30. ザ・セカンド・ティタノマキア その⑭
「あはは、ノロいノロい! もっと俊敏に動けよババアが!」
「チッ……!」
舌打ちしながらも、恵奈は双剣を繰り出す。しかし、ガイアは風のように舞い、それをいとも簡単にかわしてみせる。
「ちょこまかと! 少しはおとなしくしなさい、悪い子ね!」
「ははぁ~ん、ざぁ~んねぇ~ん。あーし、いい子ちゃんとかマジ大っ嫌いなんだわっ!」
言い放ち、ガイアは右手を恵奈にかざす。
「喰らえコラァ!」
「っ!」
すると突風が吹き荒れ、恵奈の身体を押し戻す。その隙にガイアは、今度は空に手をやる。
「こいつはどうかなあ!」
雷鳴がとどろく。幾本もの稲妻が、後退した恵奈にめがけて放たれた。だが、恵奈はそれを、目にも止まらぬスピードで回避し、次の攻撃をガイアに放つ。
未来視の力、〝逆神の眼〟だ。投影する未来が遠くなるほどにそれにかかる時間も増すが、ほんの五秒先程度の未来であれば瞬時に分かる。その性質を利用し、恵奈は常時この眼を発動させた状態で、この戦いに臨んでいるのだ。
「はあっ!」
「チッ、コザカシイ真似しやがって!」
上段、槍の突き。左下から放ったそれは、ギリギリで避けられる。が、それもすでに『視えた』こと。
「せいやあっ!」
すでに、同時に狩鎌で右側から水平に斬りこんでいる。これを避ける術は無い。全ては予定通り。たとえこの女が何をしてこようと、未来が視えるわたしには関係ない――
「⁉」
と、勝利を確信した矢先。恵奈の脳裏に、ありえない未来が映った。
それは、ガイアの一息で、自分の鎧……この『黑燄煉劫儛』がかき消される映像。
「そんなっ……どうしてっ⁉」
「視た? じゃあ、これも予定通りって感じぃ?」
老獪とも無邪気ともとれる笑みを浮かべて、ガイアは、「ふっ」と息をひとつ、恵奈に向けて吹いた。
瞬間。ごうっ、と、一陣の風が吹き抜ける。それは恵奈が視たとおり、彼女の炎を、まばたきもせぬうちに消し去った。
「あ……ああ……」
武器を失った恵奈の首を、ガイアはむんずと掴む。
「今度こそ、戦いが終わるまでてめえは一歩も動かさねえ。ここでシビれていやがれ」
「あぁっ⁉」
ガイアの手から電撃が迸る。それは恵奈の身体を伝い、全身を蹂躙する。
しかし、それでは終わらなかった。恵奈の指先、尾の先端、頭頂部から、その雷は溢れ出し、やがて地面へと至り、巨大な雷光の十字架を形成した。
「あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ」
「コロシはしねーよ? だってお前、生かしといた方が面白えもん。……じゃあねぇ、エッキー。また、遊ぼうねぇ♪」
「待あっ……っで……ああああああああああ!!!!」
諸悪の根源は、闇の中に溶け込み消えた。




