後始末とこれからの事
次の日、若干の疲れが残ってはいたもののこれ以上時間が空くのはよくないとユリアたちはオードンの元へ再度訪れる。
「オードンさん、こんにちわー!」
「おお、きたか。ささ、こっちだ。」
完全に野ざらし状態ではあるが、通された部屋と思わしき場所は会議室のような…そう、きっと会議室なんだろうなと思いこむことにし、今に崩れそうな机を囲んで、なんとか座れそうな椅子を探し出して持ってくるとそれに座り、ユリアの左右にアルフとアンジュが座り込む。
オードンは机の上に水晶のような物をどこからか取り出すと机の上に乗せる。
ミシッ…
「あっ」
がそれが止めだったようで、物体を乗せた途端机がボロボロに崩れ散っていく。
それに伴って、机に乗せられた物体はそのまま地面へと落下し、割れはしなかったものの部屋の外へと転がっていってしまった。
オードンは慌てて転がっていく水晶を拾おうと追いかけようとし、席を立とうと足に力を込めた途端、座っていた椅子が壊れ、
グギッ
「ぬおうっ!?」
オードンの腰から鈍い音と共にその場から転げ落ちて倒れてしまった。
「ぬうううううおおおおおおお…」
「ちょっと、オードンさん!大丈夫です、かあっ!?」
とユリアが立ち上がろうとした時、やはり限界だったのか、立ち上がる直前に椅子が崩壊し、足が縺れて転倒しそうになるも、隣に座っていたアルフが寸での所で上着の裾を口に咥えて転倒を防いだ。
『大丈夫か?』
「あ、ありがとう…。」
色々とアクシデントはあったが、転がっていった水晶はアルフとユリアが探しに出かけ、腰を痛めたオードンに治癒魔法をかけるアンジュ。
少し時間が経って、水晶を拾って戻ってきたユリアたち。
結局机じゃなく、それぞれ座りやすそうな瓦礫の上に座り、話を進めることにした。
ちなみにオードンが取り出した水晶は、遮音結界を作り出す魔道具のようで、これはチコルの発明品だという。
実用性を確かめるべく、少し前から会議の際は貸し出しているらしい。
使い方として、まずこの水晶に会議に参加する者たち全員が自らの魔力を一定量込める。
参加者全員が魔力を込め終えたら、呪文を詠唱する。
すると水晶が発光し始めたら無事効果が適応されるとのこと。
水晶に魔力を込めた者らだけが、水晶の範囲内で会話する際、その水晶を通して聞こえてくるため、外部には一切聞こえないという。
オードンの言われた通り、ユリアたちは水晶に魔力を込め、全員がその作業をし終えると
「我らに秘密あり、故に秘密を隠せ。」
オードンがそう告げると水晶が光り、無事遮音結界が張れたようだ。
「これでいいだろう。」
「へー、こんなのもあるんだねー。」
「意外と外部に機密が漏れぬため、今度製品として導入しようと検討しているぐらいだ。」
『機密保持は重要だからな。簡単にもれたらそれはもはや機密とは呼べないものになってしまうしな。』
そしてオードンに魔王が残した言葉を説明する。
魔王としての成り立ちと、他に4つの魔王の脅威が残されている可能性が高いこと。
それを聞いてアダントとエフィが森に戻り、総力を挙げて周囲を探索していること。
それらの説明を全て聞き終えたオードンは、深くため息を付くとそのまま頭を抱えるように呻り始める。
「はあ~…。魔王の脅威が後4つも残っているとは…いやはや…。」
「でも今の私の力を持ってすれば楽勝だよ!」
「せめてもの望みとして、この町の近くにその脅威がないことだけだな…。1つでもあればもはや立て直すことは出来ず、この町を放棄せねばならなくなるからな…。」
『魔王と衝突した結果がこの町の惨状だしな…。死者こそでなかったけど、こう何度も建て直すはめになったら復興の目途も立たず、復興資金も底を尽くし…というか今の状況はどうなんだ?』
その言葉を受けて、オードンは苦笑いするしかなかった。
「…正直、大丈夫とは言えんな。建物の一つや二つ、城壁の一部崩壊ならまだしも、この状況は厳しいと言わざるを得ないな。幸い、王都に支援援助の要請をしてある。近いうちに物資が届くはずだ。だがそう何度も受けられるとは思えぬ。最悪の場合、この町を捨てる選択肢も出るだろう。そうなった場合、この町に住む領民たちを受け入れてくれるところもあるかどうか…」
『各村も自分たちの事で手一杯だろうし、何より精神汚染領域の脅威がある。』
と話し合っていると、上空からラーヴァリアと他数名のバファルメイドたちがこちらに向かっている姿を確認した。
『今、こっちに ラーヴァリアたちが向かっているのが見えた。多分父様の報告を兼ねて町の支援に来たと思う。』
「なに、それは本当か。」
会議は一旦中断して、ユリアたちはオードン含めて町の外へ出ていく。
出てきたと同時にラーヴァリアたちが地上へ降りて来ていた。
「皆様に旦那様からの言伝を預かっております。」
以下、アダントからもたらされた情報だ。
自分たちが住む森…"クウェサドの森"全域を探索したところ、それらしい脅威は見つからなかった事。
だが過去にオゥクロプス襲撃事件の時のように、本来クウェサドの森にはいないはずの生物たちの姿を見つけたこと。その生物たちは最古の知識を識る山からきていること。
それらを踏まえて、脅威はここではなく最古の知識を識る山方面にあるのではないかと推測されること。
「最古の知識を識る山の方面には王都もある。もしかしたら王都の方にも異変が起きている可能性が高いやもしれないな…。となると、支援は期待できない可能性が出てきたか…」
「はい。なので町の復興に我らバファルメイドが微力ながらお手伝いさせていただきます。魔法によるがれきの撤去、町の防衛、荒れた町の清掃など承ります。」
「それは助かるな…!となると、後は…」
そう。
魔王の脅威がここになければ、必然的に勇者として魔王の脅威とされるモノの確認に行かねばならない。
そしてそれがもし本当に魔王の脅威と判断された場合、完全体と成った魔王と対峙してそれを打ち滅ぼす必要性がある。
そしてアダントの話にあった通り、魔王討伐だけじゃなく、その後の古龍の封印の綻びを修繕する必要も…
「やることいっぱいだー…。」
『とりあえずは今後何をしなければいけないのかはわかったが、まずは父様が仰ってたクウェサドの森のどこかにある古龍の封印、その綻びを直しに。そしてルイシャを古龍に合わせ、"生まれ変わり"を行う。』
『そうだね。急いでルイシャちゃんを助けなきゃ!』
「うん、まずはルイシャちゃんだ!」
ユリアたちは今やるべきことを成すため、オードンと別れ、クウェサドの森へと帰ることにした。




