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親父の味

「親父、久しぶりだな」

「おお!フィルじゃねえか!それにムリンも一緒じゃねえか。どうしたよ、急に」

「ちょっとばかし調べたいことがあったからな。帰る前についでに寄っただけよ」

「そうか。その顔じゃ、仕事も順調そうだな。安心したぜ」

「そういう親父もこの感染症で店を畳んだかと思ったよ」

「まぁ、やばかったのは事実だよ。収入がなくなりすぎて店を畳むか悩んだくらいだ。でもな、お役人さんから給付金が出るときいてひと安心だったな。なんとか店を続けられているよ」


 その話をしてもらえると、なんとかして予算を作り、商人を助けるものになってよかったと思って、ほっとする。


「そうかい。よかったよ。ここが無くなりゃ、私らはどこで飯を食えばいいんだって話だからな」

「よく言うぜ。そんなことは思ってもないくせによ。それに、お前さんならこんなところじゃなくても旨いもんは食えるだろ?まぁ、多少は、俺の知り合いも屋台を畳んじまったけどな」

「そうか。給付金が出ても体力が尽きてしまったか。ちょっとかわいそうなことをしたな。でも、串は親父のところが一番だよ。まぁ、それ以外を食ったことねぇからなんとも言えないけどな」

「よく言うぜ。政府のお役人さんがそんなこと言って俺が納得できる分けねぇだろうよ」


 久しぶりの親父との会話も楽しい。冗談を言い合える関係が功を奏しているのかもしれないけどな。


「とりあえず、いつもの串を2本おくれ。これを食わねえと街に戻ってきた気がしなくてな」

「ほんとよく言うぜ。まぁ、俺のところの串がフィルたちのふるさとの味になってんなら、おれとしても料理人冥利につきるよ」

「親父、そのまま死ぬなよ?」


 いろいろ感情が出てきている親父を少しからかうと、「お前らが死ぬまで俺は串を焼き続けるからな!」なんて言う。

 いくつまでいきるつもりだ。なんて思いながらも、熱々の串をもらってすぐにムーナと一緒に口へ運ぶ。

 もちろん、肉の熱さ、中から染み出てくる脂に「あふあふ」と言いながらも「うまい」と言い合う。


「ほんとしょうがねぇやつらだな。ほらよ」


 毎度のことで、今回も予想していたのか、親父はため息をつきながら、私たちに水を渡してくれる。


「さっすが親父。私らのことわかってんね」

「お前らはいつもこうするだろうよ。冬にきたときはしなかったからビックリしたけどよ。今回は案の定かと思ったぜ」

「冬のときはな、さすがに同い年のメイドもいたわけだから、変な姿を見せたくなかっただけだよ」


 そうかよ。と言った親父は、後から来た客の注文を聞くと、黙って串を焼き始める。

 なんと言っても、親父が串を焼くときは、昔ながらの炭を使って焼き上げる。そのときの香りがなんとも堪らないんだよな。なんて思いつつ、じっくりと焼き上がる串を見ながら、自分の串にがっつく。


 ものの数分で焼き上がる串だけど、私のなかでは10分以上にも感じた。

 ぼーっと眺めていると、先に食べ終わっていたムーナに声をかけられる。


「エル、早く食べないと、駅に行けないよ?」

「……あっ?うん?あ、ぁ、そうだな。すまない。早く行こうか」


 ムーナの声にはっとした私は急いで串焼きの肉を食べ、親父に串だけ返す。


「親父、ありがとうな。また来るよ」

「おう。いつでもこい。俺はいつでも待ってるよ。まぁ、俺だけじゃなくて、食堂の女将も、お前さんたちが世話になった全員な」


 いつでも私が戻ってくるのはここってか。まぁそれが当たり前になるだろうけどな。

 ただでさえ帰るところがあるのはありがたい。生かされているというのを実感する。

 小さな幸せを感じたところで私たちは帰路に着く。

 行きと同様、ムーナにチケットを買ってもらい、個室に入る。

 そして、調査で疲れたことと満腹なことが重なったのか、ムーナは座席に座るなり寝息をたて始めた。

 まぁ、少し振り回してしまったからな。なんて思いながら、カバンから開栓済みの酒をとりだし、チビチビと飲む。

 おそらく、しばらくはまた酒が飲めなくなるからな。飲むなら今のうちだ。

 そんなことを思いながら、飲み進めているうちに、列車はゆっくりと動き出す。

 そして、ある程度酒が進んだところで廃村のことを思い出す。


 あそこに行ったわけは、警察がその村の近くで子どもを保護したから。もしなにか手がかりがあるとするなら、その廃村だしな。

 ただ、その廃村に何があるんだ?

 そう思った私は、タブレットで廃村のことを調べ始める。

 たしか、あの地域は飢饉が起こり、口減らしのために子どもが犠牲になっていた地域。

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