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魔法の扱いが難しい!!  作者: 匁 参七伍


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121.王様からの課題を考える

 翌日。一晩経って魔力が回復した神殿長に呼び出されたため、パラデシア達と共に神殿長室を訪れる。


「昨日はお手数をかけましたね。ほんの一瞬ではありましたが、私も神々しい神のお姿を拝見することができました。お言葉を交わす時間すらありませんでしたけれど、その一瞬で天啓を賜りました」


 魔術士級である神殿長の魔力量だと、あの精神世界の滞在時間は微々たるものだった、と。私の魔力量は魔導師級という枠に当てはまるわけだが、最初の滞在時間が三十分程度だったことを考えると、やはり私の魔力量はおかしい。一瞬しか滞在できない魔術士級が順当に魔導師級になった途端、滞在時間 = 魔力量が何十倍にも跳ね上がるとは考えにくいからだ。多めに見積もっても数分が関の山だろう。まぁ私の魔力量についての原因はベンプレオで間違いないから、捕まえて吐かせるか、そのうちのじゃロリ神に聞いてみてもいいだろう。


 言葉を交わす時間は無かったが天啓は受けた、ということは、脳内に情報を直接流し込まれるアレか。神殿長が何を聞いたか気になるところだ。


「内容はアニスから聞いたことと概ね一致しています。それから、今後私が進むべき道の指針を示してくださりました」


 あー……、私の時の場合だとエミリアさんを仲間にすると良い、みたいな感じのやつだな。結果が結果だっただけに、その言葉に従うかどうかは吟味してほしいところである。とはいえ本人が望んだことに対して神が応えた助言――つまりは魔法の行使の結果だから、普通に考えたら従ったほうが吉か。ただしそれが良い結果になるかは保証されない。まさに言葉通り神のみぞ知るところである。


「差し当たっては、魔術士と魔導師の人口を増やす必要があります。アニスが神と対話したことは公表していませんが公然の事実として広まっていますので、それを最大限利用しましょう」

「えーっ!! 神殿長も神と会ったんですから、私じゃなくて神殿長の名前使ったらいいじゃないですか!!」


 正直私ばかり矢面に立ちたくないというのが本音だ。もう手遅れだとは自覚しているが、それでもこれ以上目立ちたくない。


「神と対話した者が短期間に二人も現れたとなると、神秘性よりも疑念が強くなります。アニスだけならば、少女であること、神の怒りを操れること、革新的な発想で世の中に影響を与えていること、そして王族から認められていること。これらのことから、私などより信憑性も神秘性も、そして説得力も高まります。唯一無二の存在とすることで、アニスの影響力は絶大になるのです」


 むぅ、言ってることは確かに納得できる。言ってみれば誰もが知るビジュアルの良い広告塔、インフルエンサーになれということだ。私が神殿長の立場だったら利用しない手はない。神殿長には散々お世話になっているし、神殿というスポンサーの意向だと言われれば断るわけにもいかない。


「……わかりました。それで、私に何をさせるつもりなんですか?」

「名前だけ貸してください。魔物を食べることで魔力を得られる、ということをアニスが神から教えられたと喧伝したうえで、魔物肉限定の料理大会を開催します」


 ははぁ、読めてきたぞ。


「つまり、その大会の主催者の一人として私の名前を使いたい、ということですね。私が神から言葉を聞いたという事実を広めることで魔物肉に対する抵抗感を薄れさせ、そのうえで魔物肉が美味しく食べれるようになれば一般家庭にも広がり、徐々に魔術士人口も増加していく、と」

「話が早くて助かります。そして私が魔導師級となるためにも、手軽に魔物の肉が食べられる環境は必要です。神と精霊の信徒として、少しでも早く神と同じ高みに至らねばなりません。それが神の望みですので」


 この世界の人間が精神エネルギー生命体と同じ次元に至ろうと思うなら、それこそ数百年とか数千年とか掛かるかもしれない。神殿長としては、自分の代で一歩でもそこへ近付くための道を切り開いておきたいのだろう。


「確認ですけど、その料理大会には名前を貸すだけで、別に審査員として出席したりする必要はないんですよね?」

「ええ。そこは自由にして構いません。どちらを選んでも対応できるようにしておきます」


 美味しい料理に興味はあるが、それよりも目立ちたくない。どうせ流行ってしまえばいつでも食べれるようになるのだから、大会なんかに出席してわざわざ世間への露出を増やす必要はない。

 魔物肉を食べることで私のおかしな魔力量が更に増えるかもしれないが、そこは正直どうでもいい。身体に異変が出たりしなければ気にすることでもないだろう。


「ところでアニスは、陛下から出された課題についてどうするか決めましたか?」


 王様からの課題――魔法陣に関わる許可を出す条件として、魔法陣の知識を利用せずに王様が納得できるだけの功績を上げろ、という無茶振りだ。期限は特に無いみたいだが、少なくとも一年後のサクシエル魔法学園入学までには終わらせておきたい。


「まだ漠然としか考えてませんけど、ひとまず必要そうな情報を集めようと思います」

「あら? それは方向性がある程度定まったということですわね。どういった情報を集めるつもりなのですか?」

「それについてなんですが、パラデシア様は土地や歴史を詳しく調べられる場所に心当たりはありませんか?」


 問われてパラデシアはほんの少し考え込んだあと、回答を口にする。


「国立図書館……と言いたいところですけど、貴女なら無垢姫に取り次いで王宮の図書室が利用できるのではなくて?」


 王宮の図書室!! そんな所があったとは。

 国立図書館は私も考えたが、今まで手製の本が主流だったこの国の蔵書数はぶっちゃけ多いとは言えない。何度か利用したことはあるが正直専門性が高い本はあまり無く、利用料も払えなくはない金額だがそれなりに高い。本は高価な物であるため、あくまで富裕層向けの施設で平民が利用することを想定していないからだ。

 王宮の図書室ならば、私の知りたい情報が載っている本が見つかる可能性は高い。





「――それで、アニスはわたくしに会いに来てくれたというわけですね」

「はい。なのでルナル……ルティ様に図書室利用の許可を戴きたいのですが」


 無垢な笑顔の無垢姫ことルナルティエ第二王女に向け、うっかり「ルナルティエ様」と言いかけてしまい睨まれた。巡礼の旅の前に「ルティ」呼びを強制させられたのを思い出し、慌てて言い換えて事なきを得る。


 立ち話で終わるような話でもないので、一緒に来てもらったパラデシアも交えてまずは三人でティータイム。先に近況報告や雑談を挟み、頃合いを見て王女が本題を促してきた。


「アニスは王宮の図書室を利用したいということでしたね? アニスの頼みならば快く許可を出したいところですが、まずは理由を聞きたいところですね」

「ルティ様は、私が魔法陣に関わる条件として、陛下が納得できる功績を上げるという課題を出されたことを知っていますか?」

「ええ。父から直接伺っています。……なるほど、そのための調べ物をしたいわけですか」


 王女が頬に手を当てながら難しい顔をする。もしかしたら許可は少々厳しい?


「許可を出せるかは調べ物の内容次第、でしょうか。何を調べたいのですか?」

「国内にある土地の詳細な地形と、その土地に関する歴史を調べようかと……」

「ごめんなさい、その理由ではたとえアニスでも許可を出すわけにはいきません。土地の歴史程度なら問題ありませんでしたが、詳細な地形となるとそれは軍事機密になります」


 あっ、そうか!! 盲点だった!! 地球だと地図なんてネットでいくらでも見放題だが、衛星写真も航空写真も存在しないこの世界では、大雑把な地図は市場に出回っていても、より詳細な地図となると軍事と直結してて当然だ。見せられるわけがない。


 これは困った。初手から躓いてしまった。


「まさか貴女がそんな物を調べようとしていたなんて……」


 パラデシアが額に手を当て、呆れた顔で首を左右に振る。

 いやまぁ、これは確かに私の考えが甘かった。呆れられても仕方がない。


「許可を出すわけにはいきませんが、参考までにどこの土地を調べようと思ったのですか?」

「えーと、一応手始めにアプリコ村周辺を調べたいなと思ってました」

「調べようと思った理由は?」

「アプリコ村はミジクの森の開拓がきっかけで出来た村だと聞いたことがあります。ですが開拓に失敗してからはそのまま放置されてますから、例えば私がその開拓を成し遂げれば十分な功績になるかなと。利用できる領土が増えるわけですし」


 そう、私が考えている功績とは(ミジクの森に限らず)使える土地を増やすことである。

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