ブレない人たち
異世界に戻った主人公だが、そこで不運にも盗賊と遭遇する。
やっと異世界に戻れた。早かったな。
現在、俺から彩華、白雪と桜って順で重なるように落ちてきていた。
平均45キロの3人分の体重を一身に受けて、息苦しい。俺が最後に落ちたのに、最初に落ちてきて下敷きになっていた。
あ、でも、胸の感触が……。
「やっぱり苦しいんだよ!」
「お前が早くどけよ!」
「お前らだろ!」
「うるせー!」
なんで怒鳴られるんだよ。
だが俺の馬鹿力ならば45キロ×3の重さであっても、容易に抜け出すことが可能かもしれない。
「うがぁー!」
結果、無理だった。
だって、
「秘奥義『千○殺し』」
彩華が尻にブスッと指を突っ込んできやがった。
ち、力が抜けてダメだった。
「お前、何なんだよ! 苦しくないのかっ?」
「むしろ嬉しいが?」
「あとの2人はどうしたっ?」
「奴らは気絶してるから、寄せることは難しい」
「この変態! 淫乱!」
「褒め言葉だ」
「くっ……」
ハイスペックすぎるだろ。
普通の人なら嫌がる罵倒が、この人には全く効かない。
ここで逆転の発想に至る。
「彩華さんって淑女の鑑ですね」
「な、に?」
「ほら、見た目は清楚だし、それに男性の上に乗っかるのは淑女の嗜みでしょ?」
「ほう、ならば!」
桜と白雪を押し退けて彩華は避けてくれた。
ニヤリと笑いが止まらない。
「騙されてやんのー! 普通に避けるほうが淑女だっつうことに気づかないでいるし」
「騙したな?」
「騙されるほうが悪い」
言っておきながら今更だけど思い出した。
前にもこういうことして、最後にはとんでもない仕返しが待っていることを。
後悔しても時既に遅かった。
「カンチョー高速10連発で許してやろう」
「ギャァァァァァァァァァァァ!!」
鬼のような形相で繰り出された高速連射のカンチョーが俺の尻を襲った。
どこか解らない森の中で男の絶叫が響き渡った。
◆◇◆◇◆◇◆◇
モクモクと煙が尻から上がるのが見える。
これのおかげで痔が悪化する要因となっているのは言うまでもない。
彩華は気にした様子もなく、鼻息を荒くして桜と白雪の衣服を剥ぎ取り始める。
さすが変態にして淫乱の彩華だ。やることなすこと全てR指定のモザイカーだ。
桜と白雪の衣服が下着だけとなった時、ちょうどよく2人が起きた。
「え……あれ……って、何やってんのよー!」
「ぐわぁー!」
「最低ですっ!」
「グハッ!」
桜が顎を蹴り上げ、白雪が彩華の腹に頭突きした。
ピクピクと痙攣している彩華を尻目に、2人は急いで服を着る。
まあ、白雪はまだ未発達だったか。桜はマジで大きい。
さて、そろそろ回復してきた頃か。
「おっ、ようやく起きたか」
「アンタねぇー。人が貞操の危機を迎えてたのに、どこで油を売ってたのよ」
「さっき彩華にカンチョーされて倒れてた」
「害しか生まない人じゃん、この女」
「アハハハ」
笑って誤魔化した。
同意しか出来ないだけに、認めるのは酷な気がした。
とりあえず全員無事なのだが、場所が解らない。
「こういう時、盗賊が出てくれると嬉しいんだけどなー」
「その前におんぶ」
「白雪、小さくて可愛いからってワガママは許さないぞ」
だが俺は優しいから、おんぶしてやる。
「出発しんこ~」
「どこへ行けばいいんだよ」
「夕日の向こう側」
「宇宙へ行けませーん!」
「男のロマンを愚弄する気?」
「お前、性別違うだろう」
「ゲフッ」
唾を出すなよ、汚い。
だから、早く盗賊でも何でもいいから現れてほしい。
そして祈りは通った。
予想外の形で。
「そこの女ども! 金と男を置いて行け!」
置いていく性別が違った。
「さすがBLが似合う男子だな」
いつの間にか復活した彩華が鼻息荒く、興奮した様子でいる。
復活しても、不本意なことしか言わないよな。
男を狙う盗賊って誰得だよ。
「嫌だ、と拒否する」
「ならば力づくで奪うまでっ!」
「本気だっ! 桜、ヘルプミー」
「おい、私を頼らんのかー!」
「お前はただの淫乱だ」
「まあ、確かに」
認めるのか。
そんなことより剣を構えた盗賊に目を向ける。
既に桜が制圧していた。
あっという間だった。
「時代錯誤よ。銃を使いなさい」
「いや、そうしたら勝てないじゃん」
「まあ、そりゃあ」
「ほれ見ろ」
「うるさいわね」
盗賊の持ち物から地図があったので奪い取った。
それを見ても現在地は判らなかった。
「とりあえず川を見つけようか」
「何でだ?」
彩華が聞き返してきた。
「川に沿って歩けば、街に出るだろう。昔は川の流れてる近くに街が繁栄してたし」
「歴史に詳しいな。私はホトトギスの上の句しか知らん」
「マニアックだ」
「鳴かぬなら、鳴かせてみよう、ホトトギス」
「腋を刺激すんな! 性感だからやめ……!」
力が抜けてしまって白雪を落としてしまった。
「ぷぎゃっ!」
「あ、サイテーだな貴様」
「お前だよ!」
「人は私をサイテーと言う。私って罪な女よねー」
「本当にな!」
「ねぇ、静かにしてくれない? 集中できないんだけど」
『すみませんでした』
桜が地図を真剣に読んでいるから、ここは静かに見守ろうじゃないか。
「白雪、もう一回おんぶしてやるよ」
「怒ったもん。お前の痔を悪化させてやる!」
「ギャッ!」
悲鳴をこらえた俺って偉いよね?




