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プロローグ
あの日、俺は波を見た。大きな波だ。
周りの人間を、全てを飲み込むような大きな波。
そいつは圧倒的で、俺は言葉さえも失って思わず立ち尽くしてしまった。
後ろ姿でも漂う存在感、周りの選手とは違う異質感。才能というものは、天才というものはこういうもののことを言うのだろう。
揺らいでいた俺の価値が一瞬にして崩れ去った音がした。
はっと我に返れば家にいて、ゴミ箱の中にはバッシュがいた。
入れたのは紛れもなく、俺の手だ。傷や汚れだらけで、汗をよく吸って洗っても落ちない異臭を放っている、それほどに使い込んだバッシュ。
通学や外出の際によく履いていたスニーカーよりも俺の足によく馴染んでいたそれを、拾うことなく背を向けた。
決別だ、今までの俺との。
もう俺はバスケをしない。




