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『双星のヴァルキュリア 外伝 星座になった親子の約束』前編

プロローグ


ドサッ……

「お母……さん」


もう歩けない……悲鳴をあげる小さな体。

限界以上の力を引き出して何日も歩いてきた。

母親に会いたいという想いだけで……


「また、聞き……たい……な」


少年の目の前に二人で話した光景が拡がっていった。

夜空に散りばめられた星が煌めく。

親子が窓から星を見上げていた。


「マルコ、星には沢山のお話があるの。

今日は……お魚になった親子の話をしましょう」

「うん!お母さん、どの星なの?」


母の話してくれる星の話は少年の胸を踊らせた。


ザッ……ザッ……


何者かの足音がマルコに近づいてきた。

本文


キィーン……

頭の羽根飾りが哀しみに共鳴する。

白のヴァルキュリア・ミストが地上に舞い降りた。

森の中で小さくとても強い哀しみの存在。


泥まみれの靴、手足は草や枝で切り傷だらけ。

「子供が一人でくる場所ではないのに」

男の子の目にかすかに白い足が見える。

「だれ……お母……さん」

今にも消えそうな細い声で呟いている。


「……約束」

小指が少し動いた。

哀しみは泣きそうに、ふるえている。


「母親の幻想がみえているのか」

「哀しみよ、我が導こう。安心するがいい」


ミストが腕を振る。

シュッ……

神の糸によって瞬時に切り取られた。

ミストは両腕をひろげて、包むように哀しみを浄化する。


「我とともに逝きるのだ。エインへリヤーとして」

漆黒の結晶となった。

内にはうっすらと星のような小さな輝きが見えた。

ミストへ記憶と想いが流れ込んできた。


「お母さん、何かあったの?」

マルコは心配そうに見つめる。


実は一ヶ月後

軍の工場で労働に従事するよう要請が届いていた。

期間は一年間。

まだマルコに言えないでいたのだ。


「何でもないわマルコ。さぁ、ベッドへ行きましょう」

「寝る前に星の話をしてあげるからね」

夜空を窓から見上げながら母親は話す。


「今日はお魚になった親子の話をしましょう」


「はるか昔、神様たちが川辺で楽しく宴会をしていたの。

そこへ悪魔が現れた。

驚いた親子の神様は魚に姿を変えて川へ飛び込んだの。

二人は離ればなれにならないように

帯でつないで逃げたと言う」


話し終わるとマルコはぐっすりと眠っていた。


「おやすみ、マルコ」

母親はマルコほっぺにそっと口づけをした。

次の日、母親はマルコに工場へ行くことを打ち明けた。


「嫌だ!行かないでよお母さん。一人にしないでよ」


「ごめんね、マルコ。

お母さんではどうすることもできないの……」


「一年間よ、それが終われば帰れるわ。

それまでは親戚のおじさんの家で待っていて。

お願いよマルコ。いい子でしょ?」


マルコはしばらくは拗ねていた。

「お母さん……絶対だよ。一年で帰ってきて。

約束して」

指切りを交わした。


「マルコをよろしくお願いします」

「ああ、わかったよ。一年間頑張っておくれ」

「マルコは預かるよ」


家には夫婦と、マルコと同じくらいの男の子がいた。

雨がポツリポツリと降り始めた。


「お母さん!お母ーさん!」

泣かないと決めたのに

……マルコの目から涙が止めどなく流れた。

母親が見えなくなってもずっと、ずっと見つめ続けた。


寂しい

……マルコはこっそり持ってきたカレンダーに母親が

帰ってくる日に印をつけて数えることにした。


親戚の家での生活は、ご飯は1日一回だけ。

男の子はマルコに意地悪をしてきた。

おばさんへ言っても、マルコが怒られるのだった。


そんなある日、事件が起きる。

ガチャン!

飾られていた花瓶が落ちて割れてしまった。


「マルコ!どうしてくれるだ!」

「僕じゃないよ。やってない」

「嘘つくんじゃないよ!」

「居候なのに何言ってるんだ!反省しろ」

「それにこのカレンダーは何だ?」


ビリッ……ビリッ……

ゴミ箱へ投げ捨てられた。

「やめろ!僕のだ」

「何だその生意気な言葉は!しばらく出てろ!」


バタン!

扉が閉められた。

「……お母さん」

「……会いたいよ……お母さん」


マルコは夜空を見つめて星を探した。

山を越えたら工場がある。

お母さん……マルコの足が前に動き出した。


ミストは目をそっと開く。

「お互いを想う気持ちか。

母親と子供に距離など関係ないのかもしれない」


胸の宝石に指を当てる。


「マルコよ、願うがいい。

どのような形になろうとも……刻がくれば」


そう告げると、その場からミストは姿を消した。

マルコの亡骸に白羽根が舞い落ちた。


『双星のヴァルキュリア 外伝 星座になった親子の約束』前編 Fin

エピローグ


「お母さん……会えるかな」

マルコは夜空を見上げ、星に手を伸ばした。


物語は後編へ続く

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