離別
加筆修正します。
凜と和解したのは良しとして、問題は今夜行われるパーティーだ。
何を隠そう、俺はパーティーに行ったことがない!
緊張して心臓が高鳴っているけど、それよりも今は別な意味で心臓が高鳴っていた。
「あ、頭が……痛い……!」
何事!?
「桜、大丈夫か?」
「これが大丈夫に見えるんだったら、スゴいことね」
「全然大丈夫じゃないことはわかった」
それで、
「どんな感じに痛い?」
「割れるような痛み」
「それなら、いっそのことかち割ってみてはどうだ?」
「黙ってろ。淫乱」
「それは褒め言葉であって、決して罵倒にはならないぞ」
そう思うのは彩華だけだ。
「おい、アリアス。何か知らないか?」
「その状態はマズいですわよ」
「はい?」
「本当はこの世界に存在しない人間がいるってこと自体、おかしいことなのですわ」
「その理屈はいらないから、どうすればいいのか教えてくれ」
「元の世界に帰れば問題ありませんわ」
「おーし、了解したでー!」
帰る方法なら持っている。凜を陰ながら応援するための移動手段として作った抜け道がな!
「逢坂くん、君が考えている道じゃ帰ることは出来ないよ」
面倒くさいヤツが現れた。何を解った風な口を訊きおって。
「何で俺の作った道だと帰れないんだよ」
「僕が壊したからさ」
「清々しいくらいにゲスだな」
「さあ、僕が桜を帰すから渡してくれ」
何となく嫌なんだよな。これが今生の別れになる予感がして。
目の前で頭を押さえてうずくまる少女を助けるには、苑馬に預けるしかないのか。アイツのせいで俺が確保したルートが使えないんだし、これはこれで因果応報なのかもしれない。
なんて思うけど、別に罪悪感なんて無いし合理的な判断を俺は導く。
「おい、テメェ、勝手なこと喋ってんじゃねぇぞ」
だが彩華は許さなかった。
「貴様が桜を助けれる保障がどこにある!」
「僕は桜を必ず助けなければならないんだよ。そうしなければならない理由の方が大きいってことくらい知ってるハズだよ」
「ネチネチと女か貴様は」
「君は全く女性らしくないね」
「ハッ、腐れ」
明らかに険悪な雰囲気が漂う。このままだと彩華は容赦なく苑馬を殴るだろう。
優先すべきは桜を助けることなのに、いつの間にか桜を渡すか否かになっている。
「おい、いい加減にしろ! 彩華は桜をどうしたいんだよ」
「助けたいに決まっている!」
「じゃあ信用ならないけど、苑馬に預けるしかないんだよ!」
「……ちぃっ」
彩華は舌打ちして一瞥した後、どっかに立ち去った。
こればっかりは憎まれ役は1人だけでいい。
「じゃあ苑馬、桜を連れて帰れ」
「本当にいいんだね?」
コイツの笑顔って妙に胡散臭いんだよな。万人受けする爽やかな笑顔。気持ち悪い。
でも、桜を助けるためだ。一生会えなくなるような予感がしても、彼女が生きているならそれだけで良い。
桜を連れて立ち去る苑馬を見送った。
「逢坂、あれで本当によかった?」
白雪が尋ねてきても、俺は答えることが出来ない。
信用できない人間に大切な人を預けるってのは、とてつもなく勇気が必要だ。本気で助けたいなら、会えなくなろうとも生きていてくれるだけで嬉しいハズだ。
「白雪は苑馬に桜を預けるべきだったと思う?」
「桜が助かるのは嬉しい。でも、二度と会えなくなるのは嫌」
「欲張りだな」
「逢坂は桜に会えなくなるのは嫌じゃない?」
「それよりも桜が死んじゃうのは嫌だ。生きていれば必ず会えるし、やり直すことが出来る」
「良い台詞だけど、世の中そう甘くないんだよ」
「そんな事くらい解っている」
やり直すことなんて出来ない。先ず苑馬が許さず、ヤツは俺たちとの関係を絶とうとするだろう。
奪われた時間を奪い返し、自らの恋を成就させるために。
「白雪は頭大丈夫?」
「バカじゃないもん」
「痛いか否か訊いてんだよ」
話の流れで理解しろバカが。
「痛くないよ」
「そういえば彩華は?」
「ちゃんと捕まえたよ、お兄ちゃん」
凜に縄で縛り上げられた彩華が、敗残兵みたく気まずそうに目線を逸らしている。
「最初に言っておく。私は苑馬を信じてないからな」
「いや、俺たちだって信用してないから。頭大丈夫?」
「私はバカじゃない」
白雪と同じ反応を返しやがって。バカが。
「痛いのか否かだよ」
「全く痛くない。むしろ下腹部の痛みが……」
「下剤でも飲んだ?」
「例の月1だ」
「鎮痛剤持ってるけど」
「女子力高いねー」
「アンタは低いねー」
「ケンカ売ってんのかゴルァッ!」
「うっさいわ不順!」
「はぁ!? ちゃんと2ヶ月に1回くらいはきとるわ!」
「それが不順なんだよ!」
ああだこうだ言い争いが始まって終いにはマジの喧嘩に発展した。
先手必勝で彩華の頭突きが俺の股間にクリーンヒットして終わり。ああ、痛い。
パーティーなんて野暮なもんには、苑馬が桜を連れて居なくなったから出席しませんでした。今回のオチ。
「でも、桜がああなったんだから白雪も彩華も危ないんじゃないかな?」
「確かにな」
ふと脳裏を過ぎったのは真田幸平という女性だった。
アイツは別の世界から召還されたのに、平然としていた。元々いない人間を排除しようとするのが世界の意志ならば、長く存在している真田は既に排除されているハズだ。
「くそっ、苑馬を追うぞ」
『嫌だ』
彩華と白雪が拒否しやがった。さっきは反対していたのに。
「お兄ちゃんのやろうとしていることは正しいから、凜はついていく」
「私はどうしましょう」
「アリアス、お前は当初の目的を忘れてないか?」
「そうでしたわ。あの女、絶対に許しませんわー!」
あの女ってどの女だよ。凜じゃないことを祈りたい。
「とにかくこれは決定事項だ! 俺が全責任を背負う!」
一度言ってみたかった台詞を言い放って、強引に苑馬を追い掛けた。
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