表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣の魔女と英雄志願  作者: 荒野ヒロ
第三章 大迷宮の探索

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/71

危険な気配

 入り組んだ迷宮内を奥に向かって進みつづける五人。牛頭人ミノタウロスや中級悪魔、死霊の騎士などが行く手をはばみ、幾度いくどとなく戦闘になったが──彼らはそのすべてをはねけて、どんどん奥へ進みつづける。


 かなり離れた場所でも戦闘の音が聞こえ、ほかのパーティも迷宮の奥に向かっていることがわかった。迷宮中央には砦に似た石の建物があり、目には見えぬ禍々(まがまが)しい空気を放って鎮座していた。


 石造りの通路を進んでいるとどうしたことか、ドーファと並んで前を進むレスティアが急に歩く速度を落としはじめ、後ろから追っていたクィントゥスに支えられたのである。


「ちょっ……ど、どうしたのレスティアちゃん!」


 少女は気分が悪そうに背を丸めて、床を見つめている。その表情は蒼ざめており、少女の体温が急激に低下したかのようだった。


「だ、だいじょうぶ……少し気分が悪いだけ、だから」

「そうだな、少し休んでいこう。この先から嫌な気配を感じるしな」


 ドーファは曲がった道の先をにらみつけ、周辺の壁や床に聖なる灰をまいて、魔物や悪魔が近づかないようにする。

 だが──この迷宮の不快な瘴気しょうきの中では、あまり効果が得られなかったらしい。曲がった道の先から一体の中級悪魔と、それに率いられた三体の土精霊の悪霊が現れたのである。


 武器を構えてレスティアを守ろうとするシグナークたちを制したのは、ドーファであった。


「お前らも休んでいろ」


 彼はそう言って大剣を手に、たった一人で敵の集団に突撃して行く。

 後方で回復薬などを飲んでから応援に駆けつけようと、シグナークは考えていたかもしれない。ただ、それは──杞憂きゆうというものだった。


 ドーファに襲いかかったどろどろの土の山が、いきなり弾け飛んだ。横薙ぎにした大剣に風の魔法が宿り、広範囲を吹き飛ばしたのだ。

 三体の土精霊の悪霊がその一撃でこっぱみじん(こっぱみじん)となり、土の塊を浴びせかけられた中級悪魔のデウバイド(「魔性の三つ眼」を意味する。名前のとおり三つの眼を持つ赤い色の悪魔で、強力な催眠や数々の魔法を使う)が、よろけながらも向かって来た。剣士に手を突き出して、炎の攻撃魔法を撃ち出した。


 大きな炎の塊が手から放たれたのと──ほぼ同時に爆発し、悪魔は後ろに吹き飛ばされた。さらに、その腕は切り落とされていたのである。

 爆発した炎の中から飛び出したのは、剣を振り下ろした格好のドーファ。彼が炎を斬り裂きながら敵のふところへと飛び込んできたのだ。


 デウバイドは石床に着地すると同時に、腹部を大剣で貫かれた。さらにその大剣を横に振り抜いて腹部を引き裂き、あっと言う間に悪魔は灰となって崩れ落ちたのである。




 これが金階級の剣士……! 後方で休んでいた者たちは皆、この恐るべき実力者を心の中でたたえると同時に、自分もあそこまでなれるものだろうかと自問するのだった。




 一休みしたレスティアは、だいぶ調子を取り戻した様子だ。彼女は申し訳なさそうに謝罪の言葉をのべると、つづけてこう言った。


「この先は危険な気がします。()()()()の力を感じるのです」


 少女は何かを感じているらしい。なぜ彼女が上級悪魔のことを知っているのか疑問に思いはしたが、ドーファも危険だという意見には賛成だった。


「そうだな、この先は迷宮の中央。見えざる異界への門を封じた砦がある場所だ。危険な感じがする……お前らは引き返した方がいい」


 レスティアとドーファの表情を見て、二人が真実を語っていると判断したシグナークはすみやかに応える。


「なるほど、わかりました。であれば俺も覚悟を決めて、前に進むとしましょう」

 彼の言葉に迷いはなかった。レスティアも多少ふらつきながら「なら私も」と、彼について行くと申し出た。


 上級悪魔の気配を感じる。という言葉に怯んでいたクィントゥスとエレミュスであるが、この困難を乗り越えるか逃げるかで、この先の自分の行く末が決まると思うと──震えるほど恐ろしかったが、ここで三人と別れて引き返すことはできそうにない。

 彼女らも覚悟を決めて、足手まといにならないよう、できる限りのことをすると誓った。


 曲がった道の先は再び曲がり道になり、その先に丁字路があって、その二つの通路が合流して伸びる通路の先は、いままでの通路よりも広くなっていた。


 五人が先へと進んでいると、道の奥の曲がり角から現れたのは、先ほどシグナークらが接触した──女騎士が率いる四人組のパーティであった。彼らも歩き進めるたびに感じている、不快な瘴気に気づいている様子だ。


「ここは互いの力を合わせて共闘しようじゃないか、でないと生き残れないかもしれないぞ」


 ドーファの言葉に、ただ黙ってうなずく女騎士たち。彼女もその仲間も、それなりの覚悟を持って冒険者をしているのだ。異界につながり得る門が開いてしまうかもしれないのに、おめおめと帰るわけにはいかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ