異変の街
無事、川を見つけて街へ辿り着いた。
ここまでの道程は語りたくない。
一言で言えば、キャラが濃い奴が1人いるだけで疲れの度合い凄まじかった。
今更なんだけど、
「お前らその格好は目立つから、何とかしろ」
似たような格好の人間がいないから、目立つのは当たり前だ。
「着替えがないんだから、どうしようもないわよ」
「桜、世の中には無茶を通すことに意義があるんだよ」
俺は懐から巾着袋を取り出す。
「さっき盗賊から奪った金とか色々と入ってるから」
「うわっ、重いっ」
「凜を陰ながら見守るためには先立つ物が必要だったから、年がら年中遊べる金が入ってる」
「銀貨なんだ」
巾着袋を渡した相手は桜だ。真面目だし他は淫乱と子供だから、何をしでかすか解ったもんじゃない。
でも、不思議なことに彩華が絡んでこない。白雪は眠っちゃってるけど。
「彩華がどこに行ったか解る?」
「そういえば居ないわね」
「街の人もいないみたいだし。まさか神隠し?」
「さあ、どうなんだろうね」
脳裏に過ぎったのはホモ野郎、もといルシファーの所業だ。
ヤツは男なら見境なく掘りに行ってたから、まさかヤツがやったかもしれない。でも、女性がいないからヤツは違うだろう。
「とりあえず捜すか」
「手分けして捜すのは効率いいけど、それだとどっかの淫乱の二の舞になりかねないから固まって捜すわよ」
「呼んだか?」
いきなり現れて心臓に悪い。
「どこにいたんですか?」
「イイ女がいないか捜したんだが、誰もいなかった」
「もうちょっと異世界なんだから、不安で一杯だったりしないんですか?」
「もうちょっと女の子らしくしてほしいのか?」
何で彩華はニヤリと笑ってるのか知らないけど、想像してみよう。
涙で瞳が潤んで不安で仕方ない、といった見た目が清楚で清純、儚げな美少女の彩華が右腕に抱きついてくる。
『逢坂くん、怖いの』
たまらん!
しかし、抱きついたと同時にニヤケ顔が思い浮かんで昂揚した気分は地に落ちた。
「いつも通りでいいよ、もう」
期待とかするのは、この人に対してだけはやめよう。
こんな時、真面目な桜は彩華を叱る。
「彩華、勝手な行動は慎みなさい!」
「なんだ、襲ってもらえなくて不満だったのか?」
「阿呆!」
「違ったか。2人っきりに近かったのに邪魔された当てつけか」
「そんなワケないでしょうが!」
「1人だけイイ気分を味わうのは感心しないな。お仕置きだべー」
「キャァァァァァァ!」
百合な空間が形成され、喘ぎ声とかアダルト展開がされて煩いから白雪が起きた。
「うるさい」
「ようやく起きたか」
「街に着いた?」
「お前を担いで歩くの大変だったから、次からは歩け」
「可愛い女の子に対して酷なことを言う」
「可愛い女の子(笑)」
「うにぁぁぁぁぁぁ!」
ポカポカ殴ってくる白雪が鬱陶しくて、つい落としてしまった。
「ふぎゃっ」
追い討ちとばかりにバランスを崩して踏んづけてしまった。
「ビィエエエエエエ!」
あ、やらかしたなー。そして終わった。
「おや、美幼女を苛めたな」
「何してんのよ、逢坂」
「これはお仕置きが必要だ」
ほら、こういう流れに至る。
「肛門刺激の刑だ」
「待っ……ムグッ」
猿轡を噛まされ、そして始まる刑罰執行。
「ムグァー! ムグァァァ!」
悪化していた痔が更に悪化したのは言うまでもなかった。
「い、痛かった」
尻がもう無理。限界だ。
まあ、いいだろう。まだ痔に効く薬は残っている。
中からチュウッと注入だ。
閑話休題。
今は誰も酒場で休憩中だ。
宿屋にしてほしかったけど、人が集まりそうな場所へ行こうといった考えで酒場になった。
「寝心地悪いから宿屋にしよう」
「そうなると寝かせることが出来なくなるな」
「何でだよ!」
「一緒に寝るんだから、私もそれ相応の覚悟を持たなければならないな」
「何で彩華が一緒に寝るんだ?」
「ガッデム!」
いや、添い寝とか明らかにおかしいくらい気づけよ。
さすが淫乱。斜め上の方向で考えることが出来るのか。侮れない。
「あっ、じゃあ私?」
「お仕置きだべー」
「キャァァァァァァ!」
毎度のことながら、眼福なので感謝しています。
さて、こっちも起き上がろうか。
「あの、腹の上に乗っからないでくれないかな。白雪」
「踏んづけた仕返し」
「腹が上下してて座りづらいだろ?」
「不満があるなら、握り潰すよ?」
「どうぞお座りください」
前も刺激の対象にされたら、もう生きていけない。
そろそろ真面目な会話を楽しもうか。
「逢坂、この街に心当たりとかないの?」
「あるわけないだろう」
桜は頬が火照って服が乱れてるけど、察しの早い俺は何も訊かない。
「先ずはこの世界について知る必要があると思うの、私たちって」
俺が説明しないといけないんだろう。ダルい。
「この世界は、俺の妹が殆ど作り上げたようなものだ。つまり俺は何も手を加えてない状態だから、何も知らん」
「えっ、作ったんじゃなかったの?」
「前まで自分で作ったんだ! ……って、自覚はあったんだよ。でも、段々と思い出していく内に自分で作ったんじゃないと思い出してさー。ごめんちょ」
「じゃあ私たちって敵の罠にお金だけ持って飛び込んでいったんじゃない」
「でも、妹は中身だけ作ったんだ。外側は別なヤツが作った」
「外だけ作っても、肝心の中身は作ってないじゃない。意味ないわよ!」
「確かに」
今更ながら気づいてしまった。
でも、まだ救いの手はあるハズだ。
「そういえば、この世界のどこかにアリアスがいるらしい。先ずはソイツを見つけようか」
「誰からの情報?」
「幼なじみ」
「その子はいないの?」
「さあ?」
「さあって、おい」
「まあ、いいじゃないか」
いつものニヤケ顔で彩華は仲裁に入る。
顔がツヤツヤしてるのは気にしないよ。俺って偉い。
「そういえばアイドルを食べたくなってきた今日この頃」
「さすがに問題になるから、やめてほしい」
「問題になるからこそ、それがバレるか否かの瀬戸際が燃え上がるんだ」
「知らねーよ、無差別エロリスト」
「考えたな。さあ、私と新たなる高みを目指そうではないか!」
「興奮するなよ。気持ち悪い」
何かもう扱いが決まりつつあるな。ここ三年間くらいでようやく決まるのか。長かった。
「とにかく。アリアスを見つけようじゃないか」
「どこにいるかも判らない人間を見つけるのって難しいのよ。解ってる?」
「じゃあ、どうすればいいんだよ」
皆して考えてみる。
何も妙案が思いつかず、誰もが唸るばかりだ。
その時だ。
「誰かいますかー?」
金髪に蒼い瞳。
皆が唖然とする。当然だ。
だって現れたのは、さっきまで話題に上がっていたアリアスだったのだから。
彩華が指をパチンと鳴らす。
「確保ォー!」
「ふぇっ!?」
まさか自ら現れてくれる僥倖は滅多にないから、捕まえるのは当たり前だった。




