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剣の魔女と英雄志願  作者: 荒野ヒロ
第三章 大迷宮の探索

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グリゴルとの戦闘

 通路の先から群れをなしてやって来ているのは、灰色の皮膚をした大男……のような怪物。


「グリゴル(「劣悪な血」を意味する)だ」


 頭部や肩などから鋭く尖った角を生やした──灰色の中級悪魔だ。魔法を使うこともあるが、拳を使った攻撃を得意とし、肉弾戦の悪魔とも一部の冒険者からは呼ばれている。


 赤い眼をした四体の悪魔は腕の筋肉を隆起させると、石床を蹴りつけて走り出す。

 それを迎え撃つ形で敵の接近を待ち、間合いが詰まると、レスティアとドーファが同時にグリゴルへ突進した。


 双方ともすさまじい速さで悪魔の振り下ろしてきた拳をかわすと、がら空きの胴体や太股を斬り裂いて、さらに側面から二撃目を浴びせかける。


 悪魔は声を出すこともなく怯んで──少しあとずさると、ドーファは身体を回転させながら足を踏み出し、踏み込んだ足に体重を乗せ、遠心力を利用した斬り下ろしを叩き込む。

 巨体を持つグリゴルの頭から胸までを斬り裂くと、大量の青い血をまき散らしながら、どうっと床に倒れ込んだ。


 接近してきたドーファを殴りつけようとしたグリゴルを、今度は後方から飛び出したシグナークが斧槍を振りかぶり、重い刃を相手の胴体に叩きつける。分厚い刃が深々と悪魔の胸部をえぐったが、硬い骨に阻まれ致命傷にはならなかった。

 この悪魔は自分の身体に防御魔法をかけていたらしい。

 レスティアのほうも傷を負わせただけで、相手は傷に構うことなく反撃してきた。その攻撃を躱しながら数歩後退する。


 彼女の横から助けに入ったクィントゥスが剣を突き込むと、骨の隙間を抜けた刃が深々と刺さり、よろよろと後退して膝を突くグリゴル。

 四体目がクィントゥスに襲いかかろうとしたが、エレミュスの光の弾丸を撃ち出す魔法が数発飛翔し、相手の顔や首などを狙い撃って後退させることができた。


 耐久力の高い相手のため乱戦になったが、一体一体を確実に仕止めるようドーファが呼びかけると、シグナークとレスティアは重い一撃と、すばやい連撃を組み合わせて一体を倒し、つづけてクィントゥスは盾で相手の攻撃を受け流した隙に、鋭い反撃の一撃を首筋に叩き込んでグリゴルを打ち倒す。

 残りの一体もドーファが放った荒々しい戦技で腕と首を切り落とされ、青い血を吹き出しながら倒れ込んだのである。


 グリゴルたちの死体のほとんどは灰となって、あとには青紫色の結晶体が残された。ただ、二体の死体からは結晶は出なかった。


「魔晶石だな。錬金術師はこれを高く買い取ってくれる」


 残ったグリゴルの爪なども戦利品として取っておく。


「動きを見てたが、グリゴルと戦うのは初めてっぽいな? 慣れればお前らだけでも余裕で倒せるようになるはずだ。相手の動きをよく観察しておくことだ」


 先輩冒険者の言葉にうなずきながら、これからどうするかをドーファとも話し合う。


「俺もパーティに入れてくれるなら、参加させてもらうぜ。……それに、この迷宮は最近様子がおかしくてな。どうも悪魔の出現頻度が増していると感じるんだ」

「さっき出会ったパーティも、同じことを言っていました」


 それを聞くとドーファは頷き。

「一人の意見より二人の意見だ。やはり何か変だな。お前らのことも心配だから、俺もついて行くことにするぜ」


 その申し出にエレミュスもシグナークも、よろこんだのは言うまでもない。ほかの二名もあえて声には出さなかったが、金階級の冒険者の助力があったほうが、この危険な迷宮を探索するのが格段に楽に、安全になる。


 特にドーファの動きは、パーティの中でもすばやい動きで一目置かれていたレスティアに劣らない速さを持ち。さらに一撃の重さでも、パーティ屈指のシグナークを上回ると思われた。


「それにしてもなぜ一人で? ツァークさんは一緒じゃないんですか」

「ツァークたちには先に行ってもらったんだ。この迷宮の様子がおかしかったから、俺だけ残って調査しようと思ってな。それにここは、俺が冒険者になって初めて死にそうな思いをした記念すべき場所だからな。その嫌な思い出を力に変えるためにも、ここで戦闘経験を積むのは俺に合ってるのさ」


 彼はそう言いながら快活に笑う。自分が死にかけた場所など、怖くて仕方ないと考えるのが普通だろうが、恐怖や弱点を克服しようとするのが優秀な戦士、または冒険者なのだ。

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