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第三の魔族

 翌日、バーンズはティリス、アランと一緒に町の外の空き地に来ていた。


「ここで色々とやっていたわけか」


 バーンズはつぶやきながら、所々穴が開いたりして地形が変わっている空き地を見回した。かなり激しいことをやらなければ、ここまでになるはずもなく、ティリスの力が桁外れのものであることはよくわかった。


「さあ、早く始めようぜ」


 ティリスは早速準備万端で構えをとっていた。バーンズは背中の剣を抜いて軽く構える。


「いつでもきなさい」

「言われなくても!」


 ティリスは後ろに大きく跳び、そこからさらに上空に跳び上がった。急降下しながら拳を突き出すティリスをバーンズは後ろにステップしてかわした。


 拳が直撃した地面は大きくえぐられた。バーンズはその力を見て、まずまともには受けられないものであることを察した。


 ティリスはさらにその場から斜め前方に大きく跳躍した。そうして勢いよく着地すると、その位置、バーンズの斜め後方から一直線に突進する。


 バーンズがその一撃を剣で逸らすと、ティリスはほとんどそのままの勢いで体勢を崩して地面を転がっていった。


 ティリスは土埃まみれになりながら立ち上がろうとしたが、そこに拍手の音が響いて、その動きは中断された。


「さすが、俺の見立て通りの腕だな」


 レモスィドがゆっくりとティリスの背後から姿を現した。そして、鞘付きの曲刀をゆっくりと抜いた。


「少し相手をしてもらおうか」


 バーンズは無言で剣のスロットにカードを挿し込むと、低い体勢になって構えた。


「ちょっと待て!」


 ティリスがレモスィドにつっかかろうとしたが、その前の地面がいきなり隆起した。


「今は手を出さないほうがいいよ」


 アランは大声でティリスに告げる。ティリスはバーンズとレモスィドを見ると舌打ちをして、後ろに下がった。


 邪魔がいなくなったレモスィドは、曲刀をぶら下げたまま無造作に歩いてバーンズに近づいていく。バーンズは構えたまま微動だにせず、それを見据えている。


 そして距離が詰まってくると、バーンズは剣を振り上げた。その軌道から氷の刃が発生してレモスィドに襲いかかった。


 レモスィドは曲刀を振ってそれを簡単に砕く。バーンズはさらに連続で剣を振って氷の刃を作り出すが、全て同じように砕かれてしまう。


 バーンズは前に走り出しながら素早くカードを入れ替える。そして今度は上段から剣を振り下ろした。レモスィドはそれを曲刀で受けたが、その瞬間に接触した部分で爆発が起こって曲刀が弾かれる。


 バーンズはその隙にもう一度剣を叩き込むが、レモスィドはそれを後方に宙返りしてかわした。そこでレモスィドは踏みとどまり、様子を見る。


「その剣は面白いな」

「勇者様から頂いたものだ。どんな手段であっても砕くことはできない」

「それは楽しみだ」


 今度はレモスィドが踏み込み、曲刀を袈裟切りに振るった。バーンズはそれを剣で受けるが、予想以上の力に押し込まれてしまう。


 だが、バーンズは身を引きながら受けていた曲刀を逸らし、レモスィドと間合いをとった。両者ともお互いの得物を構えなおす。


「まだ、その剣の力を全て出してはいないな」

「そうする状況でもないだろう」

「いい判断だ」


 レモスィドは曲刀を下げ、地面を削るようにそれを振り上げた。跳ね上げられた土がバーンズに降りかかるが、それは爆発で四散させられる。


 それに紛れてレモスィドはバーンズの横にまわり、そこから曲刀をその腹に叩きつけようとする。バーンズはそれに自分の剣を合わせると、その瞬間の爆発を利用して曲刀を弾いた。バーンズはすぐさまそこに踏み込み、横殴りに剣を振るった。だが、レモスィドはその上を跳んでかわす。


 バーンズはすぐにレモスィドを追い討ちをかけようとするが、その体は着地と同時にもう一度跳躍してそこからあっさり逃れた。


 そこでバーンズは剣のカードを入れ替え、それを振るおうとしたが、次の瞬間二人の間に何かが勢いよく落ちてきた。


「レモスィド、何を遊んでいる」


 高く澄んだ声が響き、土煙の中から豪奢な格好をした一人の細身の女が姿を現した。レモスィドはその姿を見てため息をつき、曲刀を収めた。


「フィエンダか。何の用だ」

「ファスマイドと貴様が集まっているようだから、見に来たのだ。で、何を遊んでいる」


 バーンズはその様子を見ながら、もう一度カードを入れ替え、油断なく構えた。だが、フィエンダはそちらに全く注意を払わない。レモスィドは首を横に振ってから口を開いた。


「何を言ってる。そもそもこの町の人間に力を与えたのはお前じゃないのか」

「力だと? そんなことは知らないな。お前がやったわけでないのなら、ファスマイドは何もやらないだろうから、誰か他の奴の仕業だろう」

「どういうことか、説明してもらえないかな」


 そこに手ぶらのアランが割って入った。フィエンダは初めて気がついたような顔をしてその顔を見てから、レモスィドのほうに顔を向けた。


「この人間は何だ?」

「アランっていう人間だ。面白い奴だぞ」

「ほう」


 そこで初めてフィエンダはアランのことを見た。上から下まで観察してから、軽く指を鳴らした。その瞬間、アランが一歩後ろに下がると、その位置から巨大な刃のようなものが突き出た。


「これを感知して避けるとは、確かに人間にしてはよくやる」

「じゃあ、あなたの知ってることを教えてもらえるかな」

「さっきも言っただろう、私は何も知らん。力を与えるなど、このレモスィドでもないし、ファスマイドの奴もそんなことはしないだろう。他を当たるんだな」


 そしてフィエンダは二人に背を向けようとした。だが、その前の地面が隆起してそれを阻む。


「せっかく会えたんだし、そんなに急いでどっかに行くことはないじゃないか」


 アランの言葉にフィエンダは振り返った。その視線は剣を構えているバーンズにも注がれる。


「その剣を下ろせ。今は何もする気はない」


 アランがバーンズに向かってうなずくと、バーンズは剣からカードを抜いた。フィエンダはそれを確認してから、アランの目を見た。


「で、何の用だ。人間」

「色々教えてもらいたいことがあるんだ」

「なぜ私が」


 そこにレモスィドが割って入った。


「まあいいだろ、たまには人間につきあうのも悪くないぞ。それに、この連中は中々面白いし、あの勇者なんて呼ばれた人間とも関わりがあるらしいしな」


 それを聞いてフィエンダはいくらか興味をそそられたようで、髪をかきあげてからレモスィドをどかすと、アランの目の前まで歩いてきて、立ち止まった。


「少しだけつきあってやろう。せいぜい私を退屈させないことだ」

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