表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

118/119

エピローグ

件名:第四倉庫 地下11階における交戦の決着について(証言報告)

作成者:D中隊 第一班 マルコ・ベンデッティ曹長(以下「私」)

提出先:中央司令室 記録課/調査局 合同

機密区分:公開可(個人情報と戦術上の秘匿部分を一部編集)


1. 要約(Executive Summary)


私は地下11階・制御コンピュータ室前のT字廊下において、ワード=ザルガと走者エステバンの“決着”に立ち会った。

結論から述べる。勝敗は、実務的にはエステバンの勝利である。理由は二つだ。


彼は自らの身体と時間を支払い、「認証100%」に到達させた。四基の“トゥカーノ”は予定通り起動し、宇宙人側の離脱プロトコルを発動させた。


認証完了を目の当たりにしても、ザルガは攻勢を止めなかった、儀式の終幕を認める言葉を発したが、戦域から退いかず。致命打の確認をもって、戦術目的の達成と敵意の終息が同時に生じており、これを“決着”と定義する。


以下、時系列で当該瞬間を記録する。


2. 現場状況(抜粋・私見を含む)


場所:ヴァルゼア・グランデ食品流通センター第四倉庫 地下11階/制御室前T字廊下


環境:窒素ミスト散布後→非常吸気で流向反転→低酸素/粉塵混在→その後、ザルガによる大気の渦(押し・吸いの二重螺旋)形成


自隊の配置:私は制御室内のコンソールでカードキーの保持・認証監視。扉は渦で引き剥がされ、廊下と視界が直結。


敵味方:対峙はエステバン対ザルガ。私は非戦闘(カード維持)。


3. 証言:当人視点での時系列


※以下は私の一次記憶であり、録音・録画の補助はない。音・匂い・痛覚の混在により主観が強いが、再確認ののち記す。


(1) 認証進行中〔61%→70%〕


渦の中心でザルガが歩く。歩幅は小さく、すでに“ザルガ”も限界という印象。

私はカードヘッドを親指で押さえ、一ミリのズレも許さない。エステバンは配管にしがみつき、真正面の矢は能力で殺し、肩は捻り、腰は受けた。血が床に散った。そのとき、彼が短くこちらを見た。目だけが生きていた。


(2) 臨界の前〔79%→92%〕


ザルガの装甲に罅が増える。私には、それが強度の限界に見えた。

彼は言った。「試合はお前の勝ちで良い。だが、勝負には勝たせてもらう」

“勝負”とはザルガ個人の美学の側だと理解した。任務と美学が、廊下で食い違っていた。


その後、いくつかの会話を経て、エステバンは息を吐き、「それを文明って言うんだよ」と返した。

この返答で、彼が次を賭けるつもりだと私は悟った。


(3) 認証直前〔98%→99%〕


ザルガ、極細の直線の刃を組む。

配管にしがみ付いたままでは、回避が困難と悟ったエステバンは笑った。「角度がないなら、ないなりに」

彼は配管を放し、自ら渦へ身を預けた。物理的には愚策。だが渦は中心へ運ぶ。その一瞬で、距離は“ゼロ”に縮む。


(4) 重なりの瞬間〔100%〕


扉の蝶番が叫び、私は緑のランプを見た。

《AUTENTICAÇÃO CONCLUÍDA》

同時に——二つの影が完全に重なるのを、私は目で追った。


ここが“決着”だ。


ザルガは“致命傷は無効化される”ことを学習しており、無数の小裂傷の矢で刻む態勢。


エステバンは殴る距離までを“捨て身”で稼ぎ、右肩を捨てた体勢のまま、空いた左の拳で、ザルガの顔面に体当たりに近い形の右ストレートを打ち込んだ。


これは音でわかった。骨と鉄の混じった鈍音。矢の雨に紛れ、一拍だけ渦が鈍る。


同時に、制御室側の副系が立ち上がり、発射系の遠隔連携が成立。

大気の流れにズレを感じた。ザルガの拍が半足遅れる。

この“半足”を、エステバンは逃さなかった。尾根(しっぽの根)を絡め取る角度から、ザルガの背中に攀じ登ると、動かない右腕をザルガのの首に巻き付けて、その動かない右腕を左手で思いっきり引っ張りチョークスリーパーを決めていました。

私は息を吸うことを忘れていた。


(5) ザルガの言葉


矢はまだ降っていた。だがその中心で、ザルガは初めて声を震わせた。

「……儀は、果たされた」

それは怒りでも敗北宣言でもない。“終幕”の合図。

彼はエステバンの襟元を掴み、エステバンの頭を、ザルガの横顔に、ごく近い距離で持っていくと、もう一言、低く囁いた。


「覚えておけ。“生”に寄り添う負けは、負けではない」


私は、その言葉の意味を理解するのに数秒を要した。

渦が弱まる。棘が畳まれる。

ザルガは自重で後退し、砕けた壁の方へ倒れ込んだ。理由は不明だがザルガの体が、徐々に灰になっていくのが分かった。


(6) エステバンの反応


エステバンは片膝をつき、私を見た。

唇は切れて血が滲んでいたが、やっぱり笑った。

「……任務完了。会計はツケで」

それが彼の“勝ち宣言”だった。私はようやく、息を吐けた。


4. 所見(Analysis)


戦術面:


窒素散布→吸気反転の二段は、衝撃波生成の“呼吸”への干渉として有効。


渦形成後の“中心ダイブ”は極めて危険だが、距離をゼロにする唯一の合理として成功。


致命傷無効の特性を逆手に取り、“致命傷寸前の総量”を引き受けながら**“自壊を誘発する打撃”**を通したのが勝因。


心理・規範:


ザルガは戦闘を儀式と定義している。“目的が達した瞬間に干戈を収める”規則があが従わず。


攻勢を継続。儀式の完遂を選択。


決着の定義:


任務の達成(Launch OK)


敵意の停止(Hostile Cease)


相互の言葉(終幕の合図)

上記三点が同時刻に成立。ゆえに“決着”と判断。


5. 付記(Personal)


私はカードを押さえた指の震えを、今も覚えている。


もう一つ覚えているのは、エステバンの笑い方だ。

血で濡れていても、あれは人を生かす笑いだった。


彼が残した「会計はツケで」は、私への借りでもあるが、生にツケ回しをするなという冗談だったのだと思う。

だから私は生きて、ちゃんと払う。食卓で、仕事で、毎日で。


6. 結語


以上をもって、**ザルガとエステバンの“決着”**は、


任務の完成により戦争を終わらせ、


儀の終幕により敵意を止め、


一言の交換により人間として区切られた――


……そう、私は証言する。


D中隊 第一班 マルコ・ベンデッティ曹長

ランキング上位入りを目指してます。

続きが気になる方は、ブックマーク、評価をお願いします。


※PV増加の実験のため、投稿時間を変更することがあります。

続きが気になる方はブックマークを推奨しております。


終わりでござるが、蓋を開けてみると、死亡率が高すぎるね。

構想時点では3、4人生き残ると思ってたけど、まさか2人しか生き残らないとは……。


まぁ、最後は「蛇足のあとがき(書き終わった感想)」を投稿して終わりにしようと思います。

お疲れ様でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ