1.私は幸せだ
ー9月28日ー
午前6時
目覚ましがなるより前に起きてコーヒーと朝ごはんを家族で過ごす優雅な朝ー
なんてものはなく
いつもどおり目覚ましなんて無視して
お母さんの3回目のカミナリで起きたのが午前8時。
きっと王子様のキスでも起きない自信あるわ。
とか考えながらトーストに噛み付く暇もなく家をでたのが午前8時10分ー
手ぶらででたためカバンを取りに戻ったのが20分ー
うん。遅刻。
いつも通りの朝
紅葉に変わりつつある学校につづく並木道を特に急ぐわけでもなく歩く。
「桜は次遅刻したら面談な」
気だるく言い放つ望月先生こともっちーの言葉が後ろの扉からひそかに入りひそかに教室に溶け込もうしていた私に突き刺さる。
「りょうかいだよ、もっちー」
元気よく朝の敬礼をしながら答える私。
「冗談ぬきな」
「わかりました。望月先生。」
こんなやりとりに教室に笑いがこぼれる。
「もみじちゃんまた遅刻だよぉ」
「おはよー、あやの」
1時間目が終わり休み時間に私の親友である芹那彩乃と遅めの挨拶を交わす。
「かみやもおはよーさん」
「お前そろそろ遅刻とかやめとけよ」
「うるさいなぁ、挨拶くらい返しなさいよ。交わさない挨拶なんてむなしいじゃん。」
「…はぁ」
「あはは」
幼稚園からの腐れ縁である佐々倉神谷とも挨拶を交わす、もとい突き刺す。
午前中の授業をラピュタを探すのに費やしお昼を迎えた。
「お昼だー!あやのお昼食べよ。」
「そうだね。今日はちゃんとお弁当持ってきた?」
「もちろん、ちゃんとカバンの中にいれた…はず…なんだけど…」
「もみじちゃん…」
「…うぅ…」
遅刻、妄想にふける、忘れものー
私は何しに学校にきているんだ。
当の私が疑問に思ってしまった。
お世辞でも豊かとはいえないのに高校に行きたいという我儘を聞いてくれた両親に申し訳ない。
ちなみに財布には30円しかないから購買にさえお世話になれない。
「もみじちゃん…私のお弁当半分個しよっか」
「…いいの?」
「いいよ。もうなんか見てられないもん」
「ありがとうー!」
ひっかかる言い方だけどほんとにいつもありがとうだよあやの。
「……いつもごめんね」
あやのは笑顔でお弁当の半分を私にくれた。
私はこういう性格だから交友関係は広いほうだと思う。
でもあやのは気づいてないだろうけれど私には親友と呼べるような人はあやのしかいなかった。
その親友に私はいつも助けてもらってばっかだ。
私はあやのの為に何もしてあげれないのに。
…………
気だるいかったるい授業(宇宙船探してましたけど)の終わりを告げるチャイムがなり放課後がはじまる。
「終わったー!あやの帰ろーよ」
「あ…もみじちゃん、今日はちょっと用事があって一緒に帰れないの。ごめん…」
「そっかー、残念。じゃぁ久々に今日はかみやとー」
「だめ!」
あのおとなしいあやのが大声を上げ教室に一瞬の沈黙が漂う。
「あやの?」
「…っ……ごめん。やっぱり何でもない…また明日ね、もみじちゃん…」
そう言ってバツの悪そうにあやのは帰って行った。
(ありゃ、もしかしてあやのってかみやのこと…)
そんな素振りを全く見せてなかったら気づかなかったけどその性格が原因でいじめられていたことがあるほど内気な子だ。
話したくても話せなかったのかもしれない。
「これは明日は事情聴取ですなー。」
そんなことを呟きながらあやのの気持ちを汲み取って今日は1人で帰ることにした。
かみやに一発みぞおちを入れるのを忘れずに。
私の親友をたぶらかした罰だ。
後ろで何か言ってるけど気にしないで教室を後にした。
あぁ、失敗ばかりの毎日だけどなんて楽しい日常なのだろう。
あやのがいて、一緒にばかしたり笑ったり悩んだりしてくれる。
かみやは、幼馴染ってこともあってあいつは意外と私に敏感でいてくれる。
何度かそれに救われたこともある。
へへへ、助けてもらってばっかだねどうも。
とにかく、この2人がいてくれるから私は毎日が充実しているんだ。毎日を笑って過ごせるんだ。
特にあやのの存在は私の中ででかい。
明日もきっとあやのと楽しい日常を過ごせるんだと当たり前のように思っていた。
次の日、隣町にある公園の池であやのが死体で発見された。




