彼らの喜ぶ顔を見て彼は再び鍋に火をかける。バッグから缶詰を取り出した。缶を開けると中には小豆の煮たものが入っておりそれを鍋に入れた。


「何を作るんだ?」


リーダーの問いに彼は口に指をあてて焦げないように調理していく。そうして出来上がったのが餅ナシのお汁粉だった。


「うわあ~いい匂い。これ食べられるの?」


「見たことのない料理だな・・・異国の物か?」


「これはお汁粉っていうんだ。甘くておいしいよ。」


リーダーがおそるおそるスプーンで口にしてみる。するとぱああっと顔が明るくなって一口もう一口と口に運び続けた。仲間もそれに続けて口にしてみる。


「こ・・・これはまめなのにこんな甘さの物ははじめてっす。」


「私もいろんな豆を食べてきたがこの“小豆”というものは初めて食べるぞ。故郷の皆にも伝えたいものだな。」


「こんなおいしいものがあるだなんてお前は本当に物知りだな。次の冒険もいやこれからも頼りにしているぞ。」


 腹ごしらえを終えた一行は次の階層へ足を進めた。しばらく道なりに進んでいると三つに分かれた洞穴が見つかった。


「ここはどこを行くべきか・・・一つずつ調べるのにはリスクがあるな・・・」


「ここは僕に任せてください。魔道具で調べてみようと思います。」


彼は魔法のコンパスをかざす。すると真ん中の穴から異常を示す反応を見せたのだ。次に右隣はわずかな反応を示し、最後に左端を調べると何の反応も示さなかった。その結果にリーダーは悩んだ。安定と取るなら左、功績を取るならそのほかを行くこと。リーダーは皆に投票を求めた。


「これより先はみんなの意見を聞きたい!皆はどこの穴を行くべきなのか!」


斥候が手を上げる。


「ここは功績を求めて真ん中をとるっす!」


剣士が続けて手を上げる。


「ここは安定を求めて左へ行くのがいいと思う。これから最下層のボスへ行くのだから体力は温存した方がいいと思う。」


彼は少し悩んだが意を決して発言をした。


「安定を取るなら左一択だけど僕たちは昇級がかかってる。ここはリスクを背負って真ん中を行く。」


「なるほど真ん中が多いな・・・よしとりあえず真ん中を行くが危険と感じたら引き返してすぐ左へ行くにしよう。」


一行は慎重な足取りで真ん中の洞穴を進んでいった。斥候が松明に火をつけ進んでいく。洞穴の中はいやというほど湿っており、予想していたほどモンスターがいなかった。中間ほど進んだところだった。突然足元が光出し彼が防御魔法を展開しようとした瞬間視界が歪んで地面に倒れ込んでしまった。彼の目に仲間たちが倒れ込んでいく姿が見えた。


(くそっ・・・麻痺の状態異常か・・・ポーション使おうにも手が痺れてて動けない・・・僕のせいだ・・・)


動けない一行の前に夥しい数の子蜘蛛と羊くらいの大きさの大蜘蛛がやってきた。


「久方ぶりの人間あの方もさぞお喜びになりましょう。子供たちよつまみ食いはしてはなりませんよ。玉座に通す前に下ごしらえをしなければなりませんな。」


魔族の調理室みたいなところに通された彼らは石のベッドに一人ずつ寝かされた。


大蜘蛛は斥候の顔を見て体から装備を外し衣服をはぎ取っていった。


「この娘はあまり顔がよろしくありませんので顔を溶かしておきましょう。装備品はコレクションルームに入れておきなさい。新鮮なお肉は肌艶もいい。筋肉も引き締まっている。髪の毛は邪魔なので綺麗にするために剃っておきましょう。」


斥候の顔を酸で溶かす。斥候はあまりの激痛に悲鳴を上げる。暴れる彼女を子蜘蛛たちが糸を吐き押さえつけていく。さらに剃刀でブラウンのショートヘアを剃っていった。最後に首に大蜘蛛の毒液が注入され、彼女は動かなくなっていった。


大蜘蛛は次に剣士のところへ向かおうとしたが彼女は口を開いて抗議した。


「やめて!こ・・・来ないで!」


大蜘蛛は無情にも彼女の装備を一つずつ外し豊かな裸体をあらわにした。剣士は顔を焼かれなかったものの喉に酸を流し込まれ、叫び声が消えてしまった。


そんな様子を見ていたリーダーと彼は動けない体でその様子を見つめることしかできなかった。男二人は強めに麻痺をかけられ首を動かすどころか瞼も十分に動かすことが出来なかった。


「さて女の方はあらかた処理は終わりましたが男の方はどうしましょうね?」


大蜘蛛は舐め回すように複眼で二人を見つめる。すると悩むそぶりを見せて、


「一人はあの方の好みではありませんが精力もありそうでこのまま献上するか、


もう一人の方は好みの顔をなさっているので裸にして洗脳するのがよろしいでしょうな。」


大蜘蛛は子蜘蛛に指示を出し、男たちの装備を奪っていく。一匹の子蜘蛛が彼の違法魔道具を手にし、大蜘蛛に差し出した。彼は麻痺した体で取り返そうとしたがその手は届かず蜘蛛の糸によって防がれてしまった。そして彼の首筋に毒液が注入されそのまま意識を失ってしまった。


彼が目を覚ました時麻痺は解けていてあたりを見回すと先ほどの料理室ではなく貴族の食卓のような場所にきていて自分は奥にあるベッドの上に座っていた。


彼が裸のまま脱出を試みようとすると近くから聞きなれない女性の声がしてきた。


「あら~だめじゃない。勝手に行っちゃあ。あなたはわらわのものじゃというのに。」


声の方を向くとそこには先ほどの大蜘蛛より一回りデカい体に女の人間の上半身がついている怪物が現れたのだ。彼は彼女を見て一目でこのアラクネが迷宮の主であることを察した。アラクネは彼を抱き寄せ甘い声で囁いた。


「お主らよくぞこの迷宮に来てくれたものだ。ご馳走を用意してある。わらわと心ゆくまで楽しもうぞ。」


彼は魔道具の禁断症状と迫りくる恐怖と死の感覚に頭が回らなくなってきた。アラクネは手下であろう大蜘蛛に合図を送った。大蜘蛛は高らかに言葉を発した。


「アラクネ様に献上いたしますはエルフと人間の盛り合わせでございます!」


子蜘蛛たちが大きなワゴンを器用に運んできた。その料理にの内容に彼はショックと絶望へ突き落す衝撃がほとばしったのである。


皿の上には仲間の首が載せらせていて隣に大きな深皿に手足や胴体がバラバラにされて血にあふれていた。それが三人分三セット分並んでいた。その光景に彼は吐き気がしてしまった。吐くのを我慢してアラクネを睨んだ。アラクネが食卓に手を伸ばし血の入ったグラスを口に着けた。恍惚な表情をしたアラクネは仲間の肉片に手を伸ばし、彼に差し出した。


「はい。これ食べて精気を養いましょ。あなたに合うように一口大に切ってもらったわ。こんな珍味を用意してくれるなんてあなた最高だわ。」


彼は恐怖のあまり彼女に従うしかなかった。一口食べれば脂肪の味と筋肉の筋の感触と血の味が混ざって吐きそうになりつつも彼女の機嫌を損ねないように仲間の肉を食べ続けた。その間にもアラクネは大きな口を開けて肉塊を放り込んでいく。


その時上の方で何か揺れる音がした。楽しいムードを壊されたアラクネは大蜘蛛に


「上の方で邪魔な奴が入ってきたみたいだからそいつは殺しといて。肉は子蜘蛛ちゃんたちに食べさせて。」


と伝えた。大蜘蛛が部屋を出ると最悪の宴が再開したがしばらくすると部屋の扉が何者かに蹴破られた。驚きつつも警戒態勢を取るアラクネの前に立ちふさがったのは


ゼノだった。

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