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第1話『渡りの白金』がやってきた!

ギルドには薬草摘みのCランクの仕事からトラップひしめくダンジョン最深部攻略のSランクの仕事がある。Sランクの仕事を請け負うのはギルドが認めた等級青銅、銅、銀、黒鉄、金、そして最高クラスの白金がある。魔法剣士ゼノは白金級にも関わらず、何処のパーティーにも属さずにソロでやってきた。そんな彼をとりまくお話

 とある日の早朝、冒険者ギルドの一角で受付嬢たちが集まっていた。


彼女たちの中心にいたのはまだ十代後半の金髪の短くカットされた少女だった。


「本日からこちらで働くことになりました。アリアです!精一杯頑張りますのでご指導のほどよろしくお願いします!」


彼女の元気な声にこたえて受付嬢から拍手が起こった。そこからアリアという少女は先輩のレーナに付き添われ、初仕事をすることとなった。


 やがて始業のベルが鳴り、受付カウンターには朝から多くの冒険者が依頼を受けっとていく。その依頼を処理していくのがギルド受付嬢の仕事だった。


中には読み書きが不自由な者、依頼の仕事で利き腕を無くし字が満足に書けない者の代筆までも請け負うのだ。


慣れない仕事にまだ午前中なのに疲れ切ってしまった。


 時計の針が十時を回ったころある男が一人でドアを開けた。


それを見たレーナが事務処理しているアリアに声をかける。


「ねえ、アリアちゃん。あの方の受付一人でやってみなさい。大丈夫私が傍にいるから。」


「わ・・・私にできるのでしょうか?」


「何言ってんの。あなたには早く一人前になってもらわなきゃ。実践実践!」


レーナは書いていた書類を先輩に取り上げられ、カウンターへ移動させられた。


その間も男は静かに立ったままだった。


アリアはマニュアルを思い出しながら男に声をかけた。


「おはようございます!こちら冒険者ギルドです!横の看板から受けたい依頼をお選びください!」


いえた。噛まずに言えてほっとしたのか余裕が生まれて男の姿をよく見ることが出来た。


服装は白のモダン風ある人から言えばスーツに黒のベスト、首元には黒の細いリボンがあり靴は冒険者らしからぬこげ茶の革靴に薄いクリーム色の帽子だ。


何より目を惹いたのは頭が真っ黒な「ナニカ」。闇のようで中心部に黄色い目が一つ在るということだ。


あまりの異形さにアリアは固まってしまったが男はスーツから何かを取り出して依頼の紙とともに置いた。


「ゼノだ。等級は白金。クエストはスライム退治をしたい。」


その時ギルド内にいた冒険者たちのほとんどが一斉にゼノのほうを向いた。


我を取り戻したアリアは目の前に白金の証と依頼書を見て慌てて次の行動を思い出す。


「ゼ・・・ゼノさんですね。文字の読み書きはできますか?証はこれは白金ということでよろしいでしょうか?」


「ああ、読み書きはできる。必要事項は書いた。」


「わかりました。依頼受注しました。スライム退治頑張ってください!」


「ああ。ありがとう。」


一連の業務を終えるとなぜかギルドが騒がしい。あたりを見回してみると冒険者たちと先輩方がアリアとゼノに視線を集中していたからだ。


(あ・・・あれ?もしかしてヘマやっちゃた?先輩も見てないで口出してくださいよ~。)


ゼノはそのままギルド二階にあるアイテムやへ静かに足を運んでいった。


アリアは恐る恐るレーナに話しかけると


「あんんた。す・・・すごい人の対応よくできたじゃん!『渡りの白金』ここに来るなんていつぶりかしらー」


「そんなすごい人なんですか・・・?」


そこに併設された酒場でビールを飲んでいた中年の冒険者がつかつかとやってきた。


「新入りの嬢ちゃん、冒険者には下っ端の青銅、銅、銀、黒鉄、金があって白金はその頂点に立つ最高クラスなんだよ国内に数人しかいないって言われるほどエリート中のエリートなんだよ。」


さらにレーナも続けて


「あの人、『渡りの白金』って呼ばれていて全国のギルド支所をいくつも渡り歩いているのよ。ここ本部に来るなんて滅多にないのよ!」


この国は広い。ここギルド本部のある首都に地方にあるギルド支所が存在している。


ゼノは支所という支所を渡り歩いているそうだ。


お二方からそういわれてもどれほどすごい人物かアリアにはまだ実感がわかなかった。それよりもあの顔が気になって仕方がないのだ。


そんな考え事をしていると上の方から物音がしてきた。ギルド内では暴力行為はご法度だからだ。急いで駆け上がるとアイテム屋の前で人間の大男がゼノに絡んでいた。


「『渡りの白金』さんよお。ちょいと俺と腕試ししてくれよ。俺は銀クラスなんだよ。あんたとやりあえるなんざそう機会がねえからな付き合えよ。」


「断る。ここはギルドだ。暴力行為は禁止されている。俺はスライムを倒しに行くんでな。お前にかまっている暇はないんだ。」


「っははははは!スライムだって?白金サマが雑魚モンスターとか聞いてて笑えるせ。俺はようこれからダンジョン四階に挑戦するってのにスライムとか聞いてて笑えるぜ!ほんとにお前白金か?嬢ちゃんが偽物つかまされただけじゃねえのか?」


「彼女は正しく仕事をしたまでだ。悪く言うつもりならさっさと表に出ろ。」


ゼノは男を引き連れてギルドの外へ出た。ゼノの体つきは大男に比べてやや細く上背があっただけだった。


しばらくすると外から打撲音と骨の折れる音と大男の叫び声が聞こえた。数分後ゼノが顔を紫色までに膨れ上がらせ全身打撲婚を残した大男を片手で引きずりながら男のパーティーのまえに無造作に置いた。


「メンバーの管理はしっかりしたまえ。リーダーに『他人に迷惑をかけるな』と伝えてくれ」


「あのーその人がリーダーです。この人いないとダンジョン攻略的できないんですけど・・・」


「そうか、いささか殴りすぎたような。その代わりといってなんだが私が代わりにダンジョンに行こうか。」


「ええ?!いいんですか?ぜひお願いします!白金の方と冒険できるなんてこんな貴重な機会二度とないです。」


「いや、ダンジョンは俺一人でもいいといったんだ。スライムもこれから倒して明日ダンジョンに潜りに行こうとしたんだか・・・」


「いやいやそれじゃあ僕らの稼ぎがなくなるんじゃあありませんか」


「報酬のほどんどをお前たちに譲ろう。」


「いや僕たちゼノさんの足を引っ張らないようにしますからどうかお願いします。」


「だそうだ。リーダーさん?」


大男はかすれた声でメンバーたちに伝えた。


「ダンジョンをコイツに任せて報酬たんまりもらっとけ・・・」


「リーダーの発言は絶対だね。それじゃ書類変更してくるね。」


ゼノは踵を返し受付のほうにいくと


「書類変更頼む。」


といってギルドからでていった。


 二時間後、お昼ご飯の時間になりアリアはお弁当を広げた。このお弁当はこの国の神官や召喚士が異世界から転移させ、その人たちが食文化の一つであるお弁当を広めたのである。木の箱に稲の実を蒸したものにミードボール、卵を薄く焼いて巻いたりブロッコリーという未知の植物を詰め合わせたのがお弁当である。


アリアのあ弁当も異世界人にならって木の箱にパンにハムとチーズを挟んだサンドイッチにゆで卵一つというシンプルなお弁当であった。


彼女がサンドイッチを口に運ぼうとしたとき、ギルドの扉が開いた。アリアは慌ててサンドイッチをしまい込み対応した。


あいてはゼノだった。スライムを倒したとのことで報告しに来たというわけだ。


依頼主の完了状を受け取り処理していく。


「食事中だったかすまなかった。」


「いえいえ、これぐらい大丈夫ですよ。それより明日はダンジョンに行かれるんですよね?」


「ああ、だから明日はお弁当を作っていこうと思うんだ。」


ダンジョン攻略は冒険者にとっては普通命がけの探索となるのだが、彼にとってはピクニック感覚なのだろう。これが白金なのだろうか。


スライムで得たお金で彼はギルド内の食堂で安いジェノベーゼスパゲッティーを頼んだ。


この国に転移者や異世界の情報をもって生まれた転生者の活躍により、この国の食文化は大いに発展した。


ギルドのメニューもスープと粥と肉だけだったのがパスタやピザ、焼きそば、ラーメン、魚の定食など多種多様になったのだ。


食べ終えたゼノはお皿を下げ、弁当の食材を買いに行くべくギルドを出て行った。


アリアは明日ゼノがどんなお弁当を作ってくるのか気になり会ったとき尋ねてみようと思いながらサンドイッチを口にした。


受付嬢たちの午後が始まった。

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