古龍 ” 龍 の 声 ”
………
…そういえばアルフ君。アダント様に何を聞きにったんだろ
「ねえねえアルフ君。アダント様に何を聞いてたの?」
気が付けば、前を歩いているアルフ君に問いかけてみる。
『ん?ああ、ちょっとした疑問だよ。そこまで気にするほどじゃないよ。』
まー、望んでた答えが返ってくるとは思わなかったけど…。
でも話そうとしてこない感じからしたら、そこまで重要な内容じゃないか、それとも…。
「うーん、まだ目的の場所って先なの?」
いつまでも続く薄暗い洞窟の道。
終わりが中々見えてこないことに不安を覚えたのか、ラーナがぼそりと呟く。
ラーナだけじゃない。リリやルイシャも僅かに体を震わせていた。
魔王の瘴気が漏れ、流れる道だとわかっているからか、ウルティアは今まで以上に警戒をしている。
震えるルイシャを心配したアンジュは、ルイシャの隣に来ると慰めるかのように自ら体を寄せた。
ユリアもアルフの傍に来ると体に手を置いて優しく体毛を掴む。
「どうにも終わりが見えない様子ですな…。何か妙な感じが漂っているようだが…。」
『一本道だから迷うはずはないんだけど、他に何か必要なのかもしれない…。』
「必要なもの…」
ユリアはそっと手を前にかざした。
魔王戦の時に発揮した勇者としての力を使うような感覚で、手の平に力を込める。
それが正解だったのかはわからないが、それを機にユリアたちを取り巻く何かが消えていくのを感じた。
まるで霧が晴れたかのように周囲がはっきりと見えるようになり、また左右の壁に掲げられた燭台に順々に炎が灯る。
「…ここって、洞窟じゃなかったんだ。」
そう。
ユリアたちがいたのは洞窟だと思っていたが、実際はまるでどこかの宮殿のような装飾が施された通路だった。
床は赤いカーペットのようなものが一直線に奥まで引かれており、通路の奥まで燭台に炎が灯るとそこに巨大な扉が見える。
「…あの先にきっと。」
『ああ。魔王の瘴気を身に纏い、自らを封印した古龍たちの一頭がいる。』
『これでルイシャちゃんを助けられる…!』
「若殿、最後まで警戒を怠らずに。」
『ああ、わかっている。…いこう。』
アルフたちは警戒をしつつも、何事もなく扉の前まで進んだ。
一呼吸を置き、ユリアはそっと扉に触れる。
触れた所から装飾になぞって光が伸びていき、全体にまで行き渡ると扉はゴゴゴゴ…と音を立てながらゆっくりと勝手に開いていく。
扉が完全に開く前に動きは停止し、これ以上開かない様子だったためギリギリウルティアが入るぐらいの開いた隙間にユリアたちは入っていく。
全員が入り終えると扉がまた先ほどの轟音を立てて閉じてしまった。
通路側から差し込んでいた炎光が遮断されたため、暗闇が辺りを包む。
が数秒の間を置いて、部屋の各所に掲げられていた燭台にも炎が灯り、部屋の全体像が明らかになった。
<…あら、大所帯できたのねぇ。>
部屋の奥から聞こえてくる枯れたような声は脳内に響くように聞こえてきた。
だが、それでいて凛として透き通っており、本来はきっと美しい女性の声であるとすぐに感じ取れた。
部屋の中心に2本の棒のようなものが立っており、その後ろに巨大な球体が存在している。
声の主はそこにいるようにも感じる。
「えっと…古龍様、ですか?」
恐る恐るユリアが一歩前に出てそう尋ねる。
<…あなたは今代の****?>
だが返ってきた言葉の一部がまるでノイズのような雑音と何重にも声が重なっているようで聞き取れない。
「えっと…」
<あらぁ、ごめんなさい。えっとぉ、あなたが新しい勇者なのねぇ?>
「は、はい。ユリアって言います!」
<ふふふぅ、そんなに緊張しなくても大丈夫よぉ。もう少し近くに寄ってくれないかしらぁ?>
そう言われ、ユリアたちはゆっくりと球体に近づく。
2本の柱が立つ中央付近まで近づくと、柱と柱の間にうっすらと蒼白い膜のような障壁が出現する。
「わっ、なんだこれ…!?」
『ふむ…これ以上の侵入を防ぐための防衛機能かな…?』
『これ、どうするのよ…』
これ以上先に進んでいいのかどうかわからないでいると
<大丈夫よぉ。勇者の貴女だけなら問題なく通れるはずよぉ。>
「え、私だけ?わ、わかりました…!」
ユリアはゆっくりと障壁を通り抜ける。
何事もなかったことにほっと胸を撫で下ろし、一息つくと球体の方へと近づいていく。
ユリアは気づく。
球体の中に一人の女性がいることに。
だがその中にいる女性は明らかに巨大だった。
ゆうに3mは超えているように見える。
球体の中に広がっている魔王の瘴気のようなモヤのせいで全体は見えないが、頭から生えた角のようなモノ、腰辺りから生えているであろう尾が見える。
<今回の勇者はとてもかわいらしい子なのねぇ。>
「えっと、私はどうすれば…、あっ」
その球体の一部分にひびが入っており、小さな穴が開いていることに気が付く。
<見えたかしらぁ?そこの穴を塞いでくれれば終わりよぉ。>
「でもどうやれば…」
<簡単よぉ。勇者の力を私に向けて思いっきり放つだけだからぁ。>
「よ、よし…やります!」
ユリアは先ほどと同じように手の平に意識を集中し、自分の内に広がる力を集め始めた。
集めた力を球体に向けて放つと、球体全体が光だし、その光がひび割れた個所へと集まっていく。
徐々に開いていた穴が塞がっていく…かに見えるが全然そんな様子は見えない。
「うぅぅ…塞がらないよ。どうして…?」
<あれぇ~…おかしいわねぇ~…>
「もっと力を込めてみるようにしてみます…!」
そういってユリアは目をぎゅっと瞑り、力を更に集中させるようにイメージを強くした。
その時、どこからか自分を支援してくれる力を感じる。
―こ、これは一体…。誰かはわからないけど、すごくやりやすい!これならいける…!!
身体から湧き溢れてくる力の恩恵を借りるように更に力を込めていく。
その流れもいつもよりもずっと感じやすく、流れもスムーズにコントロールできる。
いつも以上に力がコントロールできるためか、明らかにキャパ―オーバーであろう膨大な力を込めてもまだまだ余裕があるように感じられる。
「はああああああ…!!!」
<…えぇ?うっそぉ…?!これってぇ…!>
目を閉じているから状況はわからないが、脳内に響いてくる驚きの声にきっと効果は出ているんだろう。
つまり、このやり方が合っている…ということ。
「なおれぇぇぇえええええええー!!!」
先ほどよりももっとずっと力を込めて力を流し込む。
ミシッ…ピキッ…
ふと耳に聞き慣れない音が聞こえてきた。
それと同時に
「ちょ、ちょっと…」
『なんか様子がおかしいんだけど…?!』
「これは…!」
何やら後方が騒がしいことに気付く。
目を開けるとそこには穴が塞がるどころか、その穴を中心に球体全体に皹が広がっていた。
「…へ?うそ…?!」
<これってぇ…>
次の瞬間…
バリィイイイインッッッ―――!!!
球体が完全に割れ、中に封印されていた古龍の1頭…龍の声が姿を現した。




