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めいぷるどーる  作者: にゃー
6/13

5.そんなの嫌だよ

どうしようどうしようどうしようどうしよう…


「そうだ…携帯…!」


まず最初に浮かんできそうな案だけどその時の私にとっては思いついただけでも奇跡だった。


「お願いだからでてよね…」


「………もしもーし。もみじちゃん、どーしたの?」


「あ、あ…あやの!今どこにいるの?!」


「もみじちゃん?!落ち着いて、何かあったの?」


居場所を言いたくないであろうあやのだが私はよっぽど焦っていたのか、聞けば答えてくれそうな雰囲気だった。


「あやののお母さんが倒れたの…だから一緒に病院に来て欲しいの!今どこにいるの?!」


「えっ…お母さんが…なんで…」


咄嗟につく嘘ほど罪悪感を感じるものはないなと私は思った。

お母さんっ子なあやのには本当に申し訳ない。

後でいくらでも土下座するから今は許して。

あやのに軽蔑されてでもあやののこと守りたいんだ。


「命に別状はないみたいだけど早くいってあげようよ。」


「うん、今隣町にある公園の近くだから少し時間かかるかもだけどすぐ行くね!」


血の気がひいたのがわかる。


「あやの!今1人?!誰かといるの?!」


私は全速力でかけながら聞いた。

動いているせいの汗か冷や汗かで耳に当てている携帯が結構嫌な感じに濡れている。


「えっ?今はー」



「あ…あやの…?」

いきなりあやのとの電話が切れた。

「ちょ…冗談だよね…?」


その後何度かけてもあやのは出なかった。


私は携帯だけ握りしめ他の荷物を放り投げて公園へ走った。


いやだいやだいやだ…そんなの嫌だよ。


涙と汗で目の前が滲むのもお構いなしに走り続けた。


公園に着くまでの間、私の頭にあやのとの思い出が流れていた。


中学2年生のときに初めて席が隣になったこと。

そのクラスであやのが虐められていたこと。

それを私が助けたこと。

一緒に旅行したこと。

私のせいで一緒に先生に怒られたこと。


あやののお母さんに友達は選びなさいって言われて私を否定されても一緒にいてくれたこと。





お願い神様ー

あやのがいなきゃ私は生きていけないんだよ。だからー



公園は広くて闇雲に探しても見つかるはずがない。

だから私は一直線で池に向かった。

昨日(明日かな?)警察や野次馬に囲まれていた池に。


水曜日の夜の公園ってこともあって池の周りには全然人がいなかったーけど2つの人影が私の目に写った。


正確には池ではなくてその向こうにある林の中にそれを見た。


「あ、あやの……と……」


私の視力が2.5あるのと林といってもちゃんとアスファルトの道路になっており、街灯がありはっきりと見えた。


「かみや……?」


見間違いであってほしかった。あやのもかみやも…

それか2人とも両想いでいい感じの関係になってるとか…


そんな私の想いと裏腹にあやのと思われる人影が地面に倒れた。


「あやのーー!」


私が駆け寄るまでもう1つの人影は逃げることなく立っていた。

それはやっぱりかみやだった。


そしてかみやの足元には首元を一切りされ辺りを真紅に染め上げたあやのがいた。


「あ…あぁ…ぁ…何で…何で…かみやが…?」


私はあやのの血がこれ以上でないように首元に手を当てた。

その行為も虚しく私の指と指の間から赤い液体が溢れる。


「もみじ…」


「かみや…なんでよ……」


「俺は…」


何かを答えようと口を開けたかみやを見ていた瞳に暗闇が訪れた。









目を覚ますと私は自分のベッドの上にいた。


「今はいつ?!」


驚く暇もなく私は携帯を開いた。


9月28日午前7時50分ー



「また戻ってる…」


冷静を取り戻した私はあやのの殺された姿を思いだし、お母さんのカミナリが来る前にトイレに向かい吐いた。


あやので吐いてしまうなんて最低だ私……


そんなことを考えると同時に最後に瞳が写したかみやを思いだした。


とても悲しそうな、でも安堵したような表情ー


かみやは何で…


なにもわからないまま私はまた胃液を吐き出した。

お昼に食べた唐揚げや卵焼きは入っておらず、酸味の匂いがする液体を私は流し、学校の準備をした。

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