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剣の魔女と英雄志願  作者: 荒野ヒロ
第七章 過去から未来へ息づく邪悪

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魔女王の策謀

 ルイルとグエンが亡者のごとき魔女王に斬りかかった。

 するとどうだろう──彼らの攻撃を背中から生えた触手が受け止めた。鈍い光を放つ触手に守られて、魔女王の身体に触れることすらできなかったのである。

「ばかなっ……!」

 ぎりぎりと押し込もうとする力にも、触手はびくともしない。


「フンッ」

 魔女王は下から手を振り上げるようにして二人の戦士を吹き飛ばす。

 胸を激しく打つ衝撃で二人は離れた場所に吹き飛ばされ、その場に膝を突いた。

「ぐっ……!」

 痛打を浴びた男たちは踏ん張ってこらえたが、異様な敵の防御力に対し、どのように攻めたらよいのか歯を食いしばる。



 ルディアステートは穴の開いた眼窩がんかと黄色い眼をルイルに向けた。

 その黄色い眼は不吉な光をはらみ、口元から呪いの言葉がもれる。

「キサマ……! ()()()()()は……()()()()()()か──?」

 魔女王ののど元からぐるるるっ、という獣じみた音がもれ、黄色の眼が爛々(らんらん)と殺意を燃え上がらせた。


「まるで獣ですね。魔女王というからそれなりの品位を期待していましたが、──これでは魔物と同類だ!」

 ルイルはそうえると剣を握りしめ、魔女王に斬ってかかる。

 ルディアステートは()()()()を前にしたように殺意を抱いて、紅蓮の球を撃ち出してきた。

 少年は華麗な動きで炎の球を斬り落とした。

 二つに斬り裂かれた火球が爆発し、周囲に炎をまき散らした。



 レスティアとシグナークは魔人アイラスに立ち向かっていた。

 魔女王の防御障壁を失いはしたが、魔人本来の皮膚や筋肉の鎧が固く、少女の攻撃を受けてもなかなか深い傷がつかない。

 渾身の力で振るったシグナークの剣を、腰の骨が折れ曲がるみたいな奇怪な動きでかわす魔人。

「なにっ⁉」

 ぐにゃりと後方に倒れ込む格好から跳ね上がるように立ち上がり、アイラスが手を突き出して呪文を唱えはじめた。


 それを見た少女は、相手が放とうとしている魔法が闇の力による攻撃だと見抜くと、彼女も呪文の詠唱に入る。

「ゼーテ、リドゥアス、ルウィーバ、闇による静寂、暗き輝きを放つ、闇天使の翼、我を庇護せよ『闇翼障壁エルヴィシオン!』」

 少女は自身を守る防御魔法を使った。

 魔人が放った闇の波動が少女の張った闇の障壁に吸収されていく。──その障壁の形は黒い翼の形をしており、少女の背中から彼女を包むようにして羽を広げ、少女を守ったのである。


 魔法を放ちつづける相手に接近すると、少女は豪快に剣を斬り上げて魔人の腕を切断した。

 さらに踏み込みながらの二撃目を振り下ろしたが、それをアイラスは後方に跳んで躱す。



 倒れていたレイラは女神官によって治癒魔法を受けていたが、彼女もシアメスも、魔女王の触手によって呪いのようなものの影響を受けていた。

 身体に力が入らず、剣を握ることもままならないレイラ。

「くっ……! そうか──! 魔女王め、私の中にある魔神の力に影響を……!」

 彼女の推測どおりルディアステートは、レイラのガルド・モールナとしての力に干渉し、一時的に相手の自由を奪ったのだ。

 いまレイラの中にある魔力はぐらぐらと揺らぎ、魔法の使用はおろか、身体の制御すらままならない状況におちいっていた。


「あなたは、レスティアの──妹たちの力になってあげて、お願い……」

 女神官は彼女の中にくさびのように打ち込まれた呪いの除去ができないと悟り、うなずくと魔人と魔女王の戦う場に歩いて行った。



 ルイルとグエンは魔女王を相手になんとか戦いを継続していたが、どんどん追い詰められて、いまでは帝国建国記念碑のすぐ手前にまで追い込まれてしまっていた。

 ルディアステートの身体を取り巻く奇妙な極光気オーラのせいで、攻撃がことごとく無力化されてしまうのだ。

 しかも影から予期せぬタイミングで飛び出して攻撃してくる、奇怪な触手による攻撃が厄介で、簡単に近づくことすらできない。


「さすがに歴史に名を残す魔女。なまなかな攻撃では無理か」

 グエンは頬の傷をぬぐいながら言った。彼がいままで戦ってきたどんな魔物よりも危険な存在である相手に、彼は不思議な高揚感を覚えているようだった。

 ルイルと共に戦いながらも、彼だけはなんとしても守り抜かなければならない。その覚悟をもってルディアステートに立ち向かう。


 つぎつぎに撃ち出される攻撃魔法や状態異常魔法など、魔女王はあの手この手で彼らを追い詰めようとしたが、後方から女神官が彼らを魔法で援護し、あらゆる危難から二人を守っていた。

 青い法衣ローブ頭巾フードをかぶり、銀と金の錫杖をかざす女神官は、まだ二十歳そこそこの年齢のようであるのに、強力な位階の高い補助魔法を使い、二人を後方から支えているのだ。

 彼女は目を閉じたような細い目で周囲をよく見ていて、回復や防御を優先的におこない、シグナークやルイルたち四人を積極的に支援する。

 女神官が魔法で援護すると、彼らは魔女王や魔人を相手にしっかりと踏みとどまり、それ以上先へは進ませなかった。


「おのれェ……!」

 魔女王は焦燥しょうそうし、暗い色を放つ極光気に赤い光を混じらせる。

「──『神霊刃ウルガリス』!」

 四人の武器に女神官は再び光の刃を宿した。

 ルイルは強力な加護を得て、これでいけると気がはやったのだろう。魔女王に向かって大胆に迫ると剣を振り下ろす。

 だが──その刃は空を斬った。


 一瞬で斜め前に移動したルディアステート。

 つづけて二度、三度とまたたく間にシグナークの前に迫り、彼の後方にいる女神官を狙おうとさらに瞬間移動する。

「させるかっ」

 シグナークの判断は速かった。

 後方に足を引き、ぐるりと背後に身をひるがえすと、そこから一瞬で前に踏み込み、女神官を攻撃しようとしている魔女王の背中に迫った。


「ハアッ!」

 横薙ぎにされた剣がくすんだ色の外套がいとうをまとう魔女王の背中を斬り裂く。

 ──ところが背中を斬られた魔女は煙のように姿を消し、二人のあいだからいなくなったのだ。

「なにっ⁉」

 離れた場所からルイルは二人に向かって叫んだ。

「上です! 石塔にルディアステートが!」

 女神官のさらに後ろにある石塔に移動していた魔女王は、石塔にかけられた封印を解こうとしたようだ。

 空中に浮くようにして結界に取り付いているルディアステート。

 建国記念碑の周囲にかけられた結界が反応し、魔女王を退けようと力を発揮する。

 青い火花を散らして、黒い極光気をまとう怪物の侵入に抵抗する結界。


 ばちんと大きな音が響くと魔女王は弾き飛ばされて、魔人アイラスのいた場所まで後退した。

「封印を破る力がなくなるとは……!」

 魔女王はうなった。


 レスティアとアイラスの対決は五分五分というところだ。魔人の魔法から守られたレスティアが速攻で、アイラスを手数で圧倒していたが、致命的な損害ダメージは与えられない。

 シグナークも少女のすさまじい攻撃の合間合間に重い一撃をアイラスに叩き込み、魔人の腕を斬り落としたが──その腕は地面に落下せず、血液を触手のようにつなげて身体につなぎ止め、腕を修復してしまう。

「化け物がっ……!」

 反撃を受けたシグナークが腹部に痛打を受けて吹き飛び、がっくりと膝を折る。

「うぐぅっ」

 重い拳の殴打を受けて思わずうめく。

 防御魔法で損害を抑えられはしたが、彼は苦しそうに腹を押さえた。

 魔女王と魔人が並び、その前にルイルたちが立ちふさがる。

 よろよろと立ち上がったシグナークも気合いで迎え撃つ構えを見せた。



「アイラスよ。おまえはよくやった」

 魔女王は不意にそんな言葉を口にした。

 操り人形と変わらぬ魔人アイラスは、無言のまま主に顔を向け、何か言葉を発したように見えた。──だが、魔女王ルディアステートは影の中から不気味な触手を出してアイラスを押さえ込むと、手に取り出した短刀をアイラスの首に突き刺した。


 短刀は彼女のうなじを貫くと、青いほのおが魔人の身体から噴き上がり、瞬く間に灰へと変えてしまう。

 そこからあふれ出た魔力を吸収するルディアステート。

 魔人アイラスは人身御供ひとみごくうとなり、魔女王の魔力へと還元されたのだ。影の中から現れた不気味な触手とも一体になり、魔女王ルディアステートは新たな姿をその場にさらした。

風邪をこじらせ予定が狂ってしまいました。今年中にこの章を終わらせたかったのですが。

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