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(九)戦装束

(九)戦装束

「火事装束だと?なにゆえじゃ。戦なのに鎧を着ないとは、いかなる考えか」

 激昂しているのは堀部安兵衛である。

「我らはわずか四十七人しかいない。討ち入る前に洛中の見張りに見つかったとしても、火事装束を着ていれば言い逃れができる」

 小野寺十内は自らの案を説明する。

「ばかな。言い逃れてどうする、諦めるというのか」

「その時は諦める。しかしまたの機会に必ず討ち入る」

「またの機会があるとは限らぬ。それに火事装束を着ていても捕らえられてしまえば終わりじゃ」

「生き残ることが肝要」

「これは戦じゃ。華やかに鎧兜を身に付けて戦わねば、末代までの恥。それに敵方には小林、清水という強弓の武者がいるという。鎧を着ずして矢を受けるは無謀というもの」

「火事装束の下には、鎖帷子を着込む」

「鎖帷子じゃとぉ、馬鹿な。浅い太刀傷は防げても、矢への備えには役に立たぬ」

「火事装束など惨めすぎるわい。阿呆くさい。浅野武者として正々堂々と戦支度して臨むべきだ。鎧を着て兜をかぶり、旗をなびかせ、騎馬で吉良邸へ討ち入るのじゃ」

 二人の言を大石は腕を組んで目を閉じて、じっと聞いている。その表情はうかがいしれない。

 大石はおもむろに目を開くと、裁定を下した。

「鎧を着て討ち入りに臨む。これは戦じゃ。浅野家の名誉を賭けた城攻めじゃ。浅野の家臣であることを恥じぬよう、手持ちの鎧の中でも一番華やかなのを身に付けよ。後世への語り草にするのだ」

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