表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/170

22.出陣

 日が完全に沈み、洞窟の外をちらっと見ると、完全に闇に支配されている。そろそろ動き出してもいいだろう。

 そう思い、ローブを翻して、洞窟の奥へと進む。

 カツン、カツン

 私の足音だけがこの洞窟に響く。

 食堂までの道のりで、ララが持ち帰ってきた手紙の内容を思い返す。

 程度にいる奴らにキッシングナイトのことは未確認の情報としながらも、知られているのか。そして、戦犯収容所の守備強化は当たり前だし、帝都の守備強化も当たり前か。ただ、そこは想定の範囲内だが、私が想定している数より多くの守備兵を投じられると、私も少し慌てるだろうな。

 今のところ、6人1組で警備にあたるだろうと思っている。その組のうち1人は魔法を扱える奴を入れるだろう。そうしなければ、あまりにも無防備すぎる。

 あと、あいつの手紙に描いていたのは……。医療班の攻撃を避けてほしいってことだったな。それは守るか。たしかに、あいつの言うこともわかるし、今以上に貧しい暮らしになるのはこちらも悲しくなる。そこは避けようか。まぁ、もともと市民を狙うつもりはない。しいていうなら、クラシアたちデパーチャーしか狙っておらず、兵士たちが私たちの邪魔をするからなぎ倒されている。というのが私たちの考えだ。

 っと。もう食堂か。襲撃直前だというのに、いろいろ考えることが多いな。これが戦闘準備なんだから仕方ないか。

 食堂の前に着いた私。なにか違和感を覚える。

 ……扉の奥からものすごい殺気を感じる。なぜだろうか。私はすぐに戻ると言って外に出たのはそうなんだが。さっきはここまで殺気を感じることはなかった。

 誰か、なにかを感じ取ったか?とりあえず、入るか。

 ガラッと扉を開けると、剣に手をかけているルナとユカリに、弓を構えているアカリ。後ろでサポート体制を取っているカナとマリア。みんな攻撃態勢に入っている。

「誰?」

 威嚇するような声で聞いてくるアカリ。今までに聞いたことのないくらいの声でこちらが威圧される。

「私だ。エルトゥーヤだ」

「それなら、素顔を見せて。それで違ったら、斬りに行くよ」

 相当怪しまれている。なぜだ?さっきまで一緒にいたではないか。

 アカリに言われるように素顔を見せようと顔の下半分を覆っているストールに手をかけたときに気づいた。

 そうか。私が着替えて、誰かわからなくなっているのか。

「すまない。この格好をするのは初めてだったな。こちらから出向く戦闘の時は、これが正装なんだ。知っているものと思っていた。すまなかった」

 そういいながらストールをずらし、ヘアバンドを外してキッシングナイトに素顔を見せる。

 そうすると、キッシングナイトから殺気が消えた。

「なんや、エルか。でも、服装変える意味あるん?」

「まぁ、一種のゲン担ぎだな。それに、私の顔は帝都の中ではあまり広く知られていない。せめての抵抗というのもあるし、なにより、ふもとの町の人間に知られてしまうと、私の立場がなくなる。それを避けるために、こうさせてほしい」

「確かに、エル、町でいろんな人から好かれていたもんね」

「……まぁ、私が政府によって作られた孤児だというのもある。そのことを知って隠してくれた街に恩もある。その恩を仇で返せない。わかってくれ」

「そういえば、エルの過去って聞いたことないよね」

「その話は、あとにしてもらっていいか?話せば長くなる」

 ユカリが好奇心を持って聞いてくるが、今の私に語る余裕はない。

 そういったとき、夜8時を知らせる鐘が食堂に鳴り響いた。

「よし。行こうか」

 静かに行ってローブを翻し、出口に向かって歩いていく。後ろをちゃんとキッシングナイトがついてきてくれる気配を感じて、少し安心する。

 洞窟から出て、ほんの少し。

「こんなにいっぱいいたの?」

 カナが小さくびっくりした声を出す。

「どうしたの、カナ」

 気になったのか、アカリも小さな声で囁く。

「いや。広い洞窟の中だったから、透視を使って周りの様子を見ることなんかなかったんだけど、今見たら、この山?を囲まれるように200人くらいいる」

「そんなにいたの!?」

「しーっ!気づかれる」

「あっ、ごめん。で、エル、これ、どういうこと?」

「少し急ごう。移動しながら説明する」

「りょ、了解」

 少し困惑しているキッシングナイトに総力強化魔法のアルカイックランをかけて走り出す。

「で、さっきの話だが、さっきのは、偵察部隊が影に映ったのだろう。やつらは、一昨日からずっと張り付いている。一昨日、私が相手していたのもその一部だ。まぁ、どうやら、中の様子を見ようとして罠にかかったみたいだったが」

「そういうことね」

 アカリはすべて納得したみたいだった。そして、今度はルナからの疑問が飛んでくる。

「これ、無線機とかですぐに報告されない?大丈夫そう?」

「まぁ、報告されるだろうな。ただ、問題ない。昔からこのふもとに電波を妨害する装置がずっと動いているみたいで、この付近で無線機を使うことはできない。もし使うなら、ふもとまで降りるという行程がひとつ必要だから、時間がかかるはずだ。その間に、帝都との距離をグンと縮める」

「帝都までの距離は?」

「だいたい150キロだな。今かけたアルカイックランのパワーだとあと半時間で着くことができるだろう」

「エル、最初から飛ばすね。魔力、持つの?」

「今回は、このあとに休憩を挟むつもりでいる。そこから先はカナにお願いしたいと思っているが、いいか?」

「カナは大丈夫よ。なんなら、今からかけても6時間は持つし」

「そこまではいい。適宜かけてもらうくらいで。いつまでもかけてもらっていると、斬れた時の反動がものすごいことになるだろう」

 私だって、いろいろ考えている。勝ちに行くための作戦を。

 そこからみんなしゃべらない時間が続いたものの、あっという間に目的地にしていた西門の近くまで来た。

「よし。この木の上にしよう。いったん、ここで休もう。ここからの作戦だが……」


ようやく、スノードロップとキッシングナイトが出陣しました。

キッシングナイトにとっては、【7.休息】以来、外の世界です。


さて。ここから、どのような作戦を立てているのでしょうか?



そして、前回の補足ですが、中には、なぜ召喚鳥で手紙のやり取りをするのか?というお声があるかと思います。

これは、某国の各国のデータを盗み見ている。という疑惑から来ているものです。

そして、スノードロップも一度、ムーンライトに攻撃を仕掛け、返り討ちにあったことがあります。

さらには、レイチェルとのメールのやり取りで作戦もバレた過去もあり、それ以来、スノードロップは召喚鳥にお願いをして手紙でやり取りをしている訳です。


ただ、召喚鳥も常に安全ではなく、召喚鳥とはいえ小鳥なので、大型の鳥に狙われることもあるそう。

エルトゥーヤたちの召喚鳥も命懸けです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ