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これホントに暗殺者の仕事なの?  作者: 羽根ペン
終章 学園編
242/242

241.エピローグ

更新しました。

あの戦いから一週間。あの邪神共々灰燼となり、肉体が死んだ俺は・・・


「ふあぁ・・・なんてな。」


欠伸をする真似をして、自分自身に滑稽さを抱いていた。


「・・・ふぅ、あれからホントに色々あったよなぁ。」


先ずは俺のこと。あの戦いの時、文字通り灰となって散った俺は、ハンズと共に肉体が消え、魂だけの状態となって空に浮遊していたんだ。


魂ってのは不思議なもんで、肉体が消えても魂はしばらく空気中(?)に残るんだ。まぁ、そのまんま放っておくと大気中の魔素に還元されてやがて消えていくんだが・・・


そこは、流石キトだな。ちゃんとバックアップを用意していた。


と言うのも、魂ってのは通常、目に見えない物なんだが、アイツ【蠍座之魔眼】で俺の魂を肉体が崩れた場所を見て発見しやがったんだ。


後は簡単だ。キトと一緒にいたユイの【乙女座之魔眼】で俺とハンズ両方の魂を惹き寄せて、ハンズはいつも通りマフラーに。俺は母上が作った少年体の人形に移されて、今に至るというわけだ。


だから、今の俺は球体関節。本気を出せば、殆ど一直線に足を開くことだってできてしまう。


ま、そんなことはどうでもいいんだが。


因みに、あの時刃ごと灰になったから俺の武器は何も残っていないと思っていたのだが、実はハンズの柄だけ残っていたのだ。


いやホントね、見つけた時はマジでビックリした。まさかあると思ってなかったからさ。それに、封印しようと思ったら正の力ってのに当てられて、能力の殆どが消し飛ん出たっぽくて。今は俺が管理してる状態なんだよ。


ま、驚いたことの一つはそれだな。で、もう一つは、蓮翔が途中で言っていた天使についてだ。


なんでも、千歌に天使が取りついてるとか何とかって言う奴。あれ、全部本当のことだったらしい。俺が八十禍津日神を切った後に、やけにスッキリとした顔で目覚めた蓮翔曰く、その天使とやらは事象の改変・・・と言うよりは、修人にとって都合のいいように事実を改変していたらしい。


例えば、蓮翔が新しい魔法を開発したら、それが修人が発明したものとなったり、修人の周りの人間が、全員修人のことを好きになったり・・みたいな?


現に、千歌は天使に憑依されていたからか天使ごと俺が八十禍津日神をぶった切った時に修人に対する恋愛感情みたいなのが半分くらい欠落したみたいだし。


恐らく、天使と千歌で半分ずつ感情を分け合っていた(?)のだろう。表現が難しいが、そういうことなんだと思う。


ただ、俺がその天使サマを殺したところで、彼女がやった事が変化するわけでも無かったらしいため、全く無意味って訳でも無かったんだろうが、もっといい選択肢があったんじゃないかとかは思ってしまうな。




ま、そんなこんなで事態は収拾し、あれから一週間が経過した今日、あの戦いで活躍した者達への感謝と報酬を渡す祝勝会が催されるらしい。


だから、今日は朝早くから起きて、その祝勝会の準備をしなければだったのだが・・・


ガチャガチャ。


うん、出れないね。・・なんで?


朝からずっとこうなのだ。寮のあらゆる窓や扉が開かなくなっており、俺は部屋に缶詰状態。時計の針は既に午後12時を回っており、もうあと三十分程で祝勝会の開催時刻だ。


「ふざけんなよあのクソ親父・・・!!」


机の上には、ムカつく文体で「何とか脱出してみてねw」という文言が書かれた書き置きが。


「あの野郎・・・!!」


こちとら身体が人形だから血液が出ねえってことで魔法が使えねえんだよ!刃技スキルもキトの方の身体でしか使えないし(カリオペさんの身体は、当然の如く剣技スキル持ってたから使えた。)、残ってる刀技スキルはそもそも刀が無いから使えないし。


「かくなる上は・・・!」


窓をハンズで叩き割って外に出る。躊躇ったが、これしか道は無いだろう。故に、逆手で持ったハンズの柄を、全身全霊の力で窓に叩きつける。と・・・


「え?」


バガァン!という激しい音を立てて、窓枠ごと壁が吹き飛んでいった。


「いやおかしいおかしいおかしいおかしい!!」


だって、見た目的にはまだ十二歳前後の少年だよ?人形に移った時にも子供並の力しか出せないけど許してねって言われたし・・・


少々出力の調整ミスっているのでは?母上様。


「ま、まぁ後で直せばいいや・・・今はとりあえず開始雨に向かおう・・。」


確か会場はシズクの館だから・・こっから馬車で走って大体三十分。徒歩で1時間ぐらいか・・。


「ちょっと急ごう!」


多分これ脚力も設計ミスしてるから出力バカ高いっていう憶測になるけど・・


「やっぱそうだよねえええぇぇぇぇ・・・!!!」


たった一発の踏み込みが大地を抉り、俺の体を弾丸のように斜め上へと射出する。


飛び上がり、目に入ってきた光景は、普段見れない様な位置から見下ろす絶好の景色。


「良いねぇ・・・」


その絶景を深く胸の内に刻み、俺はただひたすらに前へと、風を切って飛翔する。


目指すは、国王・シズクの館。






「やぁっと着いたァ・・・」


風ってね、長く当たっていると人間の体力を著しく奪っていくんだよ。生憎俺はこの体だからそこまで肉体的に疲れるとかはないけどさぁ、それでもあんな不安定な足場(?)の所にいたら、それだけで精神的な疲れが来るわけよ。


・・まぁ、何が言いたいかと言うと


「入りたくねぇえ・・・」


辺りは沈黙。門番すらも消えている、人っ子一人いないこんな状態で、誰が中に入りたがるというか。


「いや、入りたくないだろ。」


ま、入んないと始まんないか。


「っし!お邪魔しまぁ・・・」


「「「「・・・・・・」」」」


「え?何このお通夜みたいな空気?」


扉を開けるとそこには、項垂れるヴァンダリオとそれを睨みつけ、叱る我が母上とキトの2人。そして、それを遠巻きに眺める笑らが暗殺者ギルドの面々とシズク、それから特待クラスの皆が居た。


いや、え?どゆこと?


「お兄ちゃんをお父さんが閉じ込めたって聞いたお母さんと私がブチ切れたらこうなったの。」


端的な説明をありがとう妹よ。だけどな、人間ってあんまりにも衝撃的なことがあると、脳内でいつまで経っても情報が完結しない生き物なんだよ。


というのはともかくとして、周りから聞いた所によると、どうやら俺が寮の部屋から出れなくなっていたのはヴァンダリオが俺の部屋にだけ結界を施していたかららしい。それも結構上位の。


されで、いつまで経っても俺が到着しないことにキトと母上様が何かおかしいと思ってヴァンダリオを問い詰めた所、あっさりと俺を閉じ込めたことを白状した。


結果、ヴァンダリオは娘と妻から同時に罵倒と嫌悪をされ、心が折れて抜け殻みたいに項垂れていたらしい。


なんでも、パーティーの主役を閉じ込めるとは何事か!とか、それでもお前は父親か!とか、やることが餓鬼すぎるのよ全く・・などなど。


そりゃ心折れますわな。まぁ一ミリも同情なんてしてやらんが。だって実際に被害こうむったの俺だしね。


でも、せっかくの祝勝会だからな、水に流してやるとしようじゃないか。次やったら完膚なきまでにボッコボコにしてやるが。


「ま、いつまでもこんな雰囲気じゃあせっかくの祝勝会が台無しだし・・・ここら一旦水に流しますよ。えぇ。次やったら容赦しませんが。」


「甘いわ。永戸。こういうのはもっと・・」


「母上、俺たちは家族ですよね?息子の頼み、どうか聞いてくれませんか?」


ちょいとキモイがこれぐらいしか言うことが思いつかなかったもんでな。許してくれ。


「そうね、せっかく永戸が主役の祝勝会なのに、それを私達が台無しにしたらダメだものね・・。」


納得してくれたっぽいし、これでいいや。


「さて・・それじゃあ、改めて私が音頭を取らせてもらっても?」


家族会議が丸く収まり、会場内が賑やかになった頃。シズクが壇上に立った。どうやら、乾杯かなんかをするようだ。


「今回、私達の国は厄災の化身達に対して、なんの対策も事前知識が無かったために、甚大な被害を出し、多大な犠牲を払ってしまった・・・故に、今後はこんなことが起こらないよう、いっそう奴らに対する知識を深め、準備を万全にしようと思う。それが最善だし、最短の解決策となるからだ。・・・そして、先ずはその第一歩として、都市国家リオンと、海洋学園国家パジングとの、無期限の協力体制、そして二国間の協和条約を築こうと思っている。」


「我等が、今こうして協働で条約を締結できるのも、全てはここにいる皆の働きのおかげだ。ほんとうに、感謝してもしきれない。故に、今回のこの礼と、条約締結の祝いをもって、乾杯としよう!」


「では皆様!杯をお持ち下さい!!」


全員がその頭の上にグラスを掲げる。


「それでは・・・乾杯!」


「「「「「乾杯!!」」」」」


全員の言葉が室内に響きわたり、持っていたグラスが更に高くまで掲げられる。


今、平和を成す祝杯はあげられた。





「うぁー・・うるせー・・・」


「はっちゃけすぎよ。全く。」


「しょうがないだろ?そういう会なんだから。」


乾杯から数時間後。どんちゃん騒ぎに少し飽きが来ていた俺は、気付けば暗くなり、満月が照らす夜の空気で、熱を持った頭を冷やそうと外に出た。


しばらく中庭を歩いていると、月光がなにかに反射した煌めが視界に入る。そういう花の花弁か何かが光を反射しているのかと思い、向かってみると。


そこに居たのは、その首に赤いマフラーを巻き付けた、白銀の少女。キトだった。


「何か・・変な気分だな。10年とちょっと、自分の身体だった人間をこうやって見るのは。」


「あら?それは私がこの身体にふさわしくないってこと?」


「そんなことは微塵も言ってねえだろ。」


「冗談よ。お兄ちゃんはそういうこと言うタイプじゃないと思ってるし。」


「その通りだ。」


・・それっきり、会話が途切れてしまった。偶然にも満月だった今日は、月の光が良く輝くいい夜空が広がっている。


「・・・綺麗な月だな。」


「そうね。」


「これで・・・一旦は終わりでいいのかな?」


「・・・そうね。」


思えば、この一年は色々な事が起きたなぁ。まさか前世の神話生物と戦うなんて思ってもみなかったし。なんなら、神と戦うことになるなんて夢にも思わなかった。


これホントに暗殺者の仕事なの?って言いたくなるような仕事なんて何度も・・いや、だいたい全部そうだったか?


まあ、何にせよ、この国も、世界も、平和になったと、一旦は落着したのだと受け取っていいんだろう。中世みたいな、それでいて近世とか近代みたいな要素を持った奇妙な世界ではあったが・・


「楽しいな・・この世界は!」


「えぇ、そうね・・・!」


次はどんな依頼が来るんだろうか?次はどんな奴らと会えるのだろうか?次はどんな敵と戦うのだろうか?


脳裏に過ぎるその考えは、俺をまた、新たなる世界へと連れていってくれるのだろう。


次の冒険に期待を込めて。取り敢えず今日は、この平和を楽しむとしようじゃないか。





〜Fin〜



ここまで拙作を読んで頂き、本当にありがとうございました。キト達の物語は、ここで一旦の終焉を迎えます。

感想やブクマ、評価などをつけてくれた方々や、勿論読んでいただいた方々には、本当に感謝してもしきれないです。


今後、またどこかで私が書いた小説を読む事がありましたら、その時はまた、拙作をよろしくお願い致します。


別れに余計な言葉は余り言わない主義ですが・・最後に一言だけ。



一年間、本当にありがとうございました。

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