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邪眼の蜥蜴はイレギュラー  作者: 若槻味蕾
第5章(IF)
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6. ブライダリー・ダークソーン その①

この「ブライダリー・ダークソーン」の内容は、諸事情により他のストーリーには一切反映されていません。裏でこんなことが起きていたかも? というもしもの話と考えていただけると幸いです。

「はぁああ――っ……」


 いつも以上に死んだ目を腐らせて、怪原(かいはら)希瑠(ける)は、華やかな場に似合わぬ重苦しい溜め息をつく。


「ちょっとあんた、なに陰気ガス吐いてんのよ。空気が汚れるでしょ」

 それをたしなめる(罵倒する)のは、希瑠と同じ年頃……いや、同い年の友人。艶やかな髪を年不相応なツインテールにまとめた、気が強そうな女性だ。


「陰気ガスって何だよ……いや、陰気にもなるだろ……」


 ここは市で唯一の結婚式場、イモータル柚葉(ゆずのは)のチャペルだ。もちろん彼らが結婚するわけではない。


 結婚するのは、俺の母親と、そして、()()()なのだった。


「ははーん。まさかあんた、おばさんの結婚がイヤなわけ? …………もしかして、あんたってマザコンだったの? うわ、キモチワルーイ」

「うるせえ……別に、そういうことじゃあなくってだな……」


 こいつは知らない。今日結婚する新郎と新婦の関係性を。だから、こんなにも呑気でいられるのだ。

 どうしてこんなことになってしまったのか……いや、今さら問うまでもない。あれは、半月前のこと――





「……やっぱり、寂しいわね」


 春。桜と共に花粉が舞い散る中に、忘れた記憶と君の声と口元のマスクが戻ってくる四月上旬。

十五年前のクリスマスイヴから少し暗くなった夜空を見上げながら、年齢錯誤なツインテールを揺らして、神院(かんにん)優愛(ゆめ)は家路をたどる。


 彼女がまだ小さかった頃、すなわち二十年ほど前、この柚葉(ゆずのは)市は、わりと星がきれいな町であった。それは今も変わることはない。春になればしし座流星群なども観測できる。そこいらの田舎町程度には星がよく見える。まあまあ田舎だからね……。


 だが、その流星群の名の由来となった星座は、もう拝むことは叶わない。川の向こう岸に思いをはせる織姫と彦星も、そして織姫を狙う白鳥もそこにはいない。残ったのは、星座でない星々だけだ。


 北極星に方角を頼っていた時代でもないので、実生活で困るようなことはさほどないのだが、やはり星座という主役がいない空は寂しい。この世に存在する三等星以上の明るい星々はそのほとんどが何らかの星座を構成していた。それらの消失により、明らかに夜空は以前ほどの美しさを失ってしまったのだ。

 ところがだ。四か月前、昨年の十二月、オリオン座とアンドロメダ座というふたつの星座が、夜空に戻ってきたのだ。それほど星に興味があったわけではないが、優愛は内心狂喜した。二つも戻ったならば、他の星座たちもいつか戻って来るかもしれない。英雄たちが駆ける夜空を、もう一度見られるかもしれないのだ。


 優愛の期待通り、その一か月後にもペルセウス座が夜空に帰ってきた。科学的な根拠は一切ないのだが、世論は星座がいつの日か全て戻ってくることはもう間違いないとみている。

ただ、このペルセウス座に関しては、気がかりなことが一つある。星座を構成する主な二十四個の星のうち、二つを失った状態で戻ってきたのだ。もしかすると『英雄たちの(ヒーローズ・)聖夜遠征(エクスペディション)』の名の如く、彼らはどこか遠い世界で、何か強大な敵と戦っているのではないか、とも優愛は思っている。もちろんこれも根拠のない妄想にすぎないが、そもそも彼らが消えた理由さえ、十五年たった今でも全く分かっていないのだ。そういう状況なら、別にどう考えても構わないだろう。


 そんな独想しかすることがないことにふと嫌気がさして、優愛は立ち止まった。適当に音楽でも聞こう、とハンドバッグからスマートフォンを取り出そうとした、その時である。

 突然、夜の通りに悲鳴が響き渡った。


「ぎぃやあああおおおおおおぅええええええいいいあああああああぐううううぎゃああえええおおおおぐああごぐあああああああ」

「っ!? な、なによっ!」


 辛うじて女性のものと分かる、しかしあまりにも強烈すぎる悲鳴。今まさに拷問にでもかけられているような、そんな悲鳴。優愛は恐怖のあまり、その場に座り込んだ。


 悲鳴は、向かって右側にある古ぼけた洋館から発せられていた。見かけがぼろぼろで幽霊屋敷のようで、かなり怖いのでなるべく見ないようにしていつも帰っていたが……まさか、本当に幽霊屋敷だとでもいうのだろうか。


「ぎぇえええいいいいあああああぐううげえええおおおおおおお」


 悲鳴は止まらない。後ずさりしながらも、優愛はどうにか立ち上がり、洋館の方を何度も振り返りながら、全速力の早歩きでその場を後にしたのだった。



「はぁ、はぁ……ふぅ」


 どうにか自宅にたどり着き、優愛はベッドにばたりと突っ伏した。

 あの悲鳴は何だったのだろう。思い出すだけで身の毛がよだつような、痛々しい声だった。


 幽霊なのだろうか……だが、あの家は空き家ではない。朝通る時に一度確認したのだが、しっかりと表札がかかっている。名前は確か「(ばん)」だったか。


 幽霊屋敷に好きこのんで住んでいるのか。それとも……あれは、本当の人間の声だったのか。その場合、あの家の中では何が行われているのか……?


(……だめ。これ以上は、だめ)


 想像しかけた自分を、優愛は一度目を閉じて制した。その場合、あたし一人が何をしたところで、どうなるわけでもない。今日の悲鳴を聞いた誰かが、きっと警察に連絡してくれるだろう。あたしは何も聞かなかった。全て忘れるんだ。もっと何か楽しいことを考えるのだ。


 そうだ。久々にあいつをお茶にでも誘って、いつものように愚痴を聞いてもらってリラックスしよう。明日はちょうど定休日、特に予定もなかったはずだ。あいつは一年中予定無いしね。

うふふ。あいつに会えると思うと、心が躍る。ちょっぴり恥ずかしいけど。





(暇だ……ヒマだ……ひまだぁ…………)


 同じ日、それより数時間前のことである。希瑠は、先ごろ実に四年目に突入したニート生活の中、完全に暇をもてあましていた。


 ソーシャルゲームも早々にスタミナが尽き、溜まっていたアニメもドラマも消化しきってしまった。買い物に出かけようにもこづかいはスッカラカンで、五人もいるはずの他の家族は全員留守だ。母は買い物、一番上の妹は大学、弟は高校、下二人の妹は中学校からまだ帰っていない。


 願わくば、一番下の妹に先に帰ってきてほしい。彼女だけが、今のところ俺の三次元での唯一の心の安らぎなのだ。


 ぼけーっと妹の顔を想像しながらニヤニヤするという、社会的にも倫理的にもアウトなことをしていると、ぴんぽーんとインターホンが鳴った。


「おっ、お姫様のお帰りですかね?」


 鼻歌交じりにモニターをのぞき込むと、そこには期待通りの人影があった。

 耳にかかる部分だけが、この家にしては珍しく平たい胸までのび、前髪はぱっつん、そして残りはショートカットという珍妙な髪型である。身長はかなり低い……一四〇センチ前半だと、この間聞いた。


 怪原家の三女にして末っ子・怪原(かいはら)綺羅(きら)である。


『た、ただいま』


「ほいほーい、今すぐお迎えに上がらせていただきます!」


 小走りで長めの廊下を駆けて行き、ドアを開ける。


「おかえり、綺羅! 今日は少し遅かったんじゃないか? まあ、おにいちゃんも寄り道はよ、く、し…………たものさ」


 そこで希瑠は、驚き静止した。


「う……ひくっ…………ひっく」


 希瑠の顔を見るや否や、何かの(せき)が切れてしまったのか、唐突に綺羅が泣きはじめたのである。


「ど、どうした!? もしかして、いじめられたのか!?」


 許さん、だとしたら許さん、今すぐにでも関係者全員をひっとらえ、身ぐるみひっぺがして市中引き回しの上、硫化水素の充満した密室にぶち込んでくれる、と希瑠はかなり物騒な方向に怒りを燃やした。しかしその憤怒は、思わぬ方向に裏切られることとなるのである。


「ひっく…………えぇん……おかあさんが、うわきしてるぅ~!!」





 さて。当の『おかあさん』・怪原恵奈(えな)はというと、寄り道しているところを発見した次男を引き連れ、怪原家からバスで三駅ほどの大型ショッピングモールで、今晩の食料調達を終えたところであった。


「母さん……ひとつくらい持ってくれてもいいんじゃないか……」

「だ~め、それじゃ罰にならないじゃない? ちゃんと一人で持ちなさい」


 鬼だ。鬼がここにいる。不肖(ふしょう)・怪原理里(りさと)、この世に生まれ落ちて十七年目、この母の性格を知らないわけではないが、それでも多少は勘弁してほしいと思う。


「ちょっと、お手洗いに寄ってもいいかしら」

「あー、うん。じゃあ、そこのベンチにいるよ」

「分かったわ。ちょっとまっててね」


 言い残し、恵奈は女子トイレに消えていった。

 やれやれやっと休める、と理里はのったりのったりベンチに向かい、どさっと座る。特にすることもないので、たまたま近かったフードコートの客席を見回すことにした。


 間近の席。カップル。爆発しろ。その右。カップル。爆発しろ。その後ろ。カップル。爆発しろ。この時間帯では仕方ないのかもしれないが、何だこのリア充率の高さは。


 理里には恋人はいない。いや、いると言えないこともないのだが……この場合は、『いた』と表現すべきだろう。何せ俺の愛する人は今、夜空にいるのだから。


 そんなことを考えながらぼーっと席を眺め続けていると、理里の目に、奇妙な光景が映った。


(……あれ、母さん?)


 手前から数えて四席向こう側だ。先ほどトイレに消えたはずの恵奈が、一人でそこに座っているのである。


 それだけでも十分におかしいのだが、驚いたのはその格好だ。首に犬用の、それもかなり獰猛なタイプ用の、いかつい首輪がとりつけられ、そこから伸びる鎖で自らの席につながれているのだ。


 また、いつの間に着替えたのか、胸の部分が大きくハート型に抜かれたデザインの青いタートルネック(『胸開きタートルネック』と言った気がする)が、丈が長くなり超ミニワンピースのようになったものを身に着けている。おかげではちきれそうな爆乳の谷間が丸見えで、脚を組み換えでもすればすぐに聖域が見えそうだ……いや、親だから別に嬉しくない。


 本人であるはずはない。しかし、別人と断ずるにはあまりに似すぎている。漫画から抜け出してきたようなカラダや艶やかな黒髪は然り、整った鼻筋も、まつ毛の長くエッジの効いた目元も、そっくりそのままそこにある。


 まるで……何かが化けているかのように。


(これは、放っておくわけにはいかないな)


 理里はある確信を持ち、荷物をひっつかんでベンチを立った。そのままリア充どもの間をすり抜け、そう遠くないそこに到着すると、それに声をかける。


「なあ、あんた。何の目的で、その人に化けている。返答しだいでは、あんたを『消す』ことになるぞ」


「……あら。熱い視線の源はキミ? 少年くん」


 それも見られていることに気づいていたようで、『本物』と全く同じ声を倦怠感に歪ませて振り返った。


「ずいぶんと余裕だな。あんたは今、脅されているんだぞ」

「そりゃあ余裕もできるわ。だってわたし、死なないんだもの」


 母でない何かは理里を見据え、不敵に笑った。





「〝死なない〟? どういうことだ……まさか、神だとでも?」


 理里は少し動揺した。まあ、死なないならば死なないで、脅す手段がないわけではないのだが……この『眼』が通用しないとなると、彼の戦力は大幅に削られる。


「あ、いやいや、そんなご大層なものではないわ。そうね……『異形の帝王の一族』とでも言えば、わかる?」

「……!」


『異形の帝王の一族』。俺たちの世界で、それはすなわち、吸血鬼を意味する言葉だ。なぜ『帝王』かというと、簡単な話、彼らがほぼ無敵の存在だからである。伝承にあるように太陽に弱いわけでもなく、十字架を見ると退散するわけでもなく、弱点は『心臓への直接の物理的圧力』だけなのだ。そのほかのダメージは即座に再生し、心臓さえ無事なら何度でも復活する。それこそ、杭で心臓を貫かない限り死なないのだ。ただ、あまりの強さゆえ、生態系ピラミッドの法則にのっとり、個体数は極端に少ないとどこかで聞いた。


 理里の呆気にとられた顔に満足したのか、吸血鬼は尖った犬歯をのぞかせて、気だるげに笑った。


「あら、尻込みしちゃったの? 大丈夫よ、べつに取って食ったりなんかしないから。キミみたいなかわいい男の子の血、嫌いなわけじゃないけど」

「はは、そりゃどうも……」


 これは、まずいことになってしまった。理里の能力に、吸血鬼に打ち勝てるようなものはない。『眼』を使ったところで再生されるし、身体をブラックホール化すれば倒せないことはないかもしれないが、周囲の被害がとんでもないことになる。


 結論上、理里の負けだ。しかし吸血鬼が、なぜうちの母親などに化けているのか? 彼女は一体何をたくらんでいるのか?


 何かしら陰謀めいたものを想像した理里であったが、返ってきたのは、思わず拍子抜けするような答えだった。


「で、えーっと、何だっけ。あーそうだそうだ、『何の目的で、この人に化けているのか』だっけ? 少年くん、この人の知り合いなの?」

「…………は? え、もしかして……その人が誰なのか、知らないで化けているのか?」


 嘘だろ。もしかして、その辺ですれ違って見た目が良かったから化けたとか、そんなしょーもない理由じゃあないだろうな。だとしたら、俺はただのいきすぎた妄想野郎になっちゃうじゃないか! 恥ずかしっ!


 あわわわわと勝手に猛省を始めた理里を気にせず、吸血鬼は話を続ける。


「ええ、知らないわ。だってわたしは『ご主人様』に言われて、この人に化けているだけだもの。そういやキミ、どことなくこの人に似てる……何? 歳の離れたお姉さんか誰か?」

「いや。よく間違われるけど、息子だよ」

「へっえー。人は見かけによらないものね。この歳でキミくらいの歳のお子さんがいるなんて」


 ……予測年齢を裏切るようで申し訳ないが、その人は三千歳を越しているぞ。言ったら殺されるけど。


 そういえば、少々ぶっきらぼうながらも気さくな吸血鬼のペースに飲まれて聞き逃しかけたが、今さらりと、心に引っかかるワードがこいつの口から飛び出した。


「あの……『ご主人様』って?」


 そう、これだ。怪しいとすれば、その『ご主人様』だ。ただ単にそっち系の趣味がある彼氏のことを指している可能性も高いが(なにしろ彼女は椅子に鎖でつながれているのだ)、渦巻く陰謀が見え隠れしている気もしてならない。…………そういうことにしておいてくれ!


 理里が尋ねると、吸血鬼の表情が、ひととき曇ったかに見えた。しかしそれは気だるげな雰囲気の中に、すぐに覆い隠されてしまった。


「文字通りよ。わたしは、ご主人様の奴隷なの。……あら、噂をすれば何とやら」


 吸血鬼は表情ひとつ変えず、理里の後ろに視線をやった。しかし理里は、振り向くことができなかった。


 表現するなら、それは『雰囲気』だ。何か恐ろしい、とてつもなく恐ろしい『雰囲気』を持ったものが、自分に近づいてきている。異形である自分の感覚から言っても異質な『何か』が、そこにいるのを感じる。


陽奈(ひな)……若い男の子を弄ぶとは、感心しないねえ」


 不思議と安心するような、透明感のある声だ。しかしその安心感が、逆に理里の恐怖を増幅させた。


 固まってしまった理里の様子も知らず、『ご主人様』はついにその全貌を明らかにした。


 血のようにどす黒く、紅くてぼさぼさの長髪がまず目に入る。上から下まで黒ずくめの服装であり、吸い込まれそうになる目は爬虫類のように黄色く、瞳が細い。顔は女性的というより少女のようで、声を聞かなければまず男性とは思わなかっただろう。背はさほど高くなく、目測で一六四センチほどか。

 自分よりも小さい相手だったが、それに対する理里のこのうえない(おのの)きは、止むことはなかった。だが同時に、何か『懐かしい』ような雰囲気もする。

 どうやら、男も同じことを感じていたようで、


「すまない、うちの奴隷が失礼をしたかな……あれ? キミ、ボクとどこかで会っていないかい?」


 顔を近づけながら問うてきた。しかし、その言い知れぬ不気味さが、理里に応えさせない。


「……コラ。あんたのほうが、よっぽど失礼してるわよ」


 目と鼻の先にまで男の顔が近づいたとき、見かねたのか、吸血鬼が男の服の襟をひっつかみ、自分の元に引き寄せた。


「げほっ! な、何をする!」

「ほら、この子が困ってるでしょ。ちゃんとあやまんなさい」

「うるさいな、なんで奴隷に指図されなくっちゃならない!」

「夕飯、抜きにするわよ」

「ごめん悪かった。また会う機会があったら、ぜひお詫びをさせてくれ」


 『夕飯抜き』と聞いたとたんに、男はおとなしく謝った。主人と奴隷というより、立場が逆転して、ただの恐妻家に見える。


 そのようなコミカルな一幕も、理里の警戒心を解きはしない。この男はヤバい、今すぐ逃げろ、と心が警鐘を鳴らしている。


 いきなり押し黙った理里に、吸血鬼は怪訝な顔をしたが、すぐに思い直したようで、

「ごめんね、わたしからも謝るわ。うちのご主人様、ほんと子どもっぽいひとだから……」

「こ、子どもっぽいは余計だ」


 男のつぶやきもひと睨みで押しつぶし、彼女は席を立った。


「わたしは(ばん) 陽奈(ひな)よ。機会があったら、また話しましょう。それじゃあね」

「あ、ああ…………」


 理里に名乗る暇も与えず、、男に椅子から鎖を解いてもらい、先に歩き出していた男に続いて、陽奈は歩きはじめた。

 ある程度人通りが少なくなったとき、男は、おもむろに陽奈に語りかけた。


「それにしても、大きくなったね。彼は」

「さあ? わたしは知らないから、なんとも言えないけど」

「うむ、それもそうだ……決行は明日だ。手はずどおり、よろしく頼むよ」

「ええ、わかっているわ」

「ついに明日。明日だ。今度こそ、あの人をボクのものにしてみせる……くひ、きゃひひ、きゃはははははは」


 不気味な笑い声は、彼女にだけ聞こえた。


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